第二十二話 歴史公園にて
父はかつてキャンピングカーを所有しており、私が子供の頃はよく家族でキャンプに出かけていた。コンパクトな車だったが、ポータブルトイレにシンク、小型冷蔵庫など必要最小限の設備が付いていて、いざとなったら泊まれるという強みがあるため、居住エリアから遠く離れた地域まで足をのばすこともあった。
ある時、東北地方の某歴史公園の駐車場に泊まる機会があった。平安時代に合戦のあった土地を整備した公園で、美しく趣深い景観が目玉だった。
ただ、到着したのがだいぶ遅い時間だったので散策は明日にし、その日は夕食を摂って就寝という流れになった。年長の子供たちはスライド式のバンクベッド、大人たちと末弟は座席を変形させたダイニングベッドで寝るのがいつものスタイルであった。
翌朝、あくびをしていた長妹に、母が「二度寝すると眠いよね」と声をかけた。ところが長妹は首を傾げ、昨夜は一度も起きていないと返した。
不審がる母の話を掘り下げたところ、こんなことがあったらしい。
曰く、明け方ふと目を覚ますと、薄明りの中、シンクの辺りに髪の長い女性が立っているのが見えたという。その人は髪を櫛削るような動きをしていた。
当時、長妹は腰まであるロングヘアをしており、残りは全員短髪だったため、母は何の疑いもなく彼女だと思ったそうだ。
「てっきり××(長妹)がトイレに起きてきたんだと思ったんだよ。白っぽいカーディガンみたいなの羽織ってたし、××はそういう服よく着てるからさ……」
私は母の見間違い説や長妹が寝ぼけていた説など、現実的な可能性を考えていた。
一方、父はここが合戦場で、女性や子供も大勢亡くなっていることに鑑み、その時の誰かが現れたのかも知れない的なコメントをして、場を大いに沸かせていた。
それを聞いた母は、「もしかすると、私が見たのは白い着物を着たお姫様だったのかも!」と興奮気味に言った。
両親共、ビビるより先に盛り上がるタイプの“超常現象肯定派”なので、朝からテンションが上がり、その後の散策も捗っていたようだ。




