第三十九話 談笑
父の学生時代の友人・N氏の話。
ある夜、アパートで就寝していたN氏は、周囲の騒がしさで目が覚めた。
うるせぇなぁ、こんな遅くに……。
起き上がろうとしたら、体が微動だにしない。
これが金縛りか。
そう思いつつ足元に目をやると、愛用のロッキングチェアに誰かが座っているのが見えた。
女だった。
見たこともない若い女が、椅子を揺らしながら楽しげに話しかけて来ていた。
「……でね? ……なの……」
なんだ、こいつ。どこから入った?
というか、何しゃべってんだ?
声はハッキリ聞こえるのに、何故か言葉が拾えない。
そのうち、声が一つではないことに気付いた。
「──気付いたらよ、俺、その女と何かしゃべってんだよ。○○だよね、とか口が勝手に動いて、笑ったりしてんだ……」
異常事態に驚愕する間もなく、女はロッキングチェアから飛び降り、こちらに向かって来た。
そして彼が横たわるベッドに飛び乗ったかと思うと、足元でぴょんぴょん飛び跳ね始めたという。
それを最後にN氏の記憶は途絶えている。
「気味悪くてよぉ……何なんだろうな、ありゃ」
N氏はそう言っていたが、芸能人顔負けの美形でモテまくっていた彼の女性遍歴を知る友人達は、あいつのことだからそんな目に遭ってもおかしくないだろうと一様に納得していたという。




