第三十四話 シャープペンシル
高校生くらいの頃、自宅で妙な体験をしたことがある。
某日深夜、書き物をしていた時、手元が狂ってシャープペンシルが床に落下した。
すぐに拾おうとしたのだが、今落としたばかりのペンが見当たらない。
机の奥に入り込んだのかと隈なく調べるも、一向に見つからなかった。
落としたのは自分の勘違いだった可能性も考え、ペンスタンドをはじめ部屋中を捜し尽くしたがどこにもない。
わけがわからず、一旦、あたまをリセットすることにした。
ダイニングへ行って茶を飲みながら、思考を巡らせる。
一体、私のペンはどこへ行ってしまったのだろう。たかだか6畳ほどの部屋、それも足元に落としたはずのものが何故見つからないのだろうか……。
考えるうちに馬鹿馬鹿しくなってきた。
件のペンはデザインこそ凝っているが、ごく一般的なシャープペンシルだ。高価なものではないし、格別思い入れがあるわけでもない。他にも筆記具はあるから、もう一度捜して見つからなかったら諦めよう。
茶を飲み終えた私はそう結論付け、部屋へ戻る前、便所に寄った。
ドアを開けたところ、問題のペンが見つかった。
トイレットペーパーホルダーの上に、何事もなかったかのように載っていた。
まったくもって、わけがわからない。
床に落ちていたのなら、自分の服──例えば裾や袖の隙間──に入り込んでいたものが落下したと考えることもできる。しかし、この位置関係はどう考えてもあり得ない。
あまりにも不可解な事態にしばし呆然としたものの、まあ、見つかって良かったと切り替えた私は、それを回収して部屋に戻った。
そういえば実家ではよく物がなくなり、当人の思いもよらない場所から発見されることがあった。
大半は不注意が原因だろうが、その中のいくつかはこういう過程を辿っているのかも知れない。




