第四十話 予知夢
今夏、親戚の集まりで久々に顔を合わせたM氏が、興味深い話をしてくれた。彼は母方の親戚で、以前、“Z家の娘さんの話(第二十九話 参照)”をしてくれた人だ。
M氏は印象的な夢をよく見る。中には予知夢めいたものもあるという。
ある時期、津波の夢が続いて不安を覚えていたところ、東日本大震災が発生し、実家周辺も被害に遭ったそうだ。幸い、彼は離れた土地で生活していて無事だったが、故郷を襲った災害に胸を痛めていた。
そんな中、意味深な夢を見たらしい。
M氏は夢の中で自家用車に乗り、実家近くの交差点に居た。これは実在の場所で、空は快晴。馴染みの景色が広がっていて、とても心地が良かった。
やがて信号が青に変わり、走り出そうとした途端、不意に以下のような言葉が浮かんだという。
“今日はたのしい。明日はこわい――”
明るい太陽の下だったにも関わらず寒気を感じ、「何だ、今のは」と思ったところで目が覚めた。
M氏はこの夢を妻に話して聞かせたが、彼女はそういったものを一切信じない人なので、「また変な夢を見たんだね」と流されてしまった。
被災地の状況が落ち着いた頃、夫婦はM氏の実家を訪れることにした。
自家用車で家の近くまで来た時、二人はある光景に目を瞠った。
交差点の辺りが深く陥没していた。それはちょうど、M氏の夢の中で例の言葉が浮かんだ場所だったため、オカルトに懐疑的な妻も驚いたそうだ。
偶然かも知れないが、意味ありげなシチュエーションである。
聞けば、M氏は夢日記をつけていると言う。いつか見せて欲しいものだ。




