表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作小説倶楽部 第1冊/2010年下半期(第1-6集)  作者: 自作小説倶楽部
第4集(2010年10月)/テーマ「秋」&「衣替え」
36/67

NO.3 スイーツマン著/衣がえの秋 『冬虫夏草』

 冬虫夏草というのをご存知だろうか。虫に植物が寄生して、あたかも、異界の虫がこの世に姿を現し、冬は虫であったのが、夏になると草となる変身過程のような姿をしているのだ。

 源三げんぞうは、まだ幼い一人息子の京太郎きょうたろうをつれて、秋の森を散策し、偶然見つけたことがある。ぶなの古木の根元だった。

 あれから何十年たっただろう。京太郎を病気で失い、妻もしばらくして亡くした。八百坪の敷地に、建坪百坪もの母屋や蔵が立ち並ぶ屋敷に一人暮らしをしている。

 ふと、京太郎とよく散策した森の小道が懐かしくなり、ぶなの古木まで行ってみた。

          *

 源三が古木をいつまでもながめていると、

「冬虫夏草って、ほんとうに変身するんだよ。父さん」

 耳を疑った源三が目をこすってもう一度、古木を見上げたとき、太い枝が股になったところに、子供の姿のままをした京太郎をみた。

 なんということだ。古木が、巨大な蜻蛉とんぼになって背中に京太郎を乗せているではないか。

「父さんも乗ってよ」

「母さんのところに行くのか?」

「どうせくるのは判っているから、もう少し遊んでなさいって」

「大きい蜻蛉だな。昔一緒に読んだ図鑑にムカシトンボってのがあったろ? 全長二メートルを超えるって書かれてあったよな」

「僕らは極楽蜻蛉って呼んでるよ」

「極楽蜻蛉か。そりゃ傑作だ」

 源三は腹を抱えて笑った。森はいつのまにやらシダ類の森となり、開けたところには原始的な花々が咲き乱れていた。途中何度もティラノサウルス、ステゴサウルス、ブロントサウルスといった恐竜たちとすれ違った。二人を乗せた蜻蛉は気ままに森の中を飛び回る。

          *

 朝、源三が目が覚めると、病院のベッドで点滴をうたれて寝かされていることに気がついた。近所に住む甥夫婦が見舞いに来て、

源三伯父おじさんは運がいい。森林浴にきた若夫婦が偶然、倒れていた伯父さんをみつけて、携帯で消防署に連絡してくれたんだ。命拾いだったね。あとでよくお礼をするといいよ」

(もう少し遊べか)

 源三は半身を起こすと、病室の窓からみえる森を眺め、笑みを浮かべた。

          了

【補足】

 SNSで知り合ったKOHさんのコメントから

「生物学的にツッコミを入れるとすると、冬虫夏草は植物ではなく菌類です。今年もたくさん見つけました。ブロントサウルスは学名から消えてしまったそうですね。今はアパトサウルスだそうで。私たちの世代だと、図鑑にはブロントサウルス(orブロンドザウルス)と載っていました。あ、全長2mのトンボ…それは図鑑じゃないかも。」

 誤記訂正に有効なので引用させていただきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ