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一族皆殺しにされた没落領主、メッセージウィンドウの指導法で最強剣士に成り上がる  作者: 森田季節
郡の有力領主に

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村と村との潰し合い1

 一泊二日で修道院から村に戻ってきた俺たちはすぐに異変に気づいた。

 街道に近い場所に置かれている麦や野菜の貯蔵倉庫が荒らされていた。


 村長が説明責任のために村の入り口で待っていた。

「領主様たちが使いとして出かけた翌々日の夜中のことだと思います……。朝になってみると、貯蔵倉庫がこんなことに……」


「こりゃ、ひどいな。で、どこがやったか心当たりは?」

「ほぼ確実に、西隣のカーマ村かなと……。荷車のわだちの痕が残っていましたので……」


 カーマ村はサーファ村の西にある同じ程度の規模の寒村だ。

 このへんは南が山で、川は北側へと下っていく。で、東西に流れているそこそこの水量のローミ川に合流する。そのローミ川に沿って、ぽつぽつ小さな村がある。東から順に俺たちのこの村、カーマ村、奥カーマ村と三つが並んでいる。


配置としてはこんな感じだ

==============

      北の低い山

      ローミ川       平坦地

奥カーマ村 カーマ村 サーファ村


      南の険しい山

==============



 川はサーファ村の前を東に進んだところで一気に北に進路を変えてそこから先は平坦になるのだが、サーファ村や西のカーマ村のあたりは東西の川のすぐ北側も低い山になっていて、平坦地が村のある南側しかない。


 南の山に分け入るのは大変だし、どん詰まりみたいな場所にこの3つの村はある。


 村長があわてている一方で俺たちは落ち着いていた。

 口には出さなかったが、獲物が罠にかかったなと思った。


 おっかない領主が使いとして出て留守にするので、収穫物は奪い放題だ――と事前にカーマ村のほうには話を流していた。

 理由は単純で、村民が暴発して動いてくれれば儲けものだと思ったからだ。


「そうか、わかった、わかった。それじゃ、隣のカーマ村の領主に説明を求めに行くか」






 隣のカーマ村まで歩けばすぐの距離だ。村の奥のほうからでも30分も歩けば着く。ローミ川に近い貯蔵倉庫からはたかだか西に15分ほどだ。


 小さい村のくせに、屋敷はかなりの高台にあって、塀もそびえている。小さな城と言っていい規模だった。何の装備もなければ落とすのは骨が折れるだろう。屋敷が木造なら火矢を放ちまくって燃やせるかもしれないが。


 領主の屋敷の前に来ると、先に連絡を入れる者がいたのか、すぐに領主が屋敷から出てきた。


 カーマ村の領主はうだつの上がらない中年男だ。これでももう一つ西の、郡の最西端に当たる奥カーマ村も所領として持っている。代々、猫の額のような村を守ってきた地域密着の領主だ。兵も両村合わせて60人も用意できれば上出来だろう。


「申し訳ない。隣のサーファ村の領主のレオン・エレヴァントゥスです。留守にしている間に貯蔵倉庫が何者かに奪われましてね、こちらの村の農民が夜中に忍び込んで持っていったという声が上がっていまして」

 表面上はこちらが下手に出る。あくまでも、自分たちは正義でないといけない。


「領主様お立会いのもと、調べさせていただけないでしょうか?」

「はあ、調べるのはかまいませんが、どのように確認なさいますかな。麦や野菜に名前が書いてあるわけでもありませんし」


 シラを切るのは予想できていた。現行犯でないものを逮捕するのは難しい。うちの村でとれた野菜だと言われると普通は証明ができない。

 言うまでもなく対策もしてるけどな。


「レオン様、これを」

 手筈通り、ついてきていたナディアが俺に野菜を渡した。


「んっ? それは何ですかな? 見たことのない葉物野菜ですが」

「これは冠デイジーという植物でして、このあたりでは食用にしないのですが、海沿いの海神神殿付近では野菜として育てているんです。食用のものは春ギクと呼びます。キクというのは異国の植物の呼び方のようです。サーファ村は海神神殿領なので少量ながら生産して貯蔵庫にも入れていたのです」


 俺は領主の顔を凝視した。


「皆さんが知りもしない野菜がカーマ村で育てられていることはないはずだ。もし、この冠デイジーが野菜を入れた荷車でも見つかれば、それはクロということでよろしいですよね?」


 領主が焦っているのがよくわかった。といっても、別に領主が関与しているとは思ってないが。村民が余計なことをしたことぐらいは知っているんだろう。




 春ギクは野菜の詰まった荷車の中から見つかった。野菜の中に混じっていれば、見慣れてなくても野菜だと思うだろう。


「これはよろしくないですな。荷車を使ったとなると、最低でも数人は関与されていますよね。犯人の家族も含めて引き渡していただけますか?」


 窃盗は極めて重罪だ。それを赦せば共同体が維持できないためだ。村によっては、金額などに関わらず処刑すると決めている所すらある。この場合は村と村のやりとりなので、事情は異なってくるが。


 領主の顔が青くなった。

 もっとも、何を考えているかはだいたいわかる。


「この植物が入っているからといって、多数の村民が行ったという証拠にはなりませんな……。お引き取りください」


 悪事に加担した人間が多すぎるから、認められないよな。

 大量の人間を見殺しにする領主なんて、誰も領主の器量があるとはみなさない。プライドや意地の問題ではなく、こう言うしかないのだ。



「わかりました。こちらも後には退けませんので、合戦で勝負を決めましょう。明日の朝にこちらは軍を動かします」

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