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俺は週2回程度とあるカフェに足を運び、コーヒーとマフィンを注文している。前は週に1回しか通っていなかったものの、レジ担当の松森さんという女性スタッフに一目惚れして、通う頻度を増やしたのだ。接客中の松森さんの笑顔に惹かれ、また会いたいなという気持ちになった。
松森さんがレジにいて客数が少ないときは雑談もしている。といっても、「今日はいい天気ですね」「今日は寒いですね」といった天気の話がメインにはなるけれど。松森さんがいないときはスタッフとの雑談はせず、いつも通り勉強か読書かスマホを見るといった過ごし方だった。
松森さんに連絡先を渡して仲良くなりたいとずっと思っている。可愛い人だし、彼氏がいてもおかしくない。もし断られたらと思うとダメージも大きいし、今後カフェに通いづらくなるだろう。そういった懸念点もあり、なかなか連絡先を渡せずにいた。
そんなある日、俺は友人の戸矢崎くんと飲みに行くことになる。酔った勢いで、「カフェの店員さんが気になってて連絡先を渡したいけど、なかなか勇気が出なくて……」と戸矢崎くんに打ち明けた。すると彼は「そんなのダメ元で渡したらいいじゃん! 断られたら断られたで他の女性も見てみたらいいし」と言ってくれる。