1-2 前兆
高令学校へ入学してから早1年も経とうとしていた。
ミチカ:湯苑=阿島に取っての高校生活、四六時中四苦八苦する生活であった。
都立エルセル魔導高令学校に入学するのだって、なんとかギリギリと言う始末であったが。
そのギリギリさは。なんで合格、入学できたんだ?と思わせる実力で。
要するに彼女は、極端な落ちこぼれ。と言う話になる。
だから必然なのか、入学早々から自身の実力は周りに露呈し、級友から向けられる目線は。
大概ミチカを馬鹿にし、見下す目線であった。
今日も、浮かない気分で学校へと登校した彼女が教室に入ると。彼女より先に来ている生徒らがこちらに顔を向けて。早速、彼女を見下す目線を向ける。
それはまぁ、彼女に取って日常的な事なので。軽く無視して、そそくさと自分の机に座る。
溜息を尽いて、カバンを机に掛け、カバンから機械的な魔具を取り出し。中に閉じてある術式を始業ギリギリまで最終確認を行う。
彼女の居る、三方壁に囲まれ、一辺は窓で縁取られ、机が均等に配置されてる長方形の教室。
前方には黒板が付けられており。今日行われる予定や、昨日の事が流れている。
他に生徒らは、色々と含みを持って黒板に近づき見て調べたりするが。
そんな事してる余裕のない彼女は。黙々と、組んだ術式に不備が無いか点検する。
彼女に取って今回、一番重要な試験であるから。熱意は凄まじいものであり。
ここを無事に通らないと、良くて留年。普通に退学しなければならない事案なのである。
彼女の魔法実技能力は、変な感じで低い事が有名で。
知識面における学力は、特に問題ないのだが。何故か、実技に関してはからっきしで。幾度とやらかし
ている過去を持つ。
しかも、初等教育級までの魔法までならなんとか繰り出せるが。
中令教育課程の魔法になると、3回に一回は失敗する事が日常茶飯事で。
高令教育課程になると、不発ばかりで碌な事に成らず。10回に1回成功すれば良いと云う状況である。
故に、今回の試験はなんとしても成功しないといけないので。彼女は必死になって術式を構築して、ギリギリまで無事に動作発言できるかどうか、不備が有るのかどうかを確認する。
熱心に、一心不乱 に術式を見つめる彼女を、後ろから男子生徒が陽気に声を掛けて来る。
「よっ。また、そんな無駄な事してんのかよ。んな事しないで、お前は駄目なんだから」
肩を叩いて馬鹿にして通り過ぎるそこそこガタイが良い男子生徒。
他を二人を連れて、三人組で行動する。このクラスで、彼女を馬鹿にする筆頭格の生徒である。
そんな彼に、ミチカは顔を嫌な顔をするが。した所で意味無しと、静かに術式に目を向ける。
それを見て、何時も通りの彼女に、はぁと溜息を尽き歩き出し。
「まぁ良いさ。無駄に頑張って無駄だけど。精々頑張れよ」と意地悪い笑みを浮かべて立ち去った。
入学してから暫く経った時は、彼女の学力の低さで、虐められる事が多かったが。
彼女の他者の意を固くなに感じない行為に。周囲の苛めは激化すれど、直ぐに沈静化して、今では馬鹿にして来る程度になっていた。
そんなことの経緯すらも興味の無い彼女は、今日の試験をなんとか成功させようと。集中して、念入り念入りに術式を確認する。
熱心に取り組むが、始業の時間を知らせる音が鳴り、教室受けの教師がやってくる。
ミチカは眉を顰めて、確認していた術式を閉じて、魔具をカバンに仕舞い込んだ。