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一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
剣豪領主

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剣豪領主レオン1

 領主連合が去っていった三日後、ワキン家の領内の小さな寺院で俺はフィリ・ワキンと婚約した。


 あわただしく決めた割には行事という空気がやたらと濃かった。庶民同士の結婚のように恋愛要素で行ったものではないので仕方ない。


 それとミュー海神神殿でやればいいのではという意見も出たのだが、単純にミュー海神神殿まで出向くのが怖かった。その間にまた兵が攻めてきたなんてことになったらシャレにならない。


 それと、地元で早目に婚約を行ったという証拠を残しておかないと、ウソをついたことになりかねない。それでまた攻め込まれる理由をつけられるのは嫌だ。

 領主連合に攻め込まれないためになんとしても式を挙げる必要があった。


 領主階級の結婚なんてものは、すべて政略結婚なのかもしれないが、ここまでの政略的な結婚も貴重だろう。


 式典が終わったあと、エレヴァントゥス家とワキン家の関係者で宴会となったが、フィリはまったく笑っていなかった。愛想笑いすらしてもらえなかったので少しショックではあったが、相手の気持ちはわかる。俺は敵だと認識されててもおかしくない。


『別にレオンが異常なことをしてるわけではないから気になさらないでください。従えた領主の生活を保障するのも勝者の責務です。その中で敗者の側と婚約することはありえます。相手の夫を殺して言い寄ったとかでもないですし』


 ラコがしゃべらずにメッセージウィンドウで説明してくる。

 衆人環視の場だからしゃべれないし、やたらとフィリがラコをきつい目で見ているのでなかなかしゃべるチャンスがないのだ。


「何かありましたか?」とラコが表面上は笑顔で尋ねる。

「叔父の茶会に何度も呼ばれていましたね。まさか深い仲にでもおなりだったのかと思いまして」

 思った以上にまっすぐ攻撃してきてるな……!


「まさか。ただ、私も分家筋の人間ですから、少し気持ちもわかってもらえると思われたのでしょう」

「あなたぐらいの食わせ者がいなかったのがワキン家の敗因です」


「違いますよ。庶流家の人間に家臣が半分ついてきていたのはあなたの父親の実力の問題です。それならそもそも反乱など起きなかったでしょう」

 おい、ラコも正論で攻撃するな!





 戦後処理は多忙を極めた。

 まず、周辺の領主には野心のようなものはないという旨の使者を送りまくった。比較的規模の大きい領主に関してはエレオノーラさんにお願いした。


「神官長の仕事より領主の仕事のほうが圧倒的に忙しくなってきました」

 婚約の式典の時に出席していたエレオノーラさんにこう愚痴をこぼされた。


「ところで、シリル・バールという領主、ご存じですか?」

 その商人領主が領主連合を結成したという話だった。


「それはもう。領主というより商人と思っていますが。にしても、海神神殿が恨まれるようなことをした覚えはないんですよね。となると、海神神殿への遺恨じゃなくて、あなたを警戒したんでしょう」


 やっぱりか。

 商人の目からすると、俺の立ち回りはつぶしておかないとまずいものに映ったらしい。


 いずれ、北進する時にまた目をつけられるだろうな。なにかしら対策もしておかないと。


「今回、領主連合として参加したのは海に近い北側の領主が多かったですが、それもシリル・バールが声をかけやすかったからでしょう。私も重点的に顔を出しにいってきます」


「お手数をおかけいたします」

「ミュー海神神殿の印象まで悪くなったり、攻め込まれたりすると、困りますからね」

 おっしゃるとおりだった。

 俺たちの行動は海神神殿にものすごく迷惑をかけている。将来、大領主になったら土地も寄進しよう。


「それにしても、あなたがなりゆきとはいえ、ワキン家の人と結婚することになるとは思いませんでしたよ」

「形式的なものですよ。一応、同じ屋敷に暮らしてもらってますが、ほぼ顔を合わせない日もありますし」


「私はなんだかんだナディアさんと結婚するものだと思っていたんですが、はずれましたね」

 思うのはいいんだけど、いちいち本人に言わないでほしいな。こういうの、後世では控えるのがマナーってことにならないだろうか。


「まあ、海神神殿としては一人としか結婚してはいけないといったルールはないので、ほかの人と政略結婚してもいいですけどね」

「俺からは何もコメントしません。とくに計画もないですし」

 このあたりはラコがいろいろ考えているのだろうけど。どこそこの領主の娘と結婚させる予定だと言われても、どういう感情になればいいかわからん。きっと顔も知らないだろうし。



「あっ、そうそう、あなたに会いに来たいと領主から連絡がありました。ドニ・オトルナ子爵が来たいそうです」


 あの人、また来るのか。身分的にはこっちが会いに行くべきだけど、とにかく連絡はするか。





 後日、ようやくコルケ屋敷周辺の整備も進みだした頃、ドニが家臣を引き連れてやってきた。

 お忍びで来た前回とは意味合いが違う。家臣を引き連れてとなると、道中の領主に許可を得る必要もあるし、なかなか面倒臭い。


 その影響もあるのか、ドニの背後にはよその領主の関係者みたいなのまでぞろぞろついてきている。こっちも事前に人数が多いとは聞いていたが……。


「よう、久しぶりだな。ずいぶん大身たいしんの領主になったじゃねえか」

「1郡を支配してる子爵様が言ってもただの嫌味だぞ」


「俺のところは村の数は28だからな。お前のところを3倍したらだいたい同じだ。ところで、今回ははっきりした目的があって来た」


 ドニは馬上から周囲をきょろきょろ物色するように見回した。


 コルケ屋敷周辺の空き地に家臣の家を建てていくつもりだが、まだ着工してない草を刈っただけの土地が広がっている。


「場所は余ってるな。ここで手合わせしようぜ。今のお前の木剣だと危ないから、切れないのも用意してきた」


 これは強制的に戦わされることになるな……。


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