14.
留学期間が終わり(親父から離れる期間が終わってしまった)俺とトロはアーバンクルク王国へと帰った。帰らざるを得なかった…。
帰ると、‘王子お帰りなさいパーティー’なるものが盛大に開かれるらしい。ハッキリ言って迷惑だ。不敬になるから言えない。きっとトロも思ってる。疲れているのにパーティーは嫌だ。と。
俺はカイスター侯爵家の次期当主としてパーティーに参加した。親父をこんなパーティーに参加させたくないのが本音。
トロは流石だな。着飾るとTHE王子って感じだ。王子なんだけど。
色んな貴族が挨拶に来てるんだか、他国の腹の内を知りたいんだか、ケネス帝国について知りたいんだか、蠅のようにたかってくる。蠅取り紙が欲しい。
さっさとパーティーがお開きにならないもんか?俺は帰ってゆっくり休みたい!
それなのに、あの入り口付近に見えるシルエット…。まさか…。親父…?
「ケネス帝国の事なら私にお聞き~!!」と高らかに宣言した。女装したカイスター侯爵。こういう場ではカミングアウトしてなかったはず。何故だ?
まさか、ケネス帝国の皇帝と話してるうちにこうなったのか?俺はハヤクカエリタイ。
壇上では流石の国王も目を見開いている。トロは親父の姿を二度見した。
「トロ…あれはカイスター侯爵で間違いないのか?」
「はい、カイスター侯爵本人に誓って間違いありません、国王」
なる会話がなされていた。
「ヴィックス~♡とーさん、置いてかれて寂しかったんだから!プンプン!」
「そんで追いかけてきたわけか…俺は早く帰りたかったんだが…」
「カイスター侯爵及び、その令息陛下がお呼びだ」
…流石に陛下もこの姿には度肝を抜かれただろうな。
「カイスターよ…お前…その姿は本気なのか?」
「本気です」
親父はやや低い声で答えた。
「令息としてはどう思ってるんだ?」
「本人の自由ですし、侯爵としての仕事をしてくれれば問題ないか。くらいですね」
「このことはトロは知っているのか?」
「そもそも父上の趣味が発覚したのが私の学園初等部での父兄参観でしたので、トロ王子は昔からご存じでしたよ」
「トロ、お前はずっと報告を上げなかったのか?」
「こればっかりは本人の意志ですし、報告すべきほどでもないと思いました。その見た目が侯爵としての能力に影響をしているならば報告をすべき案件でしょうけど、彼は侯爵として全く問題ない訳ですし…」
「陛下に申し上げます。私カイスター侯爵子息は疲れていて、一刻も早く床につきたく存じ上げます。おそらくトロ王子も私と同じ状態では?」
「あぁ、トロの帰宅が嬉しくてこのようなことを!トロとカイスター令息の帰宅を許可する」
「有難きお言葉。さぁ、さっさと帰ろう♪」
俺もトロも帰宅モードに入った。
俺がいなくてもケネス帝国のことは親父が知ってるし、なんなら親父の方が詳しいし、帰ろう。
トロはなんだか申し訳なさそうにしていたが、結局王宮の自室に下がった。