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自作小説倶楽部 第1冊/2010年下半期(第1-6集)  作者: 自作小説倶楽部
第3集(2010年9月)/テーマ 「月」&「電話」
29/67

N0.7  レーグル著 「月 『月の影より不確かな』」


結婚式での『永遠の誓い』とは何だったのか。


夫の浮気の証拠写真を見つめながら心の中で嘆息する。

カップに入ったコーヒーに月が映る。

あの式では、幸せそうに笑う私たちと口々に祝いの言葉を言う友人と、神妙な面持ちの親族の顔があった。


ロミオとジュリエットだね。


と友人たちは言った。

とある有名お菓子メーカーの会長の孫娘である私と、そのライバルお菓子メーカーの社長の息子だった夫。

お互い、二つのお菓子メーカーとは全く関係無い会社に勤め、偶然出会った。

ロミオとジュリエットのような甘い台詞は無かったが、一目惚れ同士ではあった。

付き合い始めて、ようやくお互いの素性を詳しく知ると、親族の多くが私たちの付き合いに反対することが分かった。

だが、障害が多いほど恋は燃え上がるもの。

友人たちには何度も助けられた。

私に縁談が持ち上がった時、あの人は真っ先に駆けつけてくれた。

そして、付き合って三年、私たちが出会った日にプロポーズされたのだ。


「薔薇の名前が変わっても、その美しい香りは変わらない」


あなたの名前は変わらなかったはずなのに、気持ちはすっかり変わってしまったのね。

もしロミオとジュリエットがハッピーエンドを迎えられたとしても、いつかはこんな日が来るのだろうか。



「ごめん。待ったかい」


「少しだけ」


「どうしたんだい?機嫌が悪いみたいだけど」


「そんなことないわ。すみません、コーヒーをもう一つ」


「いいよ。すぐ出るんだろ」


「いいじゃない。たまにはゆっくりしましょうよ」


「君がそう言うなら…」



恋をし続けるのと、愛し続けるのは、全く別の行為だ。

恋は満たされてしまった瞬間に、どこからか流れ出して、消えていってしまう。

満ちた月が欠け始めるように。


彼が、運ばれてきたコーヒーに口をつける。



「そろそろ考えてくれたかい?」


「何の話だったかしら」


「おいおい。冗談はよしてくれよ。僕たちはお互い家庭のある身だが、僕は真剣なんだ」


「そう」


「君がうんと言ってくれるなら、妻とは離婚する。二人で一緒になろう」


「絶対?私が離婚したら、あなたも絶対離婚するの?」


「ああ。もちろん。絶対だ」



月は自ら光を放たない。

だから、たった一晩でその影が変わってしまう。

全て借り物の偽物だから、夜だけ輝くのだ。



「じゃあ、あの月に誓ってちょうだい」


「月に?」


「駄目かしら」


「いや、そんなことない。もちろん誓うよ」



もうすぐあの人が、あの自動ドアから入ってくるだろう。

そして、この人の奥さんも。

私のことを世間知らずのお姫様だと思っているようだけど、あなたがどこで誰と何をしているのかぐらいは知っているの。



きっと最後に残るのは、月の影より不確かな



(完)

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