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三十話 『通信』

前回までのあらすじ

『ゲリラくずれ』として、テペリア総督の領地に、ひっそりと暮らすテセラ

そんな彼女に、次々と不幸が襲った

友人の死、旧友との接触、そして…家族の意味

だが、彼女がいくらそれに思い悩み、立ち止まろうとも情勢は非情になことに、刻一刻と変化するのだった


B地区旧地下壕

天使族との戦争中に、使われていたと思われる地下壕

湿気は溜まり、空気は淀んで、衛生上は必ずしも健全とは言えなかったが、天使族に暴かれる可能性が低いというだけでそこには戦略的価値があった

現在、そこはゲリラの秘密基地として使われており、D地区ーゲリラの最後の牙城から司令を受ける取るという通信基地としての役割も備えていた

ヤマト 「ふう…」

ため息をつく

だが、目の前にある書類群に対して手を休めることなく効率的に作業を進めている

それもそのはず、俺はこのB地区における最高司令官としての役割を持っていた

D地区の『頭領』、マサムネから大幅な権力委譲を受けために、かなりの自由がある

だが、自由には必ず、責任がついて回る

俺が何か行動を起こすたびに大量の資源と、カネが動くのだ

そのため、煩雑な書類整理や、決裁なども己の力でやらなければならなかった

ナデシコ 「リーダー。大丈夫?」

そんな中、気を利かせたナデシコが飲み物を持ってくる

     「ずっとやってると疲れるでしょ?」

     「休憩しないの?」 

ヤマト 「あ、あぁすまない。じゃあ、少し休憩しようか」

筆を一時的に折り、休むこととした

ナデシコは、俺の向かいに椅子を移動させ、そこに腰を落とす

その視線は、机の膨大な書類に向いていた

ナデシコ 「まだ終わらないなんて、大変だね」

ヤマト 「仕方ない、誰かがやらなければならない仕事だ」

    「こんなことにゲリラの人間を使うのはどうも気が進まないしな」

    「彼らには、命のやり取りをしてもらっているのだ。これ以上の負担はかけられまい」

ナデシコ 「ほーんと、小さい頃からマジメだね」

ヤマト 「そうかな」

ズズズ…

ナデシコが淹れた茶を啜る

温かく、絶妙な苦味は疲れた脳に行き渡るような感覚を覚えた

    「おっと…」

そこで、茶の一部が顎に滴り、首を伝って胴体部に流れていく

    「痛っ…」

ある一定の場所に到達すると、鈍痛が走った

ナデシコ 「大丈夫?」

心配そうな表情だ

ヤマト 「問題ない…」

そう言いながら、服越しから傷口をそっとなぞる

ナデシコ 「リーダー…まだ斬られた傷が痛いんだね…」

     「なんかテセラちゃんと会った時は平気そうだったから治ったかと思ったちゃった」

ヤマト 「テセラにも余計な心配はかけられまい」

    「ゲリラのリーダーが敵に斬られて、傷だらけなんて格好がつかないだろう?」

ナデシコ 「ふふ…ジロウくんも同じ事言ってた」

     「なんで男共はこう、女の子に見栄を張りたがるのかな」

ヤマト 「仕方ないさ。それが悲しき男の性というものだ」

通信兵 「ご談笑の所、申し訳ございません。今、宜しいですか?」

取り留めのない世間話をしていると、ゲリラの一人が部屋に入ってくる

ヤマト 「どうした?」

通信兵 「はい。それが…差出人不明の、我々に向けた通信を傍受しまして」

    「どう対応すべきか、判断をお願いしに参りました」

ヤマト 「なるほど、直ぐに通信室へ行く」

    「ナデシコ…またお茶の腕を上げたな、美味かったぞ」

そう言って、俺は執務室を出る

後ろを確認すると、ナデシコはニコニコしながら手を振っていた


………

……


通信兵 「これが全文なのですが…」

ヤマト 「なるほど…」

文章を確認する

長々と文が羅列されていたが…要約するならば、B地区のゲリラに対して救援物資を送る

直接顔を伺いたいので、今日の深夜、B地区某所で待つ。というものだった

…明らかに怪しい

    「これは、我々の暗号が使われていたのか?」

通信兵 「ええ、一応。旧式のものですが」

ヤマト 「ふむ…」

…仮定の話になるが、これは天使族の作為ではないだろうか?

天使族とてバカではない

通信兵の重要度を見抜き、捕獲して、我々の暗号を解読させることなど容易だろう

そうでなくとも、『救援物資』の具体的内容が載っていないために、わざわざ深夜に出向いて、リスクを背負う真似はしたくなかった

だが…

   「…かなり情報が不正確だが、行く価値はあるな」

通信兵 「え!?本気ですか?」

ヤマト 「あぁ」

俺の仮説が正しければ相手は恐らく…奴であろう

そして、我々には奴に勝てる切り札が手元にあった

    「おい、ナナシ。隠れてないで出てきたらどうだ?」

ナナシ 「…」

物陰からそろりそろりと出てくる

『隻腕の死神』。彼はそう呼ばれていた

背中には、自分の身長の1.5倍ほどある鉄の筒を背負っている

ヤマト 「ナナシ、お前に仕事だ」

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