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第二十七話 真っ暗がりに

 父とは直接関係ないが、私の知人・X氏の体験談を紹介する。


 彼は若い頃、心霊スポット巡りにハマっていた。当時、オカルトや心霊番組の全盛期だったこともあり、雑誌などで数々の“名所”が取り上げられていた。X氏はそういったものから情報を得ては休暇を利用し、全国各地のいわくありげな場所に出かけていたそうだ。

 大抵は気の合う仲間とツーリングがてら遊びに行き、特に変わったこともないまま、それなりに楽しんで帰るのが常であった。


 某夏の深夜、X氏は友人達と共に、とある霊場に来ていた。死者の霊を慰める地蔵が無数に並び、非常に雰囲気のある場所だそうだ。

 想定よりも到着が遅れたが、月の光が明るかったため、散策に支障はない。

 

 彼らははしゃぎながら地蔵の間を移動していく。近くに海があり、大きな潮騒が聞こえるのも恐怖心を掻き立てた。

 

 しばらく進んでいくと、月の光が届かないエリアに入った。辺りは真っ暗で、自分の足元すら視認できない。


 これはいかんと、仲間の一人がポケットからライターを取り出し、火を点けた。

 その途端、一同は悲鳴を上げた。

 ほんの1メートル先にしゃがみ込み、地蔵に向かって一心不乱に手を合わせているおばあさんの姿があったのだ。


 必死に駐車場まで逃げ戻ってタバコを吸い、皆どうにか気持ちを落ち着けた。


 彼女は一体、あそこで何をしていたのだろうか。お参りだったにしても、ここは高齢の女性が夜遅くに来るような場所ではない。

 況してあんな真っ暗な中、たった一人で……。


 そこまで考えて、X氏はぞくりと背筋が寒くなった。

 友人達は「あれは生きた人間だった」と言っていたが、いずれにせよ異様な状況には違いない。


「だってさ、自分ら以外、誰もいないと思ってた真っ暗がりの霊場に、いきなりばあちゃんが浮かび上がんだよ? もう死ぬかと思ったよね。あんなもん、バケモノであってもなくても怖過ぎる……」

 

 そうコメントしたX氏だったが、その後も懲りずに心霊スポット巡りを続けていたという。


 彼の体験談は他にもあるので、日を改めて紹介したい。


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