四三・五話 『用語集』
『テセラ』
漢字で書くと、弖世羅。
誰の子なのか、名前はどのように付けられたのか、出自が全て不明の女。
気づけば、孤児院に放り込まれていた。
恐らく、年齢は20代中盤。
一時は、ゲリラでそれなりの頭角を表していたが、とあることをきっかけにゲリラを辞める。
見た目や言動は荒々しいが実は、哲学、歴史学、法学、言語学など広範な学問に精通している。
『ゼオ』
出自不明。ただ、テセラの妹という事実が残る。
テセラの良き理解者であり、批評者でもある。
殆どを家で過ごしているくせに、何故か、テセラの知らないようなアングラな話や、人間の話題などを頻繁に持ち込んでくる。
特技は、人の心を読むこと。
趣味はレトロなもの全般。
『天使族』
人間族と対になるような、地球上生命体。
『女王陛下』と呼ばれる天使族を祖とする単一民族、単一国家を作る。
人間族と比べ、フィジカルは強く、飛行能力を持ち、魔法(超能力)を使うことが出来る。
だが、人口は1000万人ほどに過ぎず、人間族よりも圧倒的に数が少ない。
また、天使族の中にもヒエラルキーが存在する。
『上級天使』
女王陛下が創造した天使族の中でも、特に個の意識が強く、強力な魔法を使える天使族の氏族。
『ノウン』と呼ばれる姓を名乗ることが出来、名前が与えられている存在。
上級天使は生まれつき、高位の官職や、将校としての地位が与えられる。そして、その範囲の中で出世が認められている。
例)シィネルガシア=ノウン
エピスミア=ノウン
テペリア=エグザルホス=ノウン
『下級天使』
アリのような個の意識が低い個体。天使族の約9割を占める。
『ノウン』という姓を持つことも認められず、公に名前を名乗ることも許されない。
女王陛下や上級天使に仕え、様々な役割をこなす。
『テペリア=エグザルホス=ノウン』
上級天使の一人。
苛烈な圧政で知られるテペリア総督府領の総督。
以前は女王陛下に直接仕えていたが、犠牲を甘んじ、結果を先行させる彼女のやり方に女王陛下は痛く関心し、土地を与えた。
それ以来、テペリアは総督として頭角を表す。
だが、権力に固執するあまり、数々の同胞を失脚に追いやっており、周囲の評価は芳しくない。
それを彼女は知ってか知らずか、特定の人物を手元に置きたがらない。
『知人間派』という派閥に属し、積極的に人間族の文化や、産業を取り入れる傾向にある。
だが、人間そのものにはそれほど興味は無いらしい。
『総督』
上級天使の官職の一つ。
女王陛下から土地を封ぜられた上級天使に名付けられる称号。
世界中に天使族は拡散しており、『総督府領』と呼ばれる行政組織は、約2000ほどある。
総督府領では、警察、軍隊、徴税、司法など大幅な権力を与えられる。
そのために、その領地がどのように運営されるかはその総督の采配に係る所が大きい。
そして、総督府領は女王陛下に対して、貢納と労働力の提供(主に人間奴隷)や、一年に一回の総督会議に出席する義務を負う。
『テペリア総督府領』
テペリアが運営する2000ある総督府領の一つ。
アクロポリスと呼ばれる天使族居住区を中心に、A~D地区まである人間族の居住区、そして拡散するように伸びる農地から成る。
A~D地区の境には関所が設置されており、許可された者ではないと通過することは出来ない。
農地も同上。
気候は比較的温暖だが、降水量は少ない。
そのために、農地では主に小麦の収穫を主としている。
また、テペリア総督が就任する前のこの土地は工業都市が建設されており、人間居住区の至る所に破壊された廃工場を観察する事が出来る。
『A・C地区』
街の雰囲気は、B地区とかなり似ている。
バラックで組み上げられた雑然とした町並みが広がっていた。
だが、つい最近、ゲリラによる武装蜂起が発生したばかりで、天使族による報復攻撃の結果、街は壊滅状態にある。
『B地区』
A・C地区の武装蜂起で、命からがら逃げ延びたゲリラや難民の多くがここに集まる。
そのような人間たちをヤマトがまとめ上げ、ひっそりとゲリラ組織を再建している。
B地区に限らず、テペリア総督府領の人間の多くは、天使族が運営する大規模農地で働くか、軽工業または、土木工事に従事する。
サービス業は皆無に等しく、一次産業と、二次産業が大きなウエイトを占める。
『人間奴隷』
人間居住区で、運悪くゴロツキに誘拐されたり、仕事を失い路頭に迷っている人間の行き着く先。
天使族のマーケットでは奴隷を持つことが、ステータスとして見られており、組織(農地など)保有は元より、個人所有も頻繁に行われている。
正直、人間からしてみると奴隷になることはリスクとリターンの二面性を持っており、所有者である天使族によってその扱いが大きく変わる。
『D地区』
A~C地区と比べると、町並みは少し小奇麗で、住民の所得は比較的高い。
ここには、ヤマトたちも所属している『人類革命臨時政府』と呼ばれるゲリラ組織が多く浸透しており、最も反天使族の傾向が強い。
『人類革命臨時政府』
いわゆるゲリラ。『人類』を名乗ってはいるが、同じような組織がテペリア総督領以外にもあるので、注意が必要。
それらの組織とは、可能な限り相互連携を行っており、武器や医療品などの交換が細々と行われている。
筆頭は『頭領』と呼ばれる『マサムネ』と言う初老の男性。
主に、D地区を牙城に活動してはいるが、革命の拡散にはかなり積極的である。
だが、幹部の老齢化と組織の硬直化、それに伴う思考の保守化が深刻化しており、D地区では直近3年で軍事作戦を行っていない。
そのために、土着(D地区)の相互扶助組織に成り下がっている。
D地区の所得が他と比べて高いのは、積極的にゲリラの資金を住民に分配しているから。
他の区で武装蜂起を起こしているのも、主に組織の下っ端や、中堅が主導している現状がある。
『ゲリラ(B地区)』
正式名称は、『人類革命臨時政府特別B区方面軍』。
ヤマトがマサムネから信任を頂き、B地区で新たに立ち上げた武装集団。
構成員は、A・C地区の生き残りが多数を占め、比較的練度が高い。
その他、B地区の住民の中でも積極的にゲリラを集い、人員確保に努めている。
所属している人数は1000人ほど。
ジロウや、D地区から多額の援助を与えられ、当面の予算には不安は無い。
母体であるD地区とは違い、相互扶助的な性質は持たず、あくまでも武力による天使族の打倒を目的としている。
『シィネルガシア=ノウン』
上級天使の一人。
テペリア総督の補佐を担当する副総督。
テペリアと同じく、『知人間派』に属し、人間に対して融和的である。
そのために、不要な殺生は出来るだけ避け、奴隷を買うこともない。
人間と天使族の共存が理想だとは常々考えているが、女王陛下やテペリア総督の命令には逆らえず、悶々とした日々を過ごす。
実務能力に優れ、部下にも穏やかに接するために、部下や他のネームドからの評価は高い。
それゆえ、数年前にシィネルガシアを総督として土地を与える計画が浮上したが、テペリアの妨害や、女王陛下との価値観の乖離が見られたために留保になっている。
『ヤマト』
テセラ、ナデシコと同じ孤児院で育つ。
マサムネが主導するゲリラに所属し、『人間革命臨時政府特別…(以下略)』のリーダーを務める。
合理主義者で、目的のためならば犠牲は致し方無しという考えを持ち、この範囲ではテペリアと話が合うかもしれない。
また、独善的、啓蒙的思想を持ち、今の人類の体たらくを、『堕落』と評するなど、自己評価…自民族評価はかなり低い。
その一方で、人情には厚く、部下の誕生日などは律儀に祝うなど親近感を持たせる性格。
『ナデシコ』
テセラ、ヤマトと同じく孤児院で育つ。
性格は快活で、朗らか。
特段、周囲のような強い思想は持ち合わせてはいないが、他者にそっと寄り添い、優しく背中を押す。
ヤマト、テセラはナデシコに大きなウエイトで感謝の念を携えており、頭が上がらない。
『ジロウ』
身長が190cm以上ある大男。
ゲリラに所属する前は、とある有名な僧侶の弟子であり、仏教徒であった。
その名残りか髪の毛は無く、スキンヘッドがトレードマーク。
5年前の戦闘で、舌の数割が消し飛び、滑舌は悪い。その上、薬物にも手を染めているために聞き手はほとんどカタコトのように聞こえている。
テセラがゲリラを辞めて以降、それを追うようにジロウもゲリラを辞め、行方不明になった彼女との唯一パイプを持っていた。
今の生業は、主に貿易商であり、A~D地区を練り歩き、クスリ、奴隷、武器弾薬を売りつけている。
ゲリラには既に所属していないが、主に資金と物資の面で支えている。
また、一部の天使族ともパイプを持っており、奢侈品を中心に取引が行われている。
このことについて、ゲリラ内部で問題になったこともあったが、ゲリラでの彼の影響力の強さや、『戦略物資』は売っていないというジロウの弁明によりなあなあになった。
貿易商として彼は一定のポリシーを持っているようだ。
実は4人(ナデシコ、ヤマト、テセラ、ジロウ)の中で最年少。