8話 悪夢に誘われた先には
「マムー、ウチ次は何すればいい?」
「えーっと、それじゃあ次はそっちの掃除お願い出来る?」
私はマーに聞かれて雑巾を渡しながらトイレ近辺の拭き掃除をお願いする。
「私は次は洗濯物を畳みますね」
「ありがとうアスー」
率先的に動いてくれるアスにはお礼を伝えて私は洗濯物かごを抱えて干しに行く準備をする。
「オレ様の炎魔法で洗濯物くらい乾かしてやるのになんでそんな面倒なことするんだよ」
そんな私にレヴィと遊んでいたゼブルがそう声をかけてくるから
「そう言ってゼブルあんたこの前服全部焦がしたでしょ、それに、お日様の匂いのする布団は気持ち良いじゃない」
以前任せた時に起きた参事を突っ込む。
最近はこうしてマーもアスも手伝ってくれるから家事面ではとても助かっている。
買い出しには率先してゼブルもついてきてくれるし。
まぁ、ゼブルの場合食べたいものがあるからって理由がつくことが多いけどそれでも七人分の全てを一人でするより助かるのは事実だ。
「……っく、あはは」
「どうしたのベル?」
いつものようの机に突っ伏して寝ているベルの横を通りすぎようとすると途端にベルが笑い声をあげて上体を起こす。
「いやぁ、毎日毎日よく続けられるなぁって思って、人間ごときと家族ごっこをさ、ねぇマー、アス、ゼブル、恥ずかしくないの?」
だけどベルの視線は私には向かわず三人のほうへ向く。
「今は喧嘩なら買わないぜ、カッコよくないからな」
喧嘩したり力を誇示するのはカッコいいことではない。
そう教えてきたゼブルは最近は頻繁に喧嘩したり私を襲撃することも少しずつだが減ってきている。
「マムは良いマムだよー、ね? マム」
マーはやっぱり一番じゃないと怒るけど、それでも前みたいにすぐ癇癪を起こすこともなくなってきた。
「……私も別に悪い人間だとは思いませんね、少なくとも前の人とは違います」
アスも本を読んでるときなんかに私にはだけどちゃんと断ることも出来るようになってきて、見ているだけで分かるくらいには皆いいきらいだ。
「……あーそう、人間なんて誰も同じなのに本当に信じてるんだー」
だけどベルはみんなのその反応が気に食わなかったようで低い声でそう呟くと椅子から立ち上がり私の足に自分の手を押し当てた。
「……ベル?」
何がしたいのか意図が読み取れず私はベルに声をかけるも反応は返ってこない。
「あ! おいっ!! 誰か止めろ!!」
「あ、れ……?」
おそらく叫んだのはゼブル。
だけどそれは確定ではなかった。
それを認識する前に視界がグニャリと歪んで、洗濯物かごを手から取りこぼしながら床に沈んだからだ。
「……自分の固有魔法は眠精、手のひらで五秒間触れた相手を強制的に眠らせることが出来る、夢の内容も勿論好きに弄れるから、これからアナタに悪夢を見せます、その果てに戻ってきた時、どうなってるか、見ものだね」
暗転する世界のなか、ベルの声だけがただ鮮明に、頭のなかに響き渡っていた。




