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自作小説倶楽部 第1冊/2010年下半期(第1-6集)  作者: 自作小説倶楽部
第4集(2010年10月)/テーマ「秋」&「衣替え」
43/67

NO.11  しゅーひ 著 「衣替え」



『明日から10月だから、別れましょう。じゃあね♪』と、彼女は颯爽と駅に向かって行った。

現在、9月30日、午後9時ちょっと過ぎ。


最近、デートどころか電話すらあまり繋がらない状態だったので危ないなとは思っていたんだ。

だから今日は結構奮発したつもりだったのに、ここでお別れって、そりゃないよ。


彼女の10月だからの意味も判らないまま彼女の姿が見えなくなってからすでに30分近く立ち尽くした。

半袖シャツでもまだ熱を帯びた風がボクの体を通り抜けていった。


走馬灯のように、彼女との8ヶ月が頭の中を通り過ぎていく。


イベントホールでの出会い。

彼女からのメール。

喫茶店でのランチデート。

二人で行ったドライブ。

秘密の旅行。


活発な彼女はいつも、色々なプランをボクに提示してきたっけ。

あそこに行こう。ココが好き。私は6日がお休みよ。

そんな彼女に付き合うのが本当に好きだった。


友達の鈴木からは

『お前さぁ、ソレって振り回されてるんじゃないの?』

なんて言われたことがあったけど、そんなつもりは全くない。


いつだって彼女が主導権をもっていたけど、彼女が好きなようにしてあげるのも彼氏の特権だろ?


まぁ、確かに付き合い初めの頃 ボクがとある絵画の展覧会のチケットを見せた時

『え?私、絵とか良くわからないからパスね。行きたいなら一人で行ってきて』

なんて言われたっけなぁ~。まぁ、ボクも絶対に行きたいわけじゃなかったから、貰ったチケットは未だに机の引き出しの中だ。


そういえば、ボクが車を買うって決めた時、彼女にもついて来てもらったんだっけ。

ボクとしては黒いセダンタイプにしようと思っていたんだけど

『やっぱり時代はミニバンよね?色は白が私は好きなんだー。あ、店員さん、アルミ履くとお値段上がっちゃうぅ?』

と、ボクより車に詳しい彼女がばんばん店員と交渉してたっけ。


最終的にはホンダのステップワゴンって車になったんだ。当然色は白だよ。

ずっとトヨタの車だったボクだけど、まぁ乗ってみるとホンダもイイよね。

助手席の彼女もとっても喜んでくれたからいいんだけどね。


そんな積極低な彼女だったから、ボクが電話番号を聞こうとしたら

『電話連絡は私からするわ。なにかあったらメール頂戴』

って結局、電話番号を教えてくれなかったなぁ。まぁメールで十分だったし、連絡は彼女からしてくれたし。


そんな話を聞いた友達の鈴木は、

『お前さぁ、騙されてない?』

って真剣な顔で聞いてきたことがあったけど、そんなことは全くない。


そういえば、彼女にCDを10枚ほど貸しっぱなしだ。

最近はMP3プレイヤーがあるからCDなんて聞かないしね。


誕生日プレゼントにあげたバッグは結局デートで使ってくれなかったな。

『もったいなくて使えないの・・・』

なんて、かわいい事を言ってたなぁ。


そんな彼女からここ2ヶ月ぐらい連絡が取れなかったんだよね。

さすがに、使いすぎてちょっと金欠になっちゃったよ。って言ったのがマズかったのかな?

メールを打っても5回に1度ぐらいしか戻ってこなかったし。

今日だって、前に彼女が行きたいって言っていたフランス料理屋を予約したからって頼み込んで来て貰ったんだよな。

で、結局この仕打ちってワケだ。



おっけー おっけー

みなまで言うな。

判ってたよ?うん。ボクは判ってた。

でも、気づきたくなかったんだよね。自分にウソついてました。


ちきしょー!ばかやろー。

鈴木の言ってた通りだよ。


はぁ・・と肩を落としフラフラと駅そばのベンチに腰を落とした。

思えばこんな恋愛ばかりしている。

成長していないな。と自嘲ぎみにヘヘと笑ってみた。

むなしいだけだ。


なんの気になしに携帯電話を手に取る。

もう、彼女にメールする事も彼女から電話がかかって来ることもないだろう。


すると突然、メール着信の表示とバイブレーションで携帯電話が震えた。

相手は友達の鈴木からだ。


--お疲れ~。明日から衣替えだ。ちゃんとスーツを出したか~?じゃーな--


短い文章に鈴木の気遣いを感じる。

そうか、明日は10月1日で衣替えだな。

クールビズももう終わりだ。


そこで初めて彼女の言葉の意味がわかった気がした。

明日から10月なので気分一新しましょうって事だったんだ。


そうか、そうだよね。

今までの古い自分は脱ぎ捨てて、新しい自分に変わろう。

いきなりは無理なのは判っている。

せめて、外見からでも変わって行こう。


衣替えが良いタイミングなのかもしれない。

明日からのボクは、今日までのボクとは少しだけ違うんだ。


ベンチから立ち上がり、自宅へと向かった。

足取りは、少しだけ軽くなった。




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