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今日もきっとどこかでおこっている、そんな物語

作者: アルミ缶

私は今日人生で初めて、変質者に遭遇した。会社の友だちと夜飲んできた帰り道、明かりの少ない近所の路地に差し掛かったところで。

私の住んでいるボロアパートは都心から少しはずれた寂しいところに位置している。だから夜の11時ともなると人気がほとんどなくなる。だから私は軽く酔って鼻歌を歌いながら歩いていた。そのとき。

背後から走ってくるバイクに私はクラクションを鳴らされた。ビクッとして振り向くと、運転しているヘルメットをつけたおそらく男がやけに身を乗り出した態勢でバイクに乗っている。なんだろうと思って見てみると…。


その男は、うん、男で間違いない。下半身を露出していた。


「あーーーーーーーー、もうなんなのよあいつは!いまどきあんな露骨な露出狂いんの!?都市伝説かと思ってたわ!なんであたしなんかに見せてくるわけ!?こんな20代後半のやる気のなさそーな女に見せてもいいことないでしょ!あーもうやだやだ!」

悲鳴をあげることも忘れ、ドン引きして走り出した私を、バイクはあっさり追い抜いていった。その男の、気持ち悪い甲高い笑い声を残しながら。そしてそのまま私は呆然としながら家に帰ったのだった。

突然の異常な出来事に軽くパニックになっている。

「なにこれ、警察とかに届けるべきなの?いやでも特に被害も無いし…。」

とりあえず私はスーツを脱いだ。だんだん落ち着いてくる。確かに最近誰かにつけられてると感じたり、郵便受けに変な手紙を入れられたり、ストーカーもどきみたいな嫌がらせを少し受けていたけど。でもまさかこんな遭遇をするとは思わなかった。同じ人だろうか。

しかしあの人もよくやるなぁ。いくら暖かくなってきたとはいえまだ3月。寒いでしょ。

なんだか昼間の仕事の疲労と合わせてどっと疲れた。そして部屋に寝っ転がりながらスマホを開く。タップしたのは某つぶやきアプリ、Twi○ter。なんとなく誰かに聞いて欲しくなってツイートをする。


"まさかの帰り道で変質者にあった。最近嫌がらせしてくる人と同じかなぁ。最悪ーーーーー。"


するとすぐにリプが来る。


":@apple***** やばwwwwww大丈夫?"


カースト大佐さんからだ。3ヶ月くらい前にフォローされた人。アニメとか漫画とかのつぶやきが多い自称オタクさんだ。私とは音楽の趣味が合う。


":@carst03**** なんもされなかったんですけど…ドン引きでした"


またもすぐリプ。


":@apple***** よかったなwしっかし寒いのにそんな馬鹿もいるもんだな。でも家に帰れば彼氏いるし安心じゃん?"


私と同じこと思ってるよこの人。彼氏?なんか勘違いしてるみたい。


":@carst03**** ですねー。いやいや私彼氏いませんから!"


これを送って、ふう、と私はスマホを置いた。お風呂にでも入ろう。

とここまでで私は何か引っかかった。ん、寒いのに、ってあれ?なんかおかしいな。なんでカースト大佐さんは変質者が半裸だったって知っているんだろう。なんで?急に寒気がする。

いや変質者って言ったら普通そうなるのかな?でも…。フォローされたのは3ヶ月前。ストーキングもどきをされ始めたのも3ヶ月前。


さっきリプで送った「彼氏」の文字が頭をよぎる。私は今、部屋で一人だ。


私はパッと立ちあがると玄関に鍵を確かめにいこうとした。と同時にノック音がした。うちだ。その音はだんだん大きくなる。


ドンドンドンドン


「もういや……最悪……」


私は耳を抑えてうずくまった。恐怖で泣いてしまいそうだった。















「こんばんはーーーー遅くにすみませーん、宅配便でーす」

え?あれ?

その声で、恐る恐る玄関に行きドアを開けた。そこには荷物を抱えたお勤め人が立っていた。一気に体から力が抜ける。

「すみません、夜分遅くに。昼間一度お訪ねしたんですけど、いらっしゃらなかったんで…」

「ああ、いえ、大丈夫です。サインでいいですか?」

「あ、いやハンコでお願いできますかね?」

「あっはい、じゃ、ちょっと待ってください…」

私は一旦部屋に戻った。引き出しを開けてハンコを探す。スマホをちらっと見るとリプが来ていた。


":apple***** あれそうだったか。てか変質者さん?って男の大事な部分見せてたんよな?ドン引きってのから勝手に想像してたけど…"


なんだ、やっぱり私の思い過ごしだった。私はパッとスマホをとると


":@carst03**** 合ってますよー。ちょっと見ちゃいました。最悪です"


と急いで打って、送信………と。




ピロリン♪



すぐ後ろの方でメッセージ受信通知音がした。


私は全身麻痺したように硬直した。鼓動が早まる。


後ろを振り向きたくない。振り向いてはいけない。


どうして気づかなかったんだろう。宅配便の人の、声変わりしきらなかったような少し高めの声。今日既に一度聞いていたのに、帰り道に。


手からスマホがポトリと落ちた。



分かりにくかったらすみません

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― 新着の感想 ―
[一言] 新着順/ホラーカテゴリから読ませていただきました。 作者さんも書かれているように、多分こういう事(変質者=カースト大佐=宅配便の人)かな? とは理解できましたが、もっと確信できるものがあれば…
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