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五三話 『教会(2/2)』

静寂

そんな言葉が似合う建物は、ここ以外にほとんどあるまいか

それ程までに、ここは市井の喧騒から隔絶されていた

両開きの扉を開くと、約50m先の真正面に、謎の彫刻が飾られ、俺の足元からそこまでカーペットが伸びていた

その両隣には、椅子が所狭しと並べられている

よくあるカトリック教会を想像すれば、想像に容易いだろう

女 「適当に座ってください」

  「今、茶を持ってきますので」

テセラ 「あぁ…」

俺は一番近くにある椅子に腰掛けた

元々、俺の生活していた孤児院がミッション系のそれであったために、そこまで疎外感は感じられない

むしろ、気が休まる気がした

だが、正面に飾られた彫刻は十字架ではなかった

それは、男女の生々しいまぐわいを表現しているような…

女 「あの彫刻が気になりますか?」

テセラ 「そうだな」

気づけば、お盆を持ったシスターが横に佇んでいる

    「天使教というのは、随分と下品なものを信仰しているんだな」

女 「そうでしょうか?それなら、十字架に架けられた男を信仰対象にしている貴方達は、随分と野蛮だと私は思いますが」

テセラ 「俺はキリスト教徒じゃない」

女 「一般論ですよ」

反論されたセリフは確かに正確で、反論の余地を与えない

なかなか強かな女のようだ

  「…どうぞ、お茶です」

女が自分の茶を飲むのを確認してから、俺も飲み始める

…どうやら、毒は無さそうだ

テセラ 「それで、俺に何の用だ」

女 「いえ、ですから、貴女に静寂を…」

テセラ 「御託はいい。早く話せ」

女 「…話を急く女性は殿方にモテませんよ」

テセラ 「大きなお世話だ」

女 「…」

  「では、一つ世間話を」

  「『天使教』…貴女もご存知ですね」

テセラ 「…そうだな」

女 「天使教…ノウン神教とも呼ばれるこれは一神教であり、神と神が作り出した子孫を信仰しております」

  「神は現世に留まることなく、この世界を去りましたが、その子孫はこの世界に生きています」

  「その一人が今の女王陛下であり、神に匹敵する力を持ち合わせているのです」

テセラ 「なるほど」

まあ、宗教の話としてはよくある話だ

女 「そして、あの彫刻はその女王陛下が『初めて血を流した日』として伝えられております」

  「良くあの彫刻を観察して下さい。羽が千切れた男と、羽をはためかせた女(女王陛下)がいるでしょう?」

  「前者は享楽的表情を見られ、後者は恥辱的な表情を浮かべています」

  「これは、人間と天使族の対比であって、古代には天使族が人間に虐げられていたことを暗喩しているのです」

テセラ 「それが、今の人間支配の正当性を象徴していると?」

女 「理解が早くて助かります」

  「今の女王陛下は人間の復讐を原動力に存命されています」

  「そして…我々人間は古代に人間が犯した(とが)を深く反省し、陛下が許すその日まで、我々は彼女を慰撫する他無いのです」

テセラ 「だから、俺達がこんな目に遭ってるのはしょうがないと?我慢しろと?」

    「馬鹿馬鹿しい」

カップを叩きつけて、外を出ようとする

女 「いえ、ここからが本題です」

  「『受胎聖典』という天使教の聖典があるのですが、そこにイレギュラーが載っているのです」

テセラ 「イレギュラー…?」

女 「『―テセラ(四分子)、第四の人類…

―羽生えたる者と、そうでないもの双方を救済する存在…

―この心が母のを獲得する時、その力は覚醒へと導くだろう…』」

  「そう、書かれているのです」

  「そして、テセラ…とは貴女のことですね?」

テセラ 「…っ!何故、俺の名前を知っている」

    「それに、どうして俺の名前が…」

女 「貴女は、この世界…この地球を救済する存在なのです。どうか…どうか、この世界をお導き下さい」

テセラ 「…」

俺は、立ち尽くすことしか出来なかった

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