第三十三話 呪い
父と所縁のある土地に伝わる不気味な話。
ある年の冬、大火があり、大勢の人が焼け出された。
被災者たちは大地主(仮にAとする)の屋敷に身を寄せていたが、やがてAは彼らの存在を疎むようになった。
A家は大金持ちゆえ、多少の施しをしても痛手にはならない。だが、彼らを助けたところで一文にもならず、いつまでも居座られては迷惑だと思ったのだろう。
無情にも退去を迫るAに、被災者たちは色めき立つ。大雪のせいで、新しい家を建てるのも儘ならない。この極寒の中、放り出されては、年寄りや子供はいくらも経たずに命を落としてしまう。せめて春が来るまで居させてはくれないだろうかと懇願した。
ところが、彼らの願いが聞き届けられることはなく、問答無用で追い出されてしまう。これにより、幼い子供や高齢者が何人も力尽きた。
なんという血も涙もない男だと皆が悲憤の涙を流していた時、一人がこんなことを言った。
「呪術は、腕に覚えがある。これから自分の法力であの家を祟る。見ていろ、七代祟ってやる……」
彼は地元の神主で、かつて修験道を修めていた。
そして被災者の怒りを背負い、何らかの呪いをかけたのだという。
ここから、Aの一族には次々と不幸が降りかかった。原因不明の病や事故などでバタバタと人が亡くなり、事業もうまくいかなくなって、栄華を極めた家も傾いた。
なんでも、父と同じくらいの年頃の女性が“最後の代”だったそうなのだが、前の代(六代目)のエピソードが衝撃だった。
六代目がよちよち歩きをし始めた頃、ほんの3~4センチの段差をぽんと降りた途端、ぐにゃりと背骨が曲がり、それ以降、寝たきりになってしまった。それまで何の問題もなく、元気に歩き回っていたのに、である。
A家はどうにか家を存続させるも、最後の代(七代目)は非常に珍しい病(見た目に大きなハンデを抱える)を患い、入院を続けているという。
この話が恐ろしいのは、仇敵に対して一気にとどめを刺さないことだろう。宣言通り、七代目が生まれるまでは、災難を与えながらも家が絶えないように取り計らっているように思える。
そうして多大な恐怖とストレスを与えながら、最後の一人までじわじわと苦しめ続ける──ここに人間の底知れない怨嗟を感じ、背筋が冷えた。




