表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
郡の有力領主に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/82

ワキン家弔い合戦2

「よし! 今、突っ込め! 敵は浮足立ってるぞ!」


 司令塔の姿が見えなくなり、兵が混乱しているところにこちらの軍が攻め込む。

 ナディアの魔法の矢が撃たれて、敵兵が倒れる。こうなれば数の問題はどうってことはない。


 向こうは親玉のゼナ・ワキンがここには来てないな。司令塔が引きずり下ろされた後の命令が遅れている。ゼナはワキン家の屋敷に構えてるんだろうが、完全に読み誤ったな。


 俺も極力、先陣に出て、敵を打ち負かす。

 敵のダメージが増えてくると、じわじわと逃げ出す者が出てくる。そういう奴は装備が貧弱だから徴発された農民兵だろう。


「逃げる奴は追わなくていい! ラコを回収した後、屋敷のほうに攻め込む! これは前当主の弔い合戦だ!」

 ラコのほうは周囲の敵を叩き伏せて、手を振っていた。ラコがやられるわけないので、一番危険な役をやってもらうのは反則な気もしたが、今回の作戦の流れ上、ラコがやらないとまずい。本当にラコが失態をしたと思ってる奴もいるかもしれないし、その清算は必要だ。


『レオン、ここでもう一声。前当主のために戦いたいものはついてこいとか言ってください』

 え、ええと……。


「ワキン家の前当主のために戦いたい者は今からでもいいから俺についてこい! ゼナ・ワキンが絶望する姿を見せてやる! 殺されたワキン家の者の仇討ちは俺がやってやる!」

 こんなのでいいのか?

「素晴らしいです」とラコが声に出して言った。



 敵兵は壊乱して、組織的な防御を放棄した。

 離れた位置にいた別動隊が合流してきたりする前に俺たちは敵の本陣になっているワキン家の屋敷を目指す。

 建物の多くはお家騒動で焼けて残っていないが、駐屯地としての価値はある。ゼナ・ワキンがそこにいるのは明らかだった。


 ラコが俺の横に来て、言った。

「この土地をレオンが継承する空気を強く出したほうがいいので、できれば一騎打ちで」

「あんまり前に出るなとか、一騎討ちしろとか都合がいいな」

「世の中はそういうものです。それにもう負ける相手ではないです」


 俺の前で立ちふさがっていた敵が引かる矢で排除されていく。

「先払いはわたくしがやりますわ!」

「ありがとう、ナディア!」


 俺は敵の数もまばらになっているワキン家の屋敷跡に踏み込んでいく。


 そこにゼナが立っている。表情からは困惑は読み取れない。


 過去にも見たことはあるが、一応ステータスを確認するか。


===

ゼナ

職業・立場 領主

体力 76

魔力  7

運動 54

耐久 46

知力 29

幸運 35


魔法

なし


スキル

領主の基礎教養・一軍の将

===


 領主としては十分だと思う。ただ、人を惹きつけるほどのものはない。のんびり領主を続けることはできても雄飛するには不足というところか。


 おそらくだけど、中途半端に実力があるせいで、かえってこんな運命になったんだろうな。


 圧倒的な力があれば家臣から推されて当主になるなることもできただろうし、凡庸なら村一つで満足できた。


「何が弔い合戦だ。ガキが訳もわからず出兵して、家臣はいい迷惑だ。戦力的に不利なのに合戦を挑むなんてどうかしている」

 ゼナは軽装だが、やけに長い剣を構えていた。


「否定はしない。でも、あんたみたいに付け込まれるミスをするよりはマシだろ」


 その言葉にゼナの顔がゆがむ。

「お前、無能なふりをずっとしてやがったか。最初からワキン家の土地を乗っ取る準備をしていたな」

「いや、ワキン家を乗っ取ったのはお前のほうだろ」


 ゼナがしまったという顔をした。

 そう、弔い合戦のために討伐される側になってしまった時点でお前の負けだ。


「くそったれが! お前を殺して、サーファ村に攻め込んでやる!」


 ゼナの剣は悪い筋ではない。俺なら難なく受けられるが、そのへんの兵士ならこの領主は仕えるに足ると考えるはずだ。

「エレヴァントゥス家の分家筋ごときが調子に乗りやがって!」


 ゼナの剣にはたいして殺意がなかった。すでに諦めているところがあった。

 だから、俺は簡単にその長い剣を弾き飛ばした。


 ゼナはその場にひざまずいた。


「ちょうどよかったよ。当主になったらなったで、そこから先のビジョンが自分にはなかった。自分は当主になることだけを目的に生きてしまっていたらしい」

 自分が当主なんだと考え続けたせいだろうな。


 そこにラコがやってきた。

「ゼナ様、結果的にあなたを裏切ることになりました。謝罪いたします」

 ラコは騎士の礼で頭を下げた。


「いや、自分一人でも早晩反乱は起こして、弟を消そうとしていた。あるいは弟が先に動いたかもしれん。自分たちはそこしか見えてなかったからな」


 ゼナは自分の手のひらを眺めていた。

「決起した時はこれこそ正しい選択だと思ったが、今となっては全然そんなこともなかったな」





 ゼナ・ワキンは自分の所領をすべてレオン・エレヴァントゥス(つまり俺)に明け渡すことを認めた。


 ワキン家の生き残りが俺の臣下に入ることを認めた後で、俺はゼナ・ワキンの身柄を引き渡した。ワキン家の生き残りはゼナを処刑した。落としどころとしては妥当なものだと思う。



 厳密にはゼナ・ワキンとの争いとは関係ないが、ワキン家の所領の南側の高地にあるジーファ村の領主も俺と「同盟」を結ぶことを認めた。同盟といっても、今の俺とは勢力が違いすぎるので、事実上の服従だった。


 俺は合計8村の領主となった。ノイク郡は村の数はやたら多いが、それなりに広くもあるので領主としてはそれなりのものだ。

 ドニ・オトルナの四分の一か三分の一ぐらいの規模の領主ってところか。


今後、おおむね2日に1度のペースで更新したいと思っています。よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ