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二八話『過去(終編2/3)』

女 「はわわわわ…」

男 「うぉっ…!」

思索に耽っていると、砂煙を出しながら、俺達のところに誰かが転がり込んでくる

そして、俺達と背中合わせになるような形でぴったりとくっついて来た

ゲリラの基本である

そして、背中越しから言葉を発してくる

女 「ハロー!テセラちゃんとジロウくん。元気してる?」

男 「よくここまで生きていたな」

この声は…

テセラ 「あぁ…、ヤマトとナデシコか。まぁ、元気ではないと言っておく」

そう、驚くべきことにゲリラに所属したのは、俺だけではない

ヤマトとナデシコもその身をゲリラに捧げている

正直、俺は彼らがこんな野蛮な集団に所属するなんて思いもしなかったが、心情の変化があったのだろうか?

とにかく、俺達3人は同期として共に行動することが多かった 

ナデシコ 「あー!また、ジロウくんをこき使ってるでしょ?」

     「ジロウくんが可哀想だよ」

テセラ 「違う、俺は『教育的指導』をしているだけだ」

    「別に、こき使ってなんていない」

ヤマト 「はぁ…ここまで来ると嘘も方便か…」

テセラ 「…ふん」

ジロウ 「あの…僕は別にこき使われてるなんて思ってませんよ?」

ナデシコ 「あーんもう!ジロウくんは優しいなぁ!」

     「テセラちゃんには勿体無いよ!」

テセラ 「おい、そんな下らん会話より、この戦場をどうにかしてくれ」

旗色が悪くなってきたので、無理やり話題を変える

まぁ…彼らと会話するのは全然苦痛ではない

むしろ、好ましいくらいだ

ヤマト 「ふむ…そうだな」

    「まず、確認したところ、敵は2しかいない」

ジロウ 「え!?たったの2ですか?」

    「僕達は50くらい投入しているのに!」

ヤマト 「仕方ないが…『奴ら』と俺達の実力の違いが浮き彫りになっている良い例だ」 

    「それに、彼らは『守る』方だから、かなり有利だろう」

    「良く言うだろう?『攻め側は守り側の3倍の兵力を揃えないといけない』と」

テセラ 「んじゃあ、どうすんだよ」

    「このまま犬死するのを、指加えて待ってるのか?」

ヤマト 「まあ落ち着けテセラ」

    「敵が2人しかいないと言うことは、1人でも無力化すればかなり有利になるはずだ」

    「そして、無力化程度なら、俺達がどうにか出来るかもしれない」

    「というわけで新兵器だ!」

(デデーン)

テセラ 「は?」

ヤマトが取り出したのは、どこからどう見ても水鉄砲だった。端的に言えばおもちゃだ

    「おい、ふざけてるのか」

ヤマト 「全くふざけてない。この中に入っている液体は工業用の瞬間接着剤だ」

    「これを『奴ら』の羽に当てれば、たちまち動きが鈍くなる」

    「まあ、欠点として射程が極端に短いから、かなりのリスクを負うことになるがな」


………

……


『フローガ(火炎)!』

『ブロー(雷撃)!』

『エクリクシー(爆発)!』

私はため息をつく

ここは、屠殺場か何かだろうか?

人間どもが、無為な突撃を仕掛けてくるのをただ魔法で薙ぎ払うだけの簡単な作業

我々とお前らでは絶対に超えられない壁がある

いい加減それが分かってきそうではあるのに、人間は抵抗を辞めない

もう少し、骨のある奴と戦いたいものだ

天使族A 「うおっ!」

その刹那、予測していなかった角度から弾丸が飛んでくる

勿論、この程度の速度の弾丸なら容易に避けられるが

「ふふ…危なかったではないか」

私に武器を向けるなんて、どんなに命知らずな奴なんだろうか…

顔を拝んやろう

そちらに目を向けると、覆面に顔を包んだ、髪の長い女が立っている

テセラ 「一騎打ちを申し込む」

そして、女はそう言い放った

天使族A 「…ほう、一騎打ちか!」

    「お前らは蟻のように集団でしか行動しないグズだと思っていたが」

    「そうではない人間もいたとは!」

    「良いだろう…その勇気に免じて一騎打ちを受け入れる」

ちらっと周囲を見ると、もう一人の天使族がヘイトを多く買っていた

…苦戦している様子はない

(数分ならば、大丈夫だろう)

テセラ 「…っ」

女は、銃を捨ててナイフを取り出す

その構え方は…守りの構え!

なるほど、私から攻めて来いと!

天使族A 「うぉぉぉぉぉ!」

数コンマで女に近づき、斬撃を放つ

テセラ 「ぐわぁっ!」

女は辛うじて斬撃を受け止めたが、衝撃によって遠くへ吹き飛ばされる

天使族A 「…一騎打ちと言うから、さぞかし強いと思っていたのに、この程度か」

拍子抜けしてしまった

私はペタペタと女の方に近づく

(私が手を掛けるほどでも無い人間だった…残念だ…)

    「何か、言い残したことはあるか?」

地べたに倒れ込んで、動かないこの女にそう伝える

テセラ 「…」

しかし、想定外のことに彼女の目からは闘志が消えていなかった

まるで、次の手があるような…

    「今だ!やれ!」

天使族A 「!?」

私は本能的な恐怖を感じ、羽をはためかせようとする

しかし、どこからともなく出てきた数人のゲリラによって謎の液体がかけられる

(くっ…なんだ!?これは)

上手く羽が開かない

そして、その拘束はさらに強くなっていき、飛ぶこともままならない

これを見よがしに、ゲリラたちが銃弾をこちらによこしてくる

天使族A 「く…!『アミーナ(防御)』!」 

そう詠唱すると、ゲリラと私の間に透明な膜のようなものが展開される

そこに触れた弾丸は、そのまま貫通することはなく、明後日の方向に弾かれていった

ヤマト 「ちっ…シールドを張られた」

    「全員逃げるぞ!」

そう、リーダーらしき男が伝えると、脱兎の如く逃げ出す

私が倒したはずの女も、元気に立ち上がり彼らについていった

(演技だったのか…)

私は得も言われない敗北感に、打ちひしがれた

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