No.1 真亜弥 「星 『流れる夜空に』」
「おい、まだいるつもりなのか?」
「もちろんよ。あともうちょっとで終わりなんだから」
「ペルセウス流星群ってそんなにないだろ。あったとしても、もうこんな夜遅くだし…」
時刻はもう2時50分をまわっていた。けど私は、そんなことなんかどうでもよかった。流星群より孝史を見ていたかったから。
「……仕方ねぇな。最後まで一緒にいてやる」
「ホント?」
「女ひとり置いて帰れるかよ。誘拐とかされたらどうすんだ」
「…ありがと」
ペルセウス流星群。1月の「しぶんぎ座流星群」、12月の「ふたご座流星群」と並ぶ三大流星群のひとつで、2010年8月12日午後10時から、13日午前3時にかけて流れてくる流星群。私はそれを、天文部の仲間と見ていたけど、最後まで残っていたのは私と孝史だけだった。
「しかし…みんな、なんであんな早く帰ったんだ?」
「成績優秀ないい子は早く寝るんじゃないかしら」
「は? あいつらただの天文馬鹿だぞ?」
「知ってるわよ」
知ってるなら言うなよ、孝史が喋っているうちにも流星群は空を駆ける。
「綺麗ね…」
「けどでっかい隕石みたいなもんだぞ」
「このロマンチックな雰囲気壊さないでくれる?」
孝史は昔、高校に転入してきた私に声を掛けてくれた。どうやら私は、同性から『近寄りにくい』と思われていたらしい。まわりに壁を作った覚えはないんだけど。
「あ、また流れてきた」
これが今日の最後かもね、と笑う。横顔が、すごく眩しい。
「……何を願うの?」
「またそんなこと言ってる。お子様かよ」
「いいじゃない。願いが叶うかもしれないんだし」
「ま、言わねぇよ」
「じゃあ私も言わない」
「ずるいぞそれ!」
「アンタだってそうじゃない」
ぶつぶつ文句を言う孝史から視線を外した。
流れ星が、空を切っていく。
―――ねぇ、どうか。この願いが叶うなら。
(私に、想いを告げる勇気をください)
「ねぇ、」
「何だ?」
「アンタのこと、好きなの」
END




