脱出の手口
とりあえず運営に報告だ。報告の対応を待っている間、先ほどから気になっているものを調べさせてもらおう。気になっているものとは、この枷である。これ、採取できるようなのだ。この枷は<魔力視>+<鑑定>によると、枷の内側の魔法陣から加工された魔力…EPをとりこみ、硬化・鈍化の魔術を発動させるもののように作られているらしい。欲しい。どうしても欲しい。音のならないように、付けられている部分の<幻影>だけ消して落ちたところを<採集>で取れないか。我ながら完璧な作戦だと思うが…
まずは腕から…⦅“研究所の枷・腕用”を取得しました⦆⦅“強化された鎖”を入手しました⦆この調子で、もう一方の腕の枷、脚の枷を取り、最後に全て消して首の枷を採る。
さらに<魔力視>+<鑑定>で周囲を見渡すと、床石の一部が取り出せるらしい。慎重に…しんちょ~うに……<採集>使おう。
床石の一部とはいえ、小さい妖精の状態では岩を引き摺り出すようなものなのだ。
床石を外したら階段が出現した。おそらく、ここからが正規ルートなのだろうが、俺は妖精だ。オートマタではない。背中にある翅はただのテクスチャか?ただの雰囲気出しのためだけのものか?否である。だから俺は飛ぶ。
俺は翅を動かそうと力をこめる。しかし動かない。当然だ。もともと人間にはないものを動かそうとしているのだから。そうして動かそうとしていると、運営からのメールが来た。どうやら、衛兵の間違いだったようで使用らしい、既知の都市にワープできるアイテムをもらった。これで脱出してくれということなのだろうが、
「これ、上からも脱出できるよな」
上から日光が差しているので、採光窓みたいなものがあるのだろう。そこからも脱出できるはずだ。そのためには翅を動かす必要がある。
翅も自身の一部であるから痛覚がある。痛覚があるなら痛めつければ動かし方もわかるはずだ。そう思いつき、翅を岩にぶつけたり、石レンガの隙間に翅を挿して擬似的に動かしていると、天井が降ってきた。いや、俺が天井に向かって上昇したのだ。そして加速したものが急に止まることはできないわけで。俺は天井に叩きつけられた。
「まあでも。分かったことがいくつかできたから、ヨシ」
まず、翅を動かす時の感覚が大体わかった。俺が制空権を得る時も近い。そして、光が差しているのはガラスもはまっていない窓だった。
そして、初リスポーン。リスポンしたら、塔の底だった。まあ、強制クエストで死に逃げができるほど甘くないだろうしな。
その後特にやることもなかったので、今日はもうログアウトした。
なにを見てヨシって言ったんですかねぇ
ハカンがパク……強奪したアイテムの鑑定画面↓
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研究所の枷・腕用
効果:EP吸収、硬化、鈍化
接触している対象のEPを奪い、重量を増加しその場にとどまり続ける魔術を行使する枷。主にゴーレム系統にしか効果がない。
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強化された鎖
効果:EP吸収、自動回復(微)
EPの通り道となるように作られた鎖。決して切れないようにEPが通ると回復する機能がある。
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EPは精製された魔力のことです