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自作小説倶楽部 第1冊/2010年下半期(第1-6集)  作者: 自作小説倶楽部
第4集(2010年10月)/テーマ「秋」&「衣替え」
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NO.6 BENクー 著 / 衣替え「時の止まった部屋」

 その部屋は、7年前から何も変わっていない・・・

 部屋には千本を越えるビデオテープとDVD、再生用ビデオデッキとDVDデッキを繋いだテレビ、そして、2人掛け用ソファーと小机が置かれてある。それらが位置を動かすことはほとんどない。

 ただし、ずっと部屋を眠らせている訳ではなく、ここ4・5年間は弟の勉強部屋として利用されており、弟が勉強してない時には、私が部屋に篭って古いビデオを鑑賞している。

それでも、たしかにその部屋の時間は7年前から止まっていた。なぜなら、そこは父の部屋だからだ。


 6畳間の壁3面を埋め尽くすビデオテープのほか、押入れに2つの大きな透明衣装ボックスがあり、1つには、生前父が着ていたスーツ等の衣類が収められてあり、もう1つには、父の使っていた手帳やカメラ等の小道具が収められてある。 2週間ほど前から、弟はブレザーを着て登校するようになったが、それでも父の部屋で着替えることだけは絶対にしていない。もちろん、私も部屋で着替えたりはしない。

実は、この原因を作ったのは私の行動だった・・・


 父が亡くなって1週間ほど経ったある日、夜のランニングから戻ってきた私は、そのまま何気なく父の部屋に入って着替えていた。その部屋が玄関から一番近く、対面する浴室に入るため着替えるのに都合が良かったからだ。

 すると突然、部屋の扉が勢いよく開かれたかと思うと、そこには帰宅したばかりの母が立っていた。一瞬、母は呆然としていたが、瞬間、弾かれたように扉を閉めるとその夜は夕飯も食べずに寝室に篭ってしまった。

 一体何が起きたのかその時点では分からなかったが、翌朝、目を真っ赤に腫らした母を見た時、私は、母が父の姿を私に見たのだと気付かされた。父は帰ってくると、すぐに部屋の明かりを付けて着替えるのが常だったからだ。

その日から、兄弟には暗黙のルールが出来上がった・・・


 私と弟は、帰ってきてすぐにその部屋に入ることをしなくなった。またそれだけでなく、まだ母が戻っていない夜のうちに、部屋の明かりを付けて着替えるのだけは絶対にしないと決めたのだ。

 私たち兄弟もそれぞれに父の思い出を胸に秘めている。しかし、父の行動まで強く心に残っている訳ではない。

 母の思い出とともにその部屋の時間を止まったままにする是非は分からない。だが、私たち兄弟にとっては「守るべき我が家のルール」としてずっと生き残っている・・・


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