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三一話 『敵意』

ナナシ 「…はぁはぁはぁ」

胸の鼓動が高まる

俺は、左胸の辺りを掌でギュッと握り、心を落ち着かせる

俺は路傍の石ころ

誰にも見向きもされず、ただそこにある

だが、誰かが足を触れた時、初めてそれの鬱陶しさに気づくだろう

俺はそんな存在

『奴ら』を完全に滅ぼすなんて、そんな非現実的な事は考えていない

しかし、思い通りに行かないということは身を持って経験させてやろう

    「フフフッ…」

瓦礫に身を隠し、指令を待つ

それこそ路傍の石のようにじっとそこから動かない

ここはB地区のとある倒壊した廃ビル

だが、地上からそれなりに距離があり、概ね全域を確認出来た

さぁ…早く、俺に仕事を与えろ

(ガコン)

自分の身長以上もある銃を台座に起き、スコープから下を望む


………

……


B地区某所

ヤマト 「…」

俺は茂みに身を隠し、あの通信を送った主を確かめる

だが、待ち合わせ場所にはまだ、誰も居ない

予定時刻より既に30分経過していた

…これはやはりいたずらだったか

踵を返し、その場を去ろうとする

しかし、その瞬間…

上空から低く、静かな音を靡かせ、降りてくる一つの影

(来た…っ!)

俺は、不思議な高揚感と、恐怖心に身を包まれながら茂みから静かに出る


………

……


待ち合わせ場所はたしかここだったか…

シィネ 「よっと…」

私は、周囲に音がバレないよう、静かに地面に足を着ける

諸用で30分も遅れてしまった…

ゲリラの人間も愛想を尽かして帰ってしまっただろうか

そんな律儀なことを考えながら、周囲を見渡す

周囲には誰の気配もない

    「まあ、仕方ないか」

あんな杜撰な通信文に引っかかるゲリラなどとっくに死んでいるだろう

賢明なゲリラならば、黙殺を決め込み、足跡すら残さないはずだ

    「ん…?」

奥でガサガサと音が鳴っている

目をそちらに向けてみると、身なりの整った若い男

一見丸腰だが、服のあちこちにある不自然な膨らみは多くの武器が隠し持っているのを伺わせる

…ゲリラだ!

若い男 「お前が、ここに呼びつけた奴か?」

男は、私の姿に臆せずそう発する

果たしてコイツは無策のバカなのか…それとも、何か妙案があるのか…

シィネ 「いかにも」

    「ゲリラ如きに名乗るのは、少々気が引けるが…」

    「私は、テペリア総督の補佐をしている、シィネルガシア・ノウン副総督だ。覚えておけ」

そう言って、首に掛けている銀の紋章を見せつける

若い男 「…ほう」

この紋章を見た途端目の色を変える

それもそうだろう。わざわざ副総督なんて地位の高い者がゲリラなんかを呼びつけるなんて異例中の異例であった

    「お前は…シィネルガシアは、こちらの中でもかなり有名な人物だ」

シィネ 「それは嬉しいね」

若い男 「お前のお陰で多くの同胞が死んだ」

    「無実の罪で投獄された人間も居る…」

シィネ 「そうか」

    「済まないがその『同胞』とやらは、我々に対して敵対的な行動取ったためにこちらとしては仕方なく反撃したに過ぎない」

    「逆に、非合法な手段で我々を攻撃しているのはお前らの方ではないか?」

若い男 「…」

こちらを呪い殺すのではないかと錯覚するほどの眼力

一見、大人しそうに振る舞ってはいるが完全に敵意をこちらに向けていた

    「…まあいい」

    「対話など端から期待していなかった」

    「それで…俺達に何の用だ」

    「まさか、本当に俺達に救援物資をくれるのか?」

シィネ 「まさか」

    「…私がお前らに要求することただ一つだけだ」

    「全員投降しろ」

この男に負けないほどの眼力で見つめ返す

すると、男は堪えきれない様子で突然笑い始める

若い男 「ははは…っ!ははっ!」

シィネ 「…?何が面白い」

若い男 「こちらからの対話は否定するのにも関わらず、お前の方からの要求は通ると思っているのが滑稽でな」

    「つい笑ってしまった」

シィネ 「ふふ…別に2つ返事で要求が通るとは思ってないさ」

    「だが、覚えておけ。お前らと私達は端から対等ではない」

    「私達が圧倒的に格上だと言うことを忘れるな」

若い男 「そんな自信有りげなことを言っても良いのか?」

    「お前が場所を指定してきた以上、俺達が何か罠を仕掛けてくるかもしれないぞ」

シィネ 「ふん、だからどうしたと言うのだ」

    「私がわざわざお前らの土俵で戦ってあげようと言っているのだ。感謝してほしいものだな」

若い男 「お前…!」

最大限の侮辱

簡単な挑発だが、互いに気持ちが高ぶっている今では効果があった

シィネ 「それと、草むらに隠れているゲリラが複数人いるな?」

    「私の敵感知魔法には、隠密も無力だ。大人しく出てきた方が良い」

若い男 「ちっ…!バレていたか」

男が掛け声をすると、周囲の草むらから私の身長の2倍もあるくらいのガタイの良い男たちがのそのそと出てくる

そのどれもが鋭い相貌をしており、歴戦の猛者たちと伺わせる

数は全部で9。正面の男と合わせて、10人の武装した人間に私は囲まれていた

シィネ 「これがお前が仕掛けていた罠か?杜撰だな」

周囲を見渡しながらそう言う

    「私との会話を長引かせ、背後から討とうという魂胆だろう」

若い男 「…それはどうかな」

シィネ 「虚勢が…」

    「5秒だな」

若い男 「は?」

シィネ 「お前ら1人につき、私は5秒で十分だ」

若い男 「本当に我々の事を舐めきっているようだな」

    「だが、一つ言っておく」

    「人間は、お前らが思っているより弱くないぞ」

そう言って、私にピストルを向ける

周囲の男達も、それに合わせて銃口をこちらに合わせてくる

シィネ 「お前らも死に急ぐか…」

腰から剣を抜く

まさに一触即発だった

若い男 「(…やれ)」

シィネ 「…?」

忍び声で、男が何かを発する

その瞬間、奥にある廃ビルの一部が一瞬キラリと光った

そして、ドォォンという音と共に、とてつもない速度で何かが飛んでくる

その物体は明らかに私に向かっており…

   「…!!」

   「『アダマス=アミーナ(強防御)』!!」

掌を前に突き出し、防御魔法を展開する

魔法の膜と、飛んできた『何か』接触する瞬間、激しい火花を散らした

そして、その衝撃からか激しい砂煙が舞う

その間に、この『何か』を目視で確認すると…

(やはり、弾丸か)

幾度となく私に向けられてきた無機的な鉄の塊

たが、その程度の攻撃ならば、この膜を貫くことは出来ない!

(ガリガリガリガリ…!)

しかし、何かがおかしい

弾丸の勢いは止まることなく、むしろ回転力を増し、膜を削るように進んでいる

私が受けた如何なる弾丸だろうと、こんな威力は出なかった

ちらりと発射されたと思われる地点を見る

既にガラスが割れた窓

そこに、小柄な男は私を見下すように立っていた

そして、その横には彼の身長以上ある大きな銃

    「…っ!」

そうか…!

これはただのスナイパーライフルではない

    「対戦車ライフル…!」

鉄をも容易に破壊する、ただ一点を貫通するために作られた暴力的な武器

兵器としては陳腐化し、人間族の間では既に流通量は少なかったと聞く

こんな骨董品のような武器を使ってくるなんて予想外だ…!

(バキィィィィン!!)

とうとう膜が割れ、妨げを失った弾丸は私に向かって飛んでくる

   「畜生!」

体を捻り、避けようとする

   「ぐぁぁぁぁぁ!」

だが、完全に軌道から逸れることは出来ず、私の鎖骨を砕きながら、右肩をかすめる

ブシャァという音ともに、スプリンクラーの如く血が体から流れた

若い男 「今だ!やれ!」

私を囲った人間共は、これを機に銃弾を差し向けようとする

シィネ 「さ…させるか!」

    「あ、『アーモス(砂煙)』!」

左手で傷口を抑えながら、撹乱魔法を唱える

視界が遮られたゲリラたちは明後日の方向にに弾丸を撃つ

私はその隙に空を飛んで逃げ出した

    「く…そ…」

だが、飛行は不安定でどこまで持つか分からない

果たしてアクロポリスまで到達出来るだろうか…

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