NO.2 かしこ著 「鍋 『団欒』
もうちょっと。
あともう少し……
私が指先をめいっぱい伸ばす。
愛しの彼まであと五ミリ。
ほら、頑張るのよ私。
もう……ちょっと……
――――ッ。
また来た。
どうしてこの子はいつもいつも私の邪魔ばかり。
痛いわ。そんなに私の腕を押さないで。まったく。
……うん、わかってる。わざとじゃないのよね。根はいい子なのよ。
だけどやっぱり、あなたの振り撒くその匂いはどうしても好きになれないの。
あっ。やだっ、もう。あっち行ってよっ。
私の髪がなんなのよ。そういう歯の浮くセリフは私じゃなくて、もっと脈がありそうな別の子に言ってあげたらどうなの。
あんた言ってることがいちいち寒いのよ。鳥肌が立つわよ。
あっ。違うのよっ、あなたの悪口言ったんじゃないの。ごめんね。
わかったでしょっ。ん、もう、しつこいっ。
あんたなんてアウトオブ眼中なのっ。今や草食男子の時代なのよ。今流行ってんのは草をおいしく食べれるタジン鍋なの。あんたの出る幕なんてないのよ。
分かったらもう付きまとわないでよねっ。
あ、あれ。私の愛しのあの人はどこへ。
さっきまでそこにいたのに……
はぁ。
結局私はあの人に触ることもできずに今日もその一生を終えるのですか。
あの人のあの白い肌に触れることも叶わないのですか。
神様、どうして私と彼を同じ種にしてくれなかったのですか……あっ




