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第八話 ここはない

※あの虫にまつわるエピソードです。苦手な方はご注意を!

 父の娘婿・G氏は、幽霊や怪奇現象には懐疑的な立場を取る人である。その手の話を好きな人間に対し、面と向かって否定こそしないが、「そんなものは存在しない」と考えている。

 

 だが一度、不気味な体験をしたという。


 G氏は独身時代、一人暮らしをするためのマンションを探していた。

 ある時、足を運んだ物件が今回の話の舞台である。

 デザイナーズマンションのような洗練された佇まいで、希望条件はほぼ満たしており、築年数も古くない。

 一見良さそうなのだが、実際に見てみるとどこか薄汚れている印象を受けたという。


「特段おかしなところもないんだけど、ちょっと“仄暗い水の底から”の映画に出てくる団地、わかるかな。ジメジメした……汚くないはずなのに、ああいう風だった」


 不動産屋に案内され、一緒に内見を始めてすぐ、G氏は眉を(ひそ)める。


 どの部屋を回っても、必ず一匹ずつゴキブリが死んでいた。

 誰も住んでいない部屋なのに、どこから来たのだろうか。


 それ以前に、管理はどうなっているのだろう。現時点でこのありさまということは、実際に住み始めて部屋に食べ物を置くようになったら……。考えただけでゾッとする。


 G氏と不動産屋は顔を見合わせた後、「ここは、ないですね」と(うなず)き合い、そのまま帰ったという。


 マンション全体に漂う(よど)んだ雰囲気とゴキブリの死骸は、単に不衛生なだけと片付けて良いものなのだろうか。

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