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十一話 『接敵(前編)』

夜。

いつもならば、人間が多少なりとも出歩いていたが、今日に限っては一人たりとも居なかった

普段から寂れているこの街は、人通りが失われるだけで、もはや放棄された廃村のような雰囲気である

天使族A 「…」

彼女は周囲を見渡す

副総督閣下からここら一帯の警備を任された彼女は、虫や動物の動きすらも注視し、警戒に努めていた

天使族A 「…ふぅ」

だが、朝から晩までずっと立ち尽くしていたために、疲れが顔から滲み出ている

彼女の頬に汗が滴る

その汗はやがて地面に落ちるが、昨晩の雨で水溜りが出来ており、その水と混ざるように波紋が発生していた

退屈で、静かな今日の業務にある唯一の変化である

天使族A 「…ん?」

彼女は目を凝らす

天使族の動体視力は人間と比べ物にならない

闇の中だろうと、1km先のアリの動きさえも観察できる超人的な能力であった

しかし、今回はアリではなく人間である

数は2

ここにしては身なりの整っている若い男

もう一人も、利発そうな若い女であった

天使族A 「我々も随分とバカにされたものだ」


………

……

… 


…5分前

ジロウ 「まタな…」

若い男 「すまない。恩に着る」

若い女 「まったねー!」

ジロウに見送られて、2人が外を出る

彼らはジロウから諸々の情報提供を受けていた

本当ならば、こんな危険な日に行動するべきでは無かったが、いかんせん時間が惜しかった

人類の存続のために1分1秒を争う現在では、天使族に会って死ぬリスクよりも、一刻も早く行動を進めることこそが重要、と彼らは思っていた

若い女 「それにしても、ジロウくんは変わって無かったね」

若い男 「ああ、元気そうでなりよりだ」

    「彼は腹の知れない男だが、未だに我々には協力的で良かった」

    「彼がいないと何も始まらない」

若い女 「そうだねー」

若い男 「…まあそれでも、情報提供はタダでは済まなかったがな」

    「それなりの対価を要求されてしまった」

若い女 「うーん。仕方ないよ」

    「ジロウくんはそういう人だし」

若い男 「…暫くはここで荒波を立てないように生活しつつ、仲間を集めるとしよう」

若い女 「そうだね。『リーダー』」

若い男 「とりあえずの課題は、資金繰りなんだが…」

天使族A 「おい、そこの人間」

若い男・女 「…!」

真正面に、突然『奴』が現れる

彼女は鞘に入った剣の柄を握っており、見るからに敵意を表していた

距離も1歩踏み込んだら、届くか届かないかの絶妙な間隔であり、見切りの間合いであった

若い男・女 「…」

下手なことを言ったら数秒後には死ぬ

そう彼らの理性が警鐘を鳴らしていた

いや、下手なことを言わなくてもここで切り捨てられるかも知れない

天使族A 「おい、何か言ったらどうだ」

せめて数分だけでも延命しようと言葉を選んで発する

若い男 「その…少し夜風を浴びたくて散歩をしていた」

    「決してゲリラなどではない」

天使族A 「…ゲリラは皆そう言う」

    「私たちが背中向けた途端、銃を向けてくる」

    「人間というのはそういう生き物なのだ」

眉に力を入れてこちらを睨んでくる

どうやら、返答がお気に召さなかったようだ

若い女 「このバケモノ!」

    「いきなり地球を侵略したのはアンタたちだろ?」

    「それまでは人間だって楽しくやってきたんだ!」

彼女はつい頭に血が上って負けじと言い返してしまう

もはや言っている最中に深く後悔したが遅かった

若い男 「こっ…こら…」

天使族A 「…」

    「ハァッ!!」

刹那の抜刀

若い男 「危ない!」

彼は、彼女を押し倒し自分が剣の間合いに入る

若い男 「ぐァァァァッ!!!!」

胴体に縦から一直線に入った切れ込み

鮮血が舞う

しかし、幸いなことに踏み込みが浅く、内蔵までは届かなった

彼は一命こそ取り留めたが、この天使族をBerserker(狂戦士)にしてしまったことは間違いなかった

若い女 「リーダー!」

後ろに倒れ込もうとした彼の体を抱きとめる

若い男 「早く…早く逃げろ…」

    「君だけでも助かるんだ…」

天使族A  「やはり、お前らゲリラだったか」

     「2人ともまとめて地獄に送るから安心しろ」

血を滴らせた剣を持って、こちらに迫ってくる

その姿は彼らには死神に見えたに違いない

天使族A 「死ね」

両手で剣を構え直し空高く掲げる

若い女 「っ…」

彼女は自分の背中を盾にして彼を守ろうとする

天使族A 「ハァァァァ!!!」

ガキンッ!    

だが、その剣は骨と肉に届くことはなく、同じ金属にぶつかる

    「なにっ!?」

防がれたと分かると瞬時に距離を取り、態勢を立て直す

天使族A 「私の一閃を防ぐとは…お前、何者だ!」

その言葉の先には、彼らを庇うような形で大男が刀を構えていた

ジロウ 「さらナる報酬を要求すル」

若い男 「ジロウ…」

若い女 「ジロウくん!」

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