16.
「えー?すっぴんの男装でケネス帝国に行くの?恥ずかしい!」
恥じらう中年男性を見るこっちが恥ずかしい。
「これは、商会長の指令だから絶対だ。世界の貿易がかかっている」
「え、世界?なんか響きがいいわね。世界が私の両肩にかかっているのね!俄然張り切っちゃう!」
はい。張り切って男装してください。
「あ、スッピンだからな」
数時間後、「どこのホストだよ?」って親父が完成した。
これはこれでどうかと思う。
この状態でケネス帝国に情報提供で行った。
皇帝はやはり、「ベッキーはどこ?」と探し出した。
「はい、私です」と親父が言った。
「あら、男前だと思ったらベッキーだったの?男装も素敵♡こっちでいつものように話しましょう!」
俺が付き添うように、2人の商会長から指示が出ている。
「あぁん、坊やは邪魔よ。ベッキーと二人がいいの!」
「2人の商会長からの指示ですので…」
流石に皇帝は黙った。
「今の流行はこちらのような―――」
親父が女言葉を使う事も禁止した。
皇帝はつまらなそうだ。
「なんかいつものベッキーじゃないしつまんなーい」
「男装しても親父は親父です。皇帝は移住した時にどんな親父でも受け入れる覚悟がないようですね。俺はその様子を見るためにここにいました。でもあなたは女装した親父でないと受け入れる覚悟がないように見受けられます。たまに会うからいいんでしょうね。おそらくそんな関係です」
「そんなことないもん!」
皇帝は頬を膨らませた。
「寝起きの親父はひげ面です。あなたはその顔の親父を受け入れられますか?」
「え?」
「寝起きはもちろんスッピンです」
「え?え?」
皇帝は混乱してきているみたいだな。
「わかったわよ。ベッキーとは今まで通りの関係でいいわよー」
帰宅後、俺は親父にこっぴどく怒られた。
「ひげ面とか酷いわ!スッピンなのは、そりゃあメイクのまま寝たらお肌に悪いもの」
ひげ面って最初に言いだしたのは『バード商会』の商会長だけどな。