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第十五話 雉

 小学生の頃、家族旅行で地方の旅館に一泊することとなった。

 普段なかなか会えない同年代の従兄弟と遊べるのが嬉しくて、私はテンションが上がっていた。


 大人達が荷物を下ろして寛ぎ始める中、子供達は大興奮で部屋をチェックし、公共スペースを探検しに出掛けた。


 あちこち覗いていたら、広間の一角に(きじ)剝製(はくせい)が置かれているのが目に留まった。鮮やかな羽毛が美しい雄の雉で、木の枝に直立しこちらを見ている様が象られていた。


 従兄弟ときょうだいは先に部屋を出て行ったが、私は興味を引かれ、近付いて行った。 

 剥製の前に来て、よく見ようと腰を屈めた時のことだ。


「ケェェッ!」


 ()()が口を開き、大声で鳴いた。


 私は吃驚し、後ろに飛び退いた。

 一瞬、こいつ生きてたのかと思った。だが、そんなはずはない。

 誰かの声を聞き間違えたのかと辺りを見回すも、広間には自分しかいなかった。


 急激に怖くなった私は大人達のもとへ飛んで行って報告したが、一笑に付されてしまった。


「いや、本当だから! 本当に見たんだって! あいつ、こっち見て鳴いたんだって!!」


 恐怖と苛立ちを隠せない私の様子を見兼ねた母が言った。


「あんたがじろじろ見てたから、“何見てんだ?”って威嚇されたんじゃない?」


 そのコメントが妙にしっくり来て、私は騒ぐのをやめた。



 雉の雄が「ケーン!」と大声で鳴くのは、縄張りを宣言する意味があるという。

 私が無遠慮に近付き過ぎたため、()は警戒したのかも知れない。



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