四三話 『反撃!(2/4)』
建物が、生き物が、全てが燃えている
ゲリラ 「死ねぇ!」
天使族 「…おっと」
至近距離から繰り出された攻撃を難なく避ける
そして、返す刀で反撃を行う
「エクリクシー(爆発)!」
天使族がそう呟くと、攻撃を仕掛けたゲリラの身体が膨張する
そして、内蔵や血液を辺りに撒き散らして爆散した
「ふう…人間風情が」
そう独りごち、意識を外に向けると、胸の辺りに違和感を感じる
「なん…だ?」
なんともなしに、視線を腹部に向けてみると、背後から刃物が突き刺さっていた
そして耳元で…
ゲリラ 「何が人間風情だって…?」
そんな屈辱的な文言を聞きながら、彼女は絶命した
………
……
…
エピスミア 「被害状況はどうなっている?」
集積所の中でも、河から離れ、比較的奥まった場所に天使族は陣地を構築した
しかし、ゲリラの浸透速度は予想以上に早く、近いうちにここも放棄する羽目になるかもしれない
伝令兵 「同胞の内、約半数が戦死または負傷で、20人ほどが行動不能になっています」
「また、少なくない数の人間奴隷もゲリラに合流しています」
「如何せん、同胞の人数が少なく、奴隷の脱走を抑えられないのです」
エピスミア 「フフフ…そうか…」
エピスミアの鋭い眼光が、部下を捉える
伝令兵 「…っ!?」
そして、剣を抜こうとするが…すんでの所でその衝動を抑えた
この限られた状況でただでさえ少ない同胞を減らす訳にはいかないと理性でそれを抑えた
彼女の趣味嗜好はさておき、緊急時には公私混同をしないのが、彼女が優秀たる所以であった
エピスミア 「フゥー…すまない」
「それで、援軍の要請はどうなっている」
伝令兵 「えぇそれが…治安維持部隊は『テペリア総督の命令でないと動けない』と一点張りで…」
エピスミア 「…テペリアの狗め」
「じゃあ、テペリアに直接直訴しろ!」
目の前の机に拳を叩きつける
簡易な木材で作られたそれは、彼女の臂力で一撃で粉々になった
伝令兵 「それが…テペリア総督は現在、就寝中でして、『何者も私の眠りを妨げてはならぬ』と門前払いを受けたそうで…」
エピスミア 「はぁぁぁぁぁ…」
天を仰ぐ
もはや彼女には怒りを通り越して、呆れの感情が渦巻いていた
「あのアマ…阿片の取りすぎで頭に穴が空いてやがる」
テペリアの絶大な権力は、平時であれば各種改革を断行出来るが所以に、それなりに評価出来た
だが、このような緊急時ないし、テペリアの状態次第では行政に絶大な悪影響を及ぼしてしまう
そのため、ある程度権力を分譲するのが理想的ではあったが、彼女はなぜか実務能力に長けているシィネルガシア=ノウンから大幅に権力を剥奪してしまった
せめて、シィネルガシアに治安維持部隊の指揮権が残っているならば、このような事態にはならなかったものを…と意味の無い思考をする
エピスミア 「そうだ。シィネルガシア…副総督閣下はなんとおっしゃっている?」
伝令兵 「『私含め、義勇兵を集い、派遣する。どのくらい戦力を集められるか分からないが、それまで持ちこたえてくれ』…と伝言を預かっています」
エピスミア 「そうか…良かった…」
図らずも口角が上がる
文字通り、暴風雨の中に差し込む一縷の月影のようだ
それは、今の天候に似通ったものがあった
「副総督閣下が来るまで、この場所を持ちこたえてみせよう。絶対にここを落としてはならない!」
そう言って、彼女は改めて剣を抜く
しかし、その殺意はもはや同胞ではなく、ゲリラ…人間に向けられていた
………
……
…
B地区集積所。橋頭堡
ヤマト 「被害状況はどうなっている?」
伝令兵 「概ね、許容値の範囲に収まっています」
「死傷者、行方不明者含めて、約40%、200人が戦闘不能です」
「ですが、集積所の6~7割はこちらの占領下で、相手も戦線縮小を余儀なくされてるようです」
「完全占領も時間の問題かと」
ヤマト 「そうか…」
俺は、手元にある集積所の地図から与えられた情報を元にメモをしていく
時より雨粒が当たって、鬱陶しい
…ゲリラの天使族に対する戦闘ドクトリンは、非常に単純明快である
『肉壁を作って、背後から刺す』
これ尽きる
単純なフィジカルでは天使族には敵わない
そのため天使族を相手にする時は、極端な話、正面に100人配置し、背後に気を向けられない隙に、101人目で殺す
そして、そのドクトリンを成功させるためには、優れた指揮官でも、有能な個体ではなく、『数』がそれを決定すると言えるだろう
それほどまでに、ゲリラの戦闘というのは泥臭く、狡猾だった
「それで、肝心の金銀財宝については見つかったか?」
伝令兵 「いえそれが…開放した同胞の情報によると、敵の陣地に集積されているらしく…」
ヤマト 「流石に、そんな甘くはないか…」
しかし、疑問に残る点があった
正直、我々の優先度は集積所の完全占領より、将来の資金源になる金銀財宝の方が高い
しかし、奴らは我々が欲しているものを持っているのにも関わらず、逃げ帰ろうとはしない
つまり、彼らの優先順位は、我々とは真逆なのだ
このような認識の齟齬によって、彼らは我々との戦闘に『付き合ってあげている』と解釈も出来る
「ふーむ…」
伝令兵 「…どうされました?」
ヤマト 「そうだな…戦線が押し上がったことだし、俺も戦闘に参加しよう。指揮をするのも飽きた」
伝令兵 「それは…危険ですよ!」
ヤマト 「戦地から遠ければ遠いほどミスリードを起こす可能性がある」
「それに…少し確かめたいことも増えた」




