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身代わりで召喚されたけど、私は幸せです。

身代わりで召喚されたけど、私は幸せです。~続~

作者: 高遠ユウ
掲載日:2015/07/14

続編です。



私の名前は香椎海琴カシイミコト

普通のどこにでも居る平凡な女子高生だった。


そう、過去形だから。

今の私は多分、平凡からかけ離れてるからね。


同じクラスの糞ビッチ(美少女?)の身代わりに聖女として召喚されて、今では魔王の妃。

はい、結婚しちゃいました。

新婚で蜜月で甘々ですよ。これぞリア充。


魔王と契約を結んだ私は、ほぼ不老不死になったようだし。

魔族は人間と見た目は変わらないけど、寿命や強さは比べ物にならない。


もう私は二度と日本には帰れないし、帰るつもりもない。

両親に会えないのはやっぱり寂しいけど。

でもお母さんから『運命の人に出逢ったら、なりふり構わず突っ走れ』と、有り難い言葉も貰ってるからさ。



あの後、魔王討伐に一緒に旅に出たイケメン達は、命からがら人間領に逃げたようで。


顔しか取り柄のない奴らだったから、仕方ないよね。

一応あれでも国では最強の部類に入るらしいけど。

あんなんでよく魔王討伐なんて出来たと思う。

マジで身の程知らずというか。


私は死んだと思われて万々歳。

もう関わる必要もないし、私が関わりたくないし。


「ミコト」


色気を含んだ低く甘い声に腰が抜けそう。

ふらついた私を抱きとめる、しなやかな筋肉に包まれた長い腕。


「ウラジミール」


魔王で私の旦那様のウラジミール。

愛しい旦那様に抱き上げられて、目線が近付いた。


「人間共がまた聖女を召喚したようだ」


その獣の様に細められた眼を、ウットリと見つめてしまう。


「へえ。あの人達って本当に馬鹿しかいないんだね」


魔王城に向かう旅で、魔に犯された土地は殆ど私が浄化済みだ。もう聖女は必要ない筈なのに、これ以上何を求めてる訳?

まあ、魔物はまだ居るけど。それ位自分達で何とかしなよ。


「昔からそんな奴らしかいないつまらない種族だ。勿論ミコトは別だぞ」


嘲笑した表情のウラジミールも素敵だ。

見惚れてると、ウラジミールの紅い瞳が私を射抜いた。


「うん。知ってる」


もう十分過ぎるくらいに愛されてる。疑う余地もない程に。


「いや、まだ足りないな」


そう言ってニヤリと笑ったウラジミールは、私を抱えたまま寝室へと向かった。


どれくらいの日数が経ったのか。

愛された私は心も体も満たされて、ウラジミールの腕の中で微睡んでいた。


「魔王様! 聖女一行が城の入口に到着しました」


寝室の扉を叩く無粋な音に眉を寄せた。

聖女一行? また怪我をしにきたんだろうか。阿呆だな。


「適当に遊んでやれ」


ウラジミールは興味のない様子で部下に答える。


私達は一眠りしてから、王の間へ向かった。


どうやら部下達に聖女一行と適当に遊ばせた後、王の間に連れてくるよう命令していたらしい。


玉座に堂々と座るウラジミールの膝に、横抱きされて座る私。

うん。どこもおかしくないよ。これが普通だから。


「魔王様、お連れしました」


両開きの重い扉が開いて、聖女一行がやって来た。

満身創痍。その一言に尽きる。

遊んでただけなので死人は出ていない。


「お前が魔王か!」


「なっ? ……聖女? 生きて……」


聖女一行のイケメン達が此方を見て、様々な表情を浮かべた。

その中に居た聖女は私を見て、大きな目を更に見開いている。


「……香椎さん?」


私の名前を呆然と呟く聖女、いや、糞ビッチさん。

肩まであるふわふわの茶髪に、二重瞼の大きな目、シミ一つない白い肌に、ピンク色の唇。うん。見た目は美少女だわ。


どうやら糞ビッチさんが聖女召喚されたようだ。

結局逃げられなかったんだね。残念。


「久しぶり、糞ビッチさん。あんたのお蔭で私は幸せだよ」


私は笑顔で挨拶した。

囮にされたのに優しいよね、私って。

ちゃんと幸せだって事も報告しておかないとね。


「……え? は? 糞ビッチって何よ!」


呆然としてた糞ビッチは、私の言葉に怒りを覚えたのか、顔を真っ赤にして怒鳴った。

般若のような顔につい噴き出してしまった。


「聖女様! これはどういう事ですか? 何故貴女が生きていて、魔王なんかと一緒に居るのですか!」


イケメン騎士その一が、私を睨みつけて叫ぶ。


「聖女? 聖女は其処に居る女だよ。私はソレの身代わりで召喚されただけ」


真実を伝えれば、イケメン達はポカンと間抜けヅラを晒した。

私の言葉の意味が、すぐに理解出来なかったんだろうね。


理解した途端、イケメン達が憤怒の表情になる。


「我々を騙したのか!」


「偽物だった訳ですね。どうりで……」


どうりで? 何ですか。美しくないって?

殺っていいですか、こいつ等。


「ねえ。あんた達って馬鹿なの? 阿呆なの? 騙したって意味不明なんだけど。私はちゃんと浄化してあげたよね? あんた達より私の方がどれだけ役に立ったと思ってるの? よく考えてから発言しなよ」


ちょっとイラッとしたよ。ちょっとプチッと殺ってしまおうかと思ったよ。気を付けて喋ってくれ。


「ククっ、人間は阿呆しか居ないな」


私の耳元で愉しそうに笑うウラジミール。

ちらりと見上げれば、優しく頬に口付けてくれる。

はあ。ウラジミールが素敵過ぎて困る。


その光景に絶句する聖女一行。


「……どうして……どうしてあんたみたいな女がそんないい男に愛されてるのよ? そこは私の場所よ!」


はい? 何言ってんのかな糞ビッチは。頭おかしくなったか?


「聖女様? どうされたのですか」


イケメン魔法使いその一に声を掛けられ、ハッとした表情の糞ビッチ。


欲望に満ちた本音が出ちゃったんだね。わかるよ。

でも、糞ビッチには其処にイケメン達が居るでしょ。それで我慢してくれ。


「此処は、私の。私だけの場所だから」


糞ビッチの瞳を見て、私はにっこりと笑った。

悔しそうに歪む顔。美少女なのに残念過ぎるよ。


「当然だ。ミコトは私の唯一の愛しい妃だからな。お前のような気持ち悪い女は知らん」


はっきりと言い切るウラジミールに、嬉しくなって頬が緩んだ。


気持ち悪い女認定された糞ビッチは、顔を青ざめさせて、それでも私をキッと睨む。


「平凡な女のくせに! ちょっと巨乳だからって調子に乗らないで!」


は? 巨乳? いやいや、普通だから。あんたが絶壁なだけだから。

何だか話が通じないお馬鹿さんは、もうほっといていいよね。うん。


「それで、何しに来たの?」


糞ビッチは無視して、イケメン達に話し掛ける。


「何しに? 勿論、魔王討伐に来たんですよ」


イケメン騎士その二の言葉に、ウラジミールから濃い魔力が放たれた。濃密で重く圧倒的な魔力だ。


聖女一行がその魔力の重さに苦しそうにして跪く。

いや、糞ビッチは一応聖女としてチート貰ってるよね。もう少し頑張ろうよ。


「ほお。私を殺すと? それは愉快だ。出来るのならな」


威圧しながら愉しそうに笑うウラジミールを、聖女一行は恐怖に歪んだ表情で見ている。


「うーん。そもそも、魔王討伐する意味がないよね。自殺志願者なら仕方ないけど」


緊迫した空気も気にせず、私は口を開いた。

すると、ウラジミールの魔力が一瞬で消えた。

イケメン騎士その二の言葉なんか、本当は全く気にしてなかったんだろうね。


ウラジミールは私の首筋に口付けてきた。

自由過ぎるよ。旦那様。


「はあっ……はあっ……ど、どういう事ですか」


イケメン魔法使いその一が喘ぎながら問い掛ける。

他はまだ話せないみたいだね。


「どういう事って、まず根本から間違ってるから。魔物が人間領を襲ったのはウラジミールのせいじゃないよ」


私の言葉に、唖然とするイケメン馬鹿共。糞ビッチは泣いてるよ。皆放置してるけど。


「では! 誰のせいだと言うのですか!」


睨みつけて叫ぶイケメン騎士その二。


「え? 人間のせいだよ」


答えは簡潔で明白だ。あんた達人間のせいだよ。何でわからないの?


「は? え、意味がわかりません。何故私達のせいだと言うのですか」


本当にわからないらしい。

眉を顰めて、聖女一行(糞ビッチ除く)が首を傾げてる。


私はウラジミールを見た。

私が説明するより、ウラジミールの方がいいだろうから。

私の意を汲んだウラジミールは、私の腰に腕を巻き付けたまま聖女一行に視線を向ける。


「お前らが強欲だからだ。土地を拡げる為、森を壊し魔物の住処を壊して、何故魔物が人間領を襲わないなどと思うんだ?」


魔物にはたいした知能はないけど、それでも自ら勝ち取った住処がある。

奪われれば怒り、取り返そうとする。


「そんな……我々は人の住む場所を作っただけだ」


人口が年々増えていけば土地も狭くなる。そうすれば、新しい土地を開拓していくしかない。人間にとって当たり前の事だろうけど。


「魔物の住処を壊して人間の物にする。そうしたいなら、魔物の怒りも受け止めろ。他の誰かのせいにするな」


この世界は弱肉強食そのものだから。

地球でだって、平和な日本でだって、命は掛かってなくても弱肉強食なのは変わらない。


「強欲なのが悪いとは言わん。が、その代償はお前達が支払え。それが嫌なら自らの手で勝ち取れ。踏み潰せ。私のようにな」


ウラジミールはニヤリと凶悪に笑った。

魔王として君臨してるウラジミールは、それを自ら実践して勝ち取った。

この世界でウラジミールより強いものはない。


「はあ……ウラジミールが格好良すぎなんだけど。どうしたらいいの私」


つい本音が零れてしまった。

真面目な話とか私には関係ないから。


「くくっ。私を愛せばいいだけだ。簡単だろ?」


ウラジミールは紅い瞳を煌めかせて、私に深く口付けながら一瞬で寝室に転移した。





その後、聖女一行は人間領に帰る道すがら、魔物を倒しては、泣いてばかりで使えない聖女を宥めすかして浄化していったらしい。


そして王都に戻ってすぐ、魔物の大侵攻が発生し、多くの犠牲者が出た。

それでも何とか守りきり、国を立て直してるようで。


もう魔王討伐なんて夢は見ないで、現実と向き合ってる。感心だ。

魔王や魔族との力量差もわからない程、馬鹿じゃなくて良かったよ。此方が本気でやれば、人間なんてすぐに殲滅出来るからね。


聖女である糞ビッチさんは、本性を曝け出し過ぎてイケメン達から引かれてるらしい。笑える。

都合の良いように利用されてるみたいで、少し可哀想と思わなくもない。


いつか、運命の人に出逢えるよ。多分ね。



私はウラジミールに迫ろうとする雌を全て返り討ちにしながら、今日も旦那様に愛されてます。


今日も明日も。

それは永遠に変わらない事実だけど。







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