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王への道標  作者: レオンハルト
別れ、そして…
1/1

プロローグ

目を開けると移動していく景色が見える

そして次にきづいたのは白

この車内と同じ静寂が包んでいく様に降り積もる白

「雪…か」

と目の前の初老の男性が呟いた

カチッと音をたて何かのツマミを回す

恐らく暖房を強くしたのだろう

「寒くなってきましたね~」

と初老の男性はバックミラーを見ながら後ろに乗っている-青年-に話しかけた


「12月ももう終わりますからね。」

とだけ青年は答えた


「でも、若い人達は喜ぶんじゃないですかね?ほらホワイトクリスマスっとか言って。」

と運転士は無理にでも明るくしようとする


青年は

「そうですね」

とだけ答えると窓の外に目を向ける


移動していく景色の奥に自分が住んでいる街が見えた


ふと青年の脳裏に1人の少女の姿が浮かぶ


「アイカ」

とだけ小さく呟き涙を一筋流す


それだけで浮かんだ少女が青年にとって大切なのが分かる


でも青年には何も出来なかった

何故なら彼女はもうこの世のどこにも存在しないのだから


青年は腕で涙を拭い目を閉じ上を向く

そして考えるのはアイカがいない世界に意味なんて無い

だけだった


永遠に癒えることの無い悲しみ

深い絶望が青年の心を満たしていた


それは言い様の無い悲しみ

それは何者にも代え難い者の喪失

そして悪魔と契約してでも取り戻したい存在だった


だがこの世界に悪魔など居ない

そして正反対と呼べる神だって居ない


彼の抱えた悲しみはどうやって癒せば良いか誰も知らない


だからこそだった


青年の父方の祖父が墓参りに行って来いと言ったのは


気晴らしと報告を兼ねてと祖父は言っていた


祖父が青年に対して気を使っているのを青年は分かっている


祖父に対して恩のある青年はその思いを無下にする訳にもいかなかったのだ


「お客さん着きましたよ。」

と運転士は後ろに乗っている青年に告げた


お金を多めに払い青年はタクシーの外に出る


そして雪が少し積もっている石の階段をゆっくりザクッザクッと登ると大きな門が青年を迎えた


青年は門の隅の小さな扉を開け中に進む

キィ

と音をたてながら扉が閉まるとそこは

一瞬だけ江戸時代にタイムスリップしたのでは

と錯覚する様な風景が広がっていた


石の道

そして白砂がビッチリと詰め込まれ所々に置かれた岩の周りを円を描く様に波紋が広がる

そこには外の様に和洋何でもかんでも入り乱れたモノでは無く完全なる和の世界だった


(何年振りだろうか)

青年は静かに思うと石の道を奥へと踏み入れる



白砂が敷き詰められた奥には豪華な寺がそびえ立っていた


そしてお寺の前を掃除している禿頭の初老の男性に声をかけた


「墓参りに来たのですが、」


そう訪ねると


「どうぞどうぞ。お若いのに律儀だね〜。後で温かいお茶でも飲んでって下さいね」


と言われ青年は軽く頭を下げるとお寺の横道を奥へと進んで行った


そして自らの目的地-墓-にたどり着くと右ポケットから真新しい線香を取り出し左ポケットからライターを取り出し線香に火をつける


そして墓に置くと静かに手を合わせる


(父さん、母さん。アイカがそっちに行った。父さんや母さんに挨拶に行くねって言われたよ。来たら叱っといて。旦那を置いて行くなって。)


青年は静かに手を合わせ続ける

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