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四四話 『決心』

テセラ 「それで?」

    「なんで俺達はこんな時に優雅にお茶会なんてしてるんだ?」

ヤマトと別れたその数十分後、示し合わせたかのようにジロウが来客した

最初は追い返そうとしたが、彼が持ってきた『土産』に心を打たれ、上げることにした

ゼオ 「美味い!うまいぞ!これは!」

その土産とは『チョコレート』のこと

砂糖とカカオをふんだんに混ぜ合わせ、冷やして固めたこの食べ物は、もはや一般人には手の届かない高級品として知られることになる

そんな価値をゼオは知ってか知らずか、味わう間隔も無い程に、バクバクと口に詰め込んでいる

テセラ 「おい、全部食うな。俺にも食わせてくれ」

ゼオ 「わはっておう」

テセラ 「…」

    「しかし…こんな高級品、良く仕入れてきたな?」

    「もう数年はお目にかかってない代物だぞ」

ジロウ 「ククク…まァ、深くハ聞くな」

    「ここに持ってキたのは、気マぐれだ」

テセラ 「そうですか…」

    「ていうか、何故お前がここにいる」

    「ゲリラの戦闘は始まっているぞ」

ジロウ 「前カら言っているダろう?俺ハもはやゲリラではナい。協力すルことは、アッてもそレ以上はする義理はナイ…」

テセラ 「ふん…命が惜しいか」

    「金だけ出して、手伝った気になっているだけだ。それは」

ジロウ 「ゲリラを自分勝手な理由で辞め、金サえ出していないお前ニは、分からナい感覚ダロうな」

    「そうやって、偉ソうに説教する暇があるナら、天使族の一人クらい殺シてみろ」

そういうと、どこからのもなく、アンテナ付きの謎の機械を取り出す

テセラ 「これは…」

ゲリラで多用されていた通信機であった

先程、俺の家に訪ねてきたヤマトも同じような型番のそれを持っていた気がする

ジロウ 「よシ…」

この機械に取り付けられているタップや摘みを動かして、チャンネルを合わせる

最初は耳鳴りのような不快な音しか聞こえなかったが、次第に焦点が定まってきた

通信機 「『ガガガ…』」

    「『クソッ!やられた!こちら第7小隊!同志が5人もやられた!』」

    「『救護班を要請する!聞こえているか!?救護班だ…!』」

    「『こちら第2小隊…隊長以下、20名が死亡。もはや、組織的抵抗は不可能です。新たな指示を…!」』

暗闇の中から、複数の誰かに囁かれている感覚に襲われる

誰もが必死に生きて、誰もが死んでゆく

その過程をゆっくりとだが確実に、俺に見せつけてくるようだ

ジロウ 「お前ガこコで、のうノうと生きていル間ニも、ゲリラは戦ってイる。そレも、お前みたイな視野狭窄ではない。

奴らハ、100年後、200年後の人類ノために自らノ命を捧げてイる」

テセラ 「…」

ゼオ 「そうだぞテセラ。何をムキになっている」

   「別に我々は、お前に死んでほしい訳ではない。奴らに対抗出来る能力を持つ、お前に、力の使い方を誤って欲しくないだけだ」

   「お前はゲリラで昔、かなりの強者だったと聞いている。なら今の現状を見て、助けに行くのが義理と人情というものだろう?」

テセラ「うるさいな、どいつもこいつも」

俺は、居た堪れなくなってしまい、外に出る 


………

……

… 


部屋に残された2人は静かにため息をつく

ジロウとゼオ。息を吐いたタイミングが全く同じことを考えると、やはりテセラの言う通り、気が合うかもしれない

ゼオ 「親心、子知らず、か…」

ジロウ 「アん?」

ゼオの独り言をジロウは理解出来なかったようだ

ゼオ 「おいハゲ。ここから戦闘地域までどれほどかかる?」

ジロウ 「…40分くらいダが」

ゼオ 「そうか…」

ゼオはそう呟くと、おもむろに立ち上がる

ジロウ 「オい、何処に行ク」

ゼオ 「テセラを説得する」

   「お前は、テセラが直ぐに戦闘地域まで行けるように準備しておいてくれ」


………

……


テセラ 「フゥー」

玄関前で立ち尽くし、ジロウから貰った煙草を吸う

ゲリラ時代は抵抗無くこれら嗜好品を嗜んでいたが、ゼオと会ったことでそんな機会も無くなってしまった

だから、俺が今になって煙草を吸うのは本当に珍しい

だが、生憎今は雨天であり、満天の月を眺めながら思索に耽ることは難しいが…

ゼオ 「おい」

気づくと、ゼオが後ろに立っていた

薄い部屋着で外に出たのか、見るからに寒そうだ

テセラ 「風邪引くぞ」

自分の上着をゼオの肩に掛けてやる

ゼオ 「ありがとう」

   「…」

テセラ 「それで、何の用だ?」

ゼオ「お前は…何故ゲリラになることを拒む」

テセラ 「何故って言われても…」

    「俺は家族がいる、お前がいる。ゼオを残したまま死ぬ事はできない」

ゼオ 「我は別に構わないと言っている。別にテセラに死んで欲しいとか思っている訳ではないが、一人でも生きて行ける」

   「最悪、身体でも売れば…当面は問題無いだろう」

テセラ 「そんな事を言うな」

    「お前が全うに成長するまでは、俺は死ねない」

ゼオ 「…詭弁だな」

テセラ 「え?」

ゼオ 「お前は何か勘違いしている」

   「テセラは、『ゼオを守るため』だとか、『全うに生きて欲しい』だとか言ってるが、一向に自立させる意向を見せない」

   「ただ、ペットのように我を飼い殺しにしている。当人が自立する意思を示しているのにだ」

   「我を守るとは何だ?お前の言う『全うに生きる』とはどんな定義なのだ?」

   「お前が『全うに生き』てないのに、他人に理想を押し付けるなんて、なんと傲慢なことだ」

テセラ 「何を言って…」

ゼオ 「お前は我を守りたいのではない」

「ただ、『家族が居る』という自分を守りたいだけなのだ」

   「それならば、こんなかりそめの家族よりも、守るべきものがあるのではないか?」

   「『実質』と『名目』を履き違える愚かさを踏むべきではないぞ」

守るべきもの…今、ゲリラで活動している2人の顔が浮かび上がって来る

テセラ 「でも…でも…」

分かっていたさ。ゼオもそれを承知で俺の数年にも渡る『家族ごっこ』に付き合ってくれたかもしれない

だけど、今更それを修正するなんて…

『バチンッ!』

突然、俺の頬に大きな衝撃が入る

テセラ 「何を…!」

ゼオ 「甘えるな…!お前の親はそんなに腑抜けた性格にテセラを育てたことは無かった!」

テセラ 「親、だと?」

親…家族、俺の本当の…

    「お前、俺の親を知ってるのか?」

思わず肩を掴み、揺らしてしまう

ゼオ 「…」

しまったとばかりに目を逸らす

   「お前の親…特に母親は高貴な人物であった」

   「女としても申し分なく、固い芯を持ち、心の優しい人物だった…」

   「彼女はいつも言っていたよ。『汝は、汝の道をゆけ、そして人々にはその言うに任せよ』…と」

テセラ 「…!」

その言葉を聞いた瞬間、脳内に何かがかけめぐる

それは美しい女

俺は彼女に抱かれ、優しい笑みを向けられていた

そしてその背中には、純白の…

   「…俺の母親は陳腐なセリフが好きだったようだ。だが、心に響く」

   「ゼオ、すまなかった。俺は行くよ。大事な物を守るために」

ゼオ 「それで良い」

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