恋愛って孤独な戦いっていうけど敵は誰?
ドロケイ勝負から数時間後の給食タイム…
「なぁ、なんでキーズだけプリンがあるんだ?」
「知らね。ケイサツの誰かと言い争いでもして勝ったんだろ。」
と、ドロボウ組だったクラスメイトはキーズについてあれこれ妄想話をしている。
当の本人は幼馴染のユウと机をくっつけて御飯を食べていた。
「俺の話で教室が騒がしいな、あっはっは!」
「まぁ、ドロボウでプリン食べてるのキーズだけだもん。そりゃしょうがないよ。」
「なんなら、少し分けてやろうか、ユウだけにな。」
「え? いいの?」
「たりめぇよ! 俺と一緒に牢獄の仲間を助けようとした心意気の礼だ!」
「ありがとう、キーズ! じゃあもらうね。」
そんな二人の会話に乱入する足音が近づいてくる。…リリィだ。
「ちょっとキーズ、こっちきて!」
「んだよ、リリィ! 邪魔すんな!」
「少し話があるのよ。いいからこっちきてよ。あ、ユウ、少しこいつ借りるね。」
「俺はモノじゃねぇ‼」
リリィに手首を強引に掴まれ廊下へと姿を消していく二人。あっと言う間の出来事に状況が理解できないユウであった。
「…で? 何の用だ? ここまで引っ張りやがって。」
キーズが連れてこられたのはなんと女子トイレの個室だった。抵抗したもののリリィの力強い連行には無駄だったようだ。
「ご、ごめん。誰にも聞かれたくなくて…。」
「ごめん。で済むか! 誰かに出ていくとこ見られたらどうすんだよ!」
「…ホントごめんなさい。」
「考えなしかよ…。せめて屋上行こうぜ…。まぁもういいや。で、話って何だ?」
キーズは初めて現実から逃げたいと思った。女子トイレの個室にいるという現実から。
「あ、あのさ…。あたしってどんな風に見える?」
「…は?」
「だからさ、あたしの印象! シィクにはどんな風に見えてるのかなって…。」
「たかがそんだけでここまで連れてきたのか⁉」
「たかがって何よ! 女の子にとっては重要なの! いいから答えてよ!」
「怒鳴るな! 気付かれる!」
もはや二人とも大声だった。
「えっと、シィクにどう思われてるかを知りたいんだな?」
高速で頷くリリィ。
「分かった。俺がこっそり聞いてきてやる。だから解放してくれ。」
またも高速で頷くリリィ。
「あ、ありがと。後で教えて。」
「はいはい。」
やっと夢から帰ってこれたキーズ。幸い、誰にも気付かれずに済んだ。机に戻り、何も無かったかのように御飯を片付ける。
「あ、シィク! 今日、暇か? 魔法の特訓に付き合ってくれ!」
「珍しいな、キーズくんから誘ってくるなんて。いつもは面倒くさがるのに。」
「ちょっと聞きたいことがあるからな。そのついでだ。」
こっそりの意味を分かってないキーズだった。本人には悪気はないのだが…。
「分かった。それじゃ、特訓広場で待ってるね。」
特訓広場……そこは魔力が満ち溢れている広場のことである。幼い子供の魔法の練習に最適な場所でもあるため、いつの間にか、この名がついた。
…午後の授業が終わり、帰り支度をするキーズにリリィが話しかける。
「どうだった? 何て言ってた?」
「これから聞いてくる。ついてくるならきてもいいぞ。」
「え⁉ あ、いや、さすがに遠慮しとく。」
「はいよ。じゃあ明日の楽しみにしとけ。」
そう言ってキーズはシィクと一緒に特訓広場へと足を進める。
ユウは今日、一人さみしく帰路につくのであった。
「ボルトルーン!」
弱い電撃が広場の木に命中する。
「違うぞ、キーズ! ボルトルーンはもっとこう! 素早く円を描いて!」
「ホントにシィクはレクリエーションとか特訓になると人が変わるよな〜。」
「聞いてるのか、キーズ!」
「聞いちゃいねぇ。…なぁ、シィク。聞きたいことがあるんだけど。」
このタイミングでもう本題へ突入するキーズ。はやく終わらせて帰りたいのだ。
「なんだ?」
「お前ってリリィのこと、どう思ってる?」
「いきなり何だ? リリィって…リリィちゃんのこと?」
「そ。あのリリィ・クロウズちゃんだよ。優等生のシィク・ノーナックから見たらどんな風に見えてるのかなって思ってさ。」
「優等生って、そんなんじゃないよ。」
そんな会話を続けながら何とか聞き出せた。
「へぇ、成る程ね。面白い回答が得られたよ。」
「そうかい? それじゃ次はキーズの番だよ?」
「…え?」
「僕のばっかじゃ不公平だからね。」
「マジですか。」
なんやかんやで話が盛り上がった二人だった。