三四話 『会議』
B地区某地下壕
この地下壕のほとんどの通路は、人が辛うじて通れるほどの土を削り、配線を通して電球を付けただけの実に情緒がない環境だった
機能ごとに区分けされた部屋も概ねそのような感じで、好んでここに居住する者は皆無であった
例えるならば…坑道がそれに当てはまるだろう
しかし、一つだけ例外があった
B地区のリーダー…さらに具体的に言うのならば、俺ことヤマト。そして、そこに併設してある会議室は、全面がコンクリート造りで、『地下室』としての体を保っているように見える
会議室の壁には、青と白の配色でオリーブと地球がデザインされている旗、そして赤と白のシンプルな意匠である国旗、最後にそれを合わせるかのようなゲリラの旗が飾られてあった
この会議室を使うのは、特に重要な事案の時だけ
我々が『副総督』と接触して以降、事態は急展開を迎えていた
端的に言うのならば、『守る』時期は終わり、積極攻勢に出る時なのだ
それは、以前のA地区とC地区での武装蜂起の焼き増しに他ならない
ヤマト 「…これから会議を始める」
俺の掛け声と共に全員が起立し、こちらを向いてくる
その風貌には、ナデシコ、ジロウと言った見知った仲もいたし、B地区内の様々な規模のゲリラ基地から派遣された隊長も、全員が集まっている
誰もが硬い双眸をしており、ゲリラとしての意地、人間としての尊厳を伺わせる
…いや、ジロウは例外か
起立もせず、尊大な態度でこちらを一瞥するのみ
周囲の人間も彼を煙たがっているようだ
だが、彼は協力者であっても、もはやゲリラではない
それにも関わらず、資金面や人員確保と言った後方支援において、彼の実績は計り知れない
だから、賞賛することはあっても非難することなど決して出来ないのだ
「楽にしろ」
そう言うと各々座り始めた
さぁ…これからどうするか
………
……
…
ヤマト 「既に噂になっているかもしれないが、我々はシィネルガシア副総督に接触した」
「そして、殺すまでは行かなくとも、相手の肩部を負傷させ、撃退することに成功した」
『『おぉ…』』
歓喜にも似た感嘆の声
それもそうだろう。B地区における総督と副総督は、まさに不倶戴天の敵であった
彼女らによって、我々の同胞は何人殺されたことか…
隊長A 「撃退した後に、シィネルガシアとかいう奴はどこにいったんスか」
ヤマト 「それは、目下調査中だ」
「だが調べによると、どうやら人の手によってどこかに引きずられた形跡が残っていたようだ」
「これだけでは情報不足で何も言えないが、少なくともシィネルガシアが死ねば、B地区の人間に対する締め付けは数時とは言え、かなり減る」
「そうでなくとも、無敵の副総督閣下が人間に撃退されたという事実は、天使族のコミュニティを動揺させるだろう」
…周囲の同胞たちの反応もかなり良いものだ
まるで、植民地支配をされた被支配層がナショナリズムを高揚させるが如く、シィネルガシアの不幸を喜んでいる
これならば…
「それで…これはあくまでも俺の提案なんだが…」
少し言葉を選ぶのに時間を要す
この提案が採択されてしまったら最後、我々は多大な犠牲を払うことになるだろう
ジロウ 「早くイエ…シんドいぞ」
億劫そうに、発言を急かす
ヤマト 「…手厳しいな。ジロウは」
「では、端的に言おう」
一度、息を大きく吸う
「武装蜂起だ」




