NO.14 村井紅斗著 「山 『そんな未来』」
要塞そのもののような研究所から出ると、そこは地獄だった。
暗雲のたちこめる暗い空。草一本生えていない地面。鮮やかな色などどこにもなくて、黒と灰、それだけの世界。それから白。研究所の完全な白と、そしてーーーかつては生きていたはずのものの骨。人間のものももちろんある。まるで俺達が間違っているような、そんな風景。
見たくなかった、と隣で誰かがつぶやいた。不吉な風がびゅうっと吹き付けて、俺らにも同じようになれと急かしているようだ。辺りを見回す。どこも同じ、闇と、骨。
「俺達は、何のために、やってきたんだろうなぁ・・・」
俺は他人事のようにそうつぶやいた。涙がつうっと垂れた。
―――この研究のために、計13人もの人がその命を絶ったのだ。確かに俺らにとってもこの研究は興味深く楽しいものではあったが、それでも、こんな。
こんな朽ちた世界を見るためじゃなかったのに。
明るくて、争いが無くて、今とは全然違って豊かで、そんな本当に夢みたいな世界を夢見て。
「どうだい、万条目君。もう私らも、出て行っていいかい?」
耳につけたイヤホンから流れる、現代の総理大臣の声。その声に我に返る。
「・・・どうするんですか、所長・・・。こんなの、見せられませんよ!」
「・・・分かってる、分かってるよ」
もともと依頼してきたのはあっちだけれど、こんなものを見せたらーーー。
おい、万条目君、答えろ、おーい、と催促の声が聞こえる。
「・・・戻ろう」
俺はきびすを返した。えっ、という声が上がった。俺は気にせず歩いた。現在に繋がる白い建物に。専用のパスカードをすっと通して、研究所の扉を開ける。
「どうしたんだ、万条目君。いきなり戻ってきたりして」
「千条さん・・・」
俺は力なく笑った。
「全然違う、すごい世界でした。お楽しみに、とっておきましょう」
嘘はついていないけれど。
楽しみでもないけれど。
未来を見るなんて、つらいだけのことなんてしないで。
現代を、もっと豊かにしてください。
「そうかぁ、そうかぁ。それもそうだなぁ、うん、楽しみにしておこうかな。晴れやかな未来が決定しているんだ。今から見ることもないだろう」
総理大臣は笑った。俺はまた泣きたくなった。
こんな、こんな未来。
誰か脳に描くだろう?
誰もいない、何もない、悲しい未来なんて。




