1-5 不和
余りにも暴力的な眩い閃光は、大広間を埋め尽くし。ミチカを飲みこみ、周囲にいる人々も飲みこんで、大広間を埋め尽くした。
暴力的に眩い閃光だが、光を直視しても目は潰れず。どこか優しく包み込むように、ただ視界全てを真っ白く塗り潰された光景が広がっている。
「何が起きたのよ!?」
起きた不可思議な事態にミチカは焦るが、何処か落ち着いていた。
彼女は才能皆無の所為で、良く魔術を失敗するが。失敗すると言っても、今までは何かしらの事故が起こる事とかは無く。只々、単純に失敗したり。想定してたのより効果がしょうもなかったと云う結果だけで。
今回の様な異変を起す様な事は決して無かった。
だが。
「これ、なんとかしないと」
現状起きてる壮大な出来事に焦りながらも。不思議とパニくらずに状況をミチカは冷静に判断して。術式の軌道を修正し、発動を停止させようと藻掻く。
起きている事態に対して、自身の想像を割り合わせることで、事象を制御して事態を収めようと図る。
しかし、その想像は真っ白な閃光で塗りつぶされて、彼女に何もさせてくれない。
それでも諦めずに必死に喰らいつくが。彼女の貧弱な魔術の腕前では。目の前の暴力的閃光に到底太刀打ち出来ず。只管、我武者羅に藻掻き続けるだけだった。
そして、真っ白な光景は徐々にミチカの意識を飲みこんでいく。
圧倒的な事象に、自身も飲みこまれそうになりながらも。それでも諦めずに喰らいつこうとするミチカだが。
それすら、焼け石に水。ただの意地の張り合いである。
苦痛の表情で抗うミチカであったが。不意に、果てしなく広がる白の光景の奥に。何かがあると彼女は感じた。
ソレが何かは分からないが。しかし、ソレが彼女に取って、喉から手が出る程に欲しいモノであると確信し。彼女は手を伸ばす。
事象を収めようとする意志と、奥底にあるナニカに手を伸ばそうとする意志。互いに矛盾しかねない意識の中で、彼女は現状に抗う。向こう側に感じるナニカに手を伸ばしながら。
向こう側にあるナニカは朧気だが、力強くミチカに存在を主張し、手を伸ばさせる。
彼女としては、一刻も早く暴力的に光溢れる現象を止めたいのだが。しかして、奥にあるだろうナニカを兎に角欲してしまう。
それさえあれば。と彼女が思ってしまう程に、鮮烈で魅惑があり。目が離せず、意識がどんどんと欲望に傾いていく。それがイケない事だと分かっていても尚。
術式を制御してても埒が明かないのもあって、止めようと思えば思うほどに。奥にあるナニカを求めてしまう。
手を伸ばしても伸ばしても届かない。なら、足を動かして。誘蛾灯に誘われる虫の様に、自然に体ごと奥へと向かっていく。
最早、そこには事態を収めようとする姿勢は無く。ナニカを求めて歩く状態になっていた。
光をかき分けて奥へと向かっていくその姿は、とても正気の目をしておらず。異常事態になってる中を一心にして彷徨い、一直線に歩いていく矛盾を起す。
(もう少し、もう少し)
もう少しで、欲するそのナニカに手が届く。彼女はそう確信と云う信じ込みをして、ナニカに触れようとして。
「あっ・・痛ぇぇぇぇえええええええええ!!!!」
唐突に真っ白い閃光の中で、悲痛に盛大に叫ぶ男の声が響いた。