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五八話 『説得』

マサムネ 「武装…蜂起か…」

     「ヤマト、お前はまだまだ若い。そうやって、結論を急がなくとも良いんじゃないか?」

ヤマト 「いいえ、私は至って合理的に物事を考えているつもりです。頭領、日に日に天使族が我々人間に対して締め付けを強めていることはご存知ですよね?」

    「我々には時間がない」

マサムネ 「そうは言うが…」

     「俺達には、今の生活がある。そして、D地区の住民を食わせていく義務があるんだ」

     「D地区を見ただろう?10年前までとは言わなくても、最低限の生活は成り立っている」

     「これ以上、リスクを冒すことは出来ないな」

D地区は、その豊かさで知られている

表向きは、天使族と協調関係にあり、資源や食料などで融通をして貰っているらしい

そして、マサムネはその資源をゲリラ内で独占することはなく、D地区の住民に積極的に分配している

そのため、住民たちもゲリラに協力的になり、反乱を恐れる天使族もD地区のゲリラをますます懐柔しようとする…という循環関係にある

だが、急進的な意見を押し通そうとするヤマトとは意見が合わないだろう

ヤマト 「今は小康状態だとしても、天使族は必ず人間を滅ぼそうとします」

    「貴方たちが不必要と判断されれば、躊躇なくD地区も破壊されるでしょう」

    「まあ…それはB地区も同じ条件ですが」

マサムネ 「確かに、天使族打倒は我々人類の悲願だ」

      「しかし、実際問題どうすべきだと思う?圧倒的戦力差の中で、どうやって立ち回るべきだとお前は考えている」

      「そこまで言うんだったら、何か案があるんだな?」

ヤマト 「そこです。私もこれを長い間考えてきました。先の戦闘では味方500に対し、相手はたったの100。それなのにも関わらず、敗走を余儀なくされました」

     「私達には、決定打が足りない」

     「妨害や、ゲリラ戦術だけではなく、敵戦力に対して、重い一撃を食らわせることが必要なのです」

     「そして、その決定打を私はついに発見しました」

マサムネ 「ほう…それは何だ」

ヤマト 「彼女です。テセラなのです」

俺に向けて指を指す

テセラ 「…え?」

マサムネ 「確かにテセラ君は優秀なゲリラだったが…戦局を変えるほどではあるまい」

ヤマト 「いいえ、違います。彼女は天使族に匹敵する力を持ち、戦局を逆転させる能力があります」

マサムネ 「…ほう?」

マサムネがじろりと睨む

     「そうなのか?テセラ君」

     「俺には馬鹿馬鹿しい戯言にしか聞こえないが」

テセラ 「正直、俺にもそんな力があるとは思えません」

    「でも、少しでもゲリラの戦力になるのならば手伝いたいと思っています」

マサムネ 「…ダメだな」

     「証拠も見せられない、そんな薄っぺらい決意じゃ俺は全てを掛けることはできないよ」

テセラ 「…」

コダイ 「…お言葉ですが、マサムネ様」

突然、会話にコダイが入ってくる

    「彼が言っていることは本当です」

    「このテセラ君…彼女には力があります」

    「私はそれをこの目で見ました。観戦武官として、参っていたので」

マサムネ 「何…?そうなのか?」

コダイ 「えぇ」

マサムネ 「ふむ…それならば、前向きに検討しようじゃないか」

ヤマト 「ありがとうございます」

    「詳しい話は後日、無線でお送りしますので」


………

……


ヤマト達が去っていく

それを見届けた後に、残された老獪な男たちはぼやく

マサムネ 「イマイチ信用できないな」

     「ヤマトといい、テセラ君といい、何か隠しているのではないか?」

     「コダイ、お前はどう思う?」

コダイ 「私はそれなりに信用出来ると思いますがね」

    「それは、昔からのヤマト君の言動を見れば明らかではないでしょうか」

マサムネ 「確かに、昔から彼は優秀なゲリラではあったんだが…なんだかなぁ」

ヤマトとマサムネ、同じゲリラではあったが、二人の距離感は時間が経つごとに離れていっている

それは、革新と保守という根本的な戦略思想が異なっているに他ならない

そして、その溝は少しの会話程度では埋まらないものであった

コダイ 「そこまで疑うなら、派兵も取りやめにすれば良いのでは?」

マサムネ 「俺はヤマトを疑っているが、お前のことは信用している」

     「口数の少ないお前の助言は間違ったことはないからな」

コダイ 「…だから足元を掬われるのです」

マサムネ 「…?なんか言ったか?」

コダイ 「いいえ」

コダイは、影のある愛想笑いを浮かべてマサムネを眺めた

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