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一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
剣豪領主

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ナルエンの戦い1

 味方を集める準備も十分にできた俺は20歳になった翌月、ヴァーン州太守のガストス・ベルトラン追討の兵を挙げた。


 かつてヴァーン州太守をつとめたことのあるサウザンリーフ家のエンゾを南北の街道沿いに時計回りに進軍させる。この時計回りルートの兵数は4000。


 一方でガストス・ベルトラン側は5000の兵をこれの防衛に当てている。ガストスに従っている領主が中心となっている兵だ。

 ただ、ガストス・ベルトラン自身は残り1500の兵で背後のナルエンというという土地に布陣している。これは一種の近衛兵だろう。


 ヴァーン州を防衛しようとすると、どうしても東に極端に寄った場所に布陣することになる。これだと州の内部で反乱が起きたりするとあっさり挟み撃ちに遭ってしまう。だから、少し離れたところに本陣を置いて、反乱などにも対応できるようにしているわけだ。


 このあたりの発想は無難なもので、大きな問題はないと思う。


 ただ、俺たちはヴァーン州で反乱を起こして敵を混乱させるなんて、そんな甘いことをするつもりはない。ガストス・ベルトランに協力してくれないだけで十分だ。敵がこれ以上増えないということがわかっていればそれでいい。


 俺たち別動隊1000人は夜間にサーファ村を一気に南下して、山中を突き進む。


 部隊は無言だ。がやがやしゃべると声が遠くに響いてしまう。

 精鋭はほとんどこちらに集中させている。

 この1000人でガストスをつぶす。


『サーファ村から延々と山の中を突き進めばヴァーン州に抜けられますからね。これはサーファ村を手に入れた時から考えていました』

 メッセージウィンドウなら声を出さずにやり取りできる。こんな時は便利だ。


『敵もこちらと山地をはさんでヴァーン州がつながってることぐらいは百も承知です。密使が行きかっているとは思ってるでしょうし』

 ナディアの放った輝いた矢が視界に入った。

 奥からうめき声のようなものが聞こえた。密使を殺すために待機していた兵だろう。

 ほぼ同時に、こっちの兵が駆けて、ほかの敵兵を切った。


『まさにこんなふうに』

 だな。こんなことは子供でもわかる。

 ホーリーライトで周囲を照らす。やはり、ヴァーン州の兵だ。


『ですが、主力に当たる兵がこちらから来るとは考えてないはずです。山中を長々と大軍で行軍すれば時間もかかりますし、先に対策もされるでしょう。少数なら気づかれないかもしれませんが、その場合も見越して敵は1500の兵をなかば遊軍にして後ろに置いているわけです』


 実際、俺たちの兵力は1000だ。これなら遊軍でも対処できる。


 大軍を時計回りに街道沿いに進ませて、当然そちらが本隊と思わせたうえで、精鋭部隊を短時間で山越えさせて、ガストスを狙う。

 これが今回の戦い方だ。


『敵もそれなりに腕っぷしの強い兵を置いていると思います。エンゾ・サウザンリーフと当たる側は数も5000人ですから、どうしても各領主の混成部隊になります。どこかの領主が勝手に撤退して守備が崩壊する危険もある。ガストスは自分が直接指揮できる近衛兵の部隊で身を守ることにしたはずです』


 案外、俺と発想が近いのがムカつくな。将来的に俺もガストスみたいに家臣を滅ぼそうとしたりするんだろうか。

『そこは今後次第でしょう。家臣を誅した領主など数えきれないほどいますから。ただ、私としては敵に恐れられつつ、家臣には慕われる存在でいてほしいですがね。隠居のマディスンみたいに』


 マディスンじい様、俺の一世一代の勝負を見ててくれ。

 ラコのおかげで支配領域だけならかつての竜騎士家より広いだろ。

 なので、仇討ちを一戦挑むことにした。


 コルマール州をさらに西に進んでいこうって意見もあったし、そのほうが仇討ちの一戦に挑むのは楽になっただろうけど、コルマール州の太守に睨まれるリスクも増える。クルトゥワ伯爵家と正面から争う力はないから今あたりがいい潮時だと思った。


 途中、何度か敵兵がいた。このあたりの山間部は州の境でもあるから当然だ。

 これを即座に全滅させて、なるべくこっちの侵攻がバレないようにする。


 そして、ついに午前8時頃、ヴァーン州の平野部に出た。





「隣の州の賊だ! ベルトラン家のほうには近づけるな!」

 そんな声が敵のほうから飛んでくる。

 いくらなんでも1000人の兵を隠しきれるわけがない。山間部に配置されていた守備隊が迎撃態勢で待っている。


「その忠義、見事だな。でも、ベルトラン家はそんな奴でも裏切るから気をつけろよ」

 ナディアが強く弓を引いた。

 その矢が守備隊の隊長の首に刺さる。

 近づいて敵のステータスを確認するまでもない。その前にナディアが仕留めてくれる。


「ありがとう、助かった」

「こんな時しか、腕を磨いた成果を確認できませんもの。あまり品のいいことではありませんが、いい練習台ですわ」

 それはそうかもしれない。


 刃向かう守備隊の残りは敬意を表してから首を斬ったりして絶命させた。これは戦争だから自分たちを殺そうとする者は殺す。でも、敵に敬意も示す。これは矛盾しない。


 こちらの密使がやってくる。

「ガストス・ベルトランはナルエンからほぼ動かずにこちらを待つ姿勢のようです!」

「わかった。任務ご苦労。ナルエンはゆるやかな高台だからな。敵を迎え撃つのには適した場所なんだよ」


 普通に考えれば、致命的に下手な手を敵が打ってるわけじゃない。少人数で攻め込むこちらは愚かだ。後詰めの兵が控えているわけでもないし、こちらも陣を置いて持久戦に持ち込んでもいいところだ。


 だが、それは全部兵の実力が同じぐらいという前提に基づいている。

 俺の兵のほうが圧倒的に強いから、ここは突撃で正解だ。

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