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十六話 『説諭』

シィネ 「はぁ…」

私は目の前に居る上司にバレないように小さく息を漏らす

テペリア 「…」

誰が見ても、イライラしていそうな様子で机に指を叩いている

その近くには1枚の報告書

これが彼女の情緒を乱しているのは火を見るよりも明らかだった

テペリア 「…今日、何故お前が呼ばれたのか分かるか?」

シィネ 「いえ、不肖の私めにはどうも…」

テペリア 「…」

     「愚かな部下を持つというのも上司の役目、か…」

シィネ 「…」

(このアマ…)

心の中で舌打ちをする

テペリア総督はいつもそうだ

他者を見下し、保身に走り、自分のミスを部下のせいにする

私から言わせるとこのテペリア総督は子供のような人物だった

しかし、いかんせん身分と腕っ節が強力なために、女王陛下に見初められてこの地位に着いている

彼女に説教を食らう時ほど、封建制度の弊害を痛感する機会というのは滅多に無かった

シィネ 「愚かな私にも、もう少し分かりやすく説明していただけないでしょうか」

テペリア 「良いだろう」

     「昨日、お前の部下からとある報告が入った」

     「驚くべきことに、B地区で殲滅したと思われていたゲリラと接敵したらしいのだ」

     「これはどういうことだ?」

     「お前の不手際がこんな自体を招いてるのではないか?」

シィネ 「お、お言葉ですが総督」

    「この計画は総督が直々に進められていたものではありませんか」

    「私は、以前から何度も『時期尚早』と申していました」

    「恐らく検挙した人間族の中には、無実の者も紛れています」

テペリア 「そうだったかな?」

わざとらしく無知を演じる

     「しかしシィネルガシア。以前私に報告した時に、雷雨のために配置が遅れたと言っていたな?」

     「私の責任も多少はあるかもしれないが、お前の監督不届きがこんな致命的な自体を招いてしまったと、私はそう思うのだがな」

シィネ 「し、しかし!」

テペリア 「お前は何か勘違いしている」

     「私達は対等なパートナーなどではない」

     「上司と部下の関係だ」

     「ならば、上司の命令を忠実に遂行するのが部下の役目ではないだろうか?」

シィネ 「…」

奥歯を噛み殺す

自分の不甲斐なさ、上司の圧力に屈してしまった自分の情けなさを呪いたくなる

    「…その通りです」

テペリア 「そうだろう?」

     「では、お前がやるべきことは何だ?」

シィネ 「再度、B地区を捜索し、草の根を掘り返してまでも全てのゲリラを捕獲することです」

テペリア 「その通りだ」

     「この事が女王陛下に知られてしまったら我々の首が飛びかねない」

     「よって、私兵(治安維持局)を使うことは禁ずる」

     「お前一人で全てのゲリラを討伐しろ」

     「分かったな?」

シィネ 「…分かりました」


………

……


(クソクソクソッ!)

テペリア総督の執務室を出た途端、急に怒りが湧いてくる

(どれだけ人を振り回せば満足するのだ!)

頭の中で、今までの会話が反芻する

彼女の一挙手一投足が、私の心を冷やし、憤りが増幅してゆく

衛兵A 「お疲れ様です!」

衛兵B 「今日は大変でしたね…」

思考が纏まらないまま立ち尽くしていると、いつもの2人が人懐っこい笑みで近づいてくる

シィネ 「すまない。今日はほっといてくれ」

しかし、そんな好意も今日ばかりは無碍にしてしまう

彼女たちにこの憤りをぶつけてしまいそうなのだ…

衛兵A・B 「あっ…」

私は、彼女たちに背を向けて一目散に走り去る

後悔と、罪悪感が胸に湧き出ていく中、一つの思考にたどり着く

どんな手を使ってでもゲリラとやらを全て皆殺ししよう

そうすれば、全ては上手くいくのだ

そんな、私に似つかわしくない暴虐な思考

しかし今の私には甘美で、先鋭的な発想に他ならなかった

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