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見込みがあるな


目を閉じれば、あの時の情景が浮かび上がっている。

あの時は満月がでていたが、寒い冬の日、森の中だった。


「全く、何も無いではないか。昼が寝ているすきに何かしたかったが、収穫はなしか」


そう、我とした事が森の中を歩いていた。決して迷った訳ではなく、散策していた。

話を戻そう。我がこの森を探索していたのには理由がある。それは危険度から来るものだ。本来この森は進入禁止が国から出ているほどの危険区域。

名を【自殺の森】と呼ばれるほど命知らずしかこの森には入らない。だからこそ何かあるか? と思ったがこけ脅しだったな。

その日は災難だったな。虫は多い、宝も何も無い、そしてゴミが溢れていた────


「この森への侵入者よ、去れ。ここは人間が来るべきところでは無い」

「ほう……では何だ? 帰り道の案内でもしてくれるか?」


───大きいゴミだった。木に顔が生え、根が足になり移動する魔物、確か【ウッドマン】とかそんな名前だったか?

まぁ言ってしまえばそいつは瞬殺だったな。


「侵入者よ、もう一度いう去─────」

「騒がしい、死ね」


我の手刀が魔物を切った…が、常人の目から得る情報だろう。だが本質は違う、我は魔力で切った。

魔力は万能だ。放出や魔法に使うのによく使われるが、我はそれを工夫して魔力が体外に出ても発散しない方法を編み出した。その魔力は実態を帯び、我の思い通りに形を変化出来る。これを知ってしまえば、武器屋で装備を買うのが馬鹿らしくなる。

もちろん体外の魔力を防壁の様に貼れば、傷つかない透明なバリアの出来上がりだ。つまり我は武器は持っていないように見えて、剣も盾もちゃんと持っているということだ。

だが、それはこの雑魚のような時にだけ使える。強者であれば魔力で目を強化して、簡単に見破られる。その時こそ我が本気で戦う合図になるからそれはそれで都合が良いのだがな。


「さて……困ったな。先程の魔物に道だけ聞いてから殺せばよかったな」


違うぞ? この時の我はたしかに道を探しているが、それは…あれだ。そう! 宝の道を聞こうとしていたのだ! この時の我はまだ諦めていない、そうだろ?


「あー、早く帰って寝たい。マジで迷ったな」


…うん、もう黙っててくれない? 我のイメージが崩れてしまうから。

だが、我が今思えばこの時魔物に道を聞かなかったのは良い選択だったと自覚する。

今も我の横で月を見ている、お転婆と出会ったのだからな。


◇◇◇◇◇


「貴方は……誰ですか?」

「誰…か。そうだなヒーローと名乗っておこうか?」


十分後ぐらいだったか? 泣いて倒れているエルフを見つけた。言い忘れていたがミューズはエルフだ。

この世界には人間、魔物、エルフが三代種族として君臨している。

あとの種は時代の波に飲み込まれ少数で影を食って暮らしている。

そしてエルフは、三代種族の中でも魔法が得意で最も存在自体がクソなのは。


「お前も捨て子か? エルフよ」

「…触ってはいけません。私の体には毒が塗ってあります。…逃げて……逃げてください。あなたは狙われています、お願いですから……逃げて」


そんなこと分かっていた。敵はエルフ、数は四人と言った所か? 倒れていたミューズは奴隷階級のエルフだ。

当たり前だが上級階級もいる、彼女はそのペットだった。

身体中に毒を塗り、ミューズを助けに来た人間が毒に触れ痺れて動けなくなったところを捕獲して新しい奴隷にする。とても合理的だ。この上なくな。そしてそれ以上に不快になる行動だ。

さてと、このまま逃げるのは我のプライドが許さんのでな。殺すとするか。


「出てこい! そこにいるのは分かっているぞ、四人のエルフ!」

「!? そうか…やはり只者ではなかったか、我らはエルフ上位貴族、アフロディーテ一族の末裔───」

「いらん、そもそも誰が発言することを許した? 貴様の毒のような声をなぜ我の耳に入れなくてはならない?」


エルフは武器を構えた。どうやらキレたらしい。全く常識もなければ、導火線も短いときた。良い所を探す方が難しいレベルだな。

だが、我はほんの少しの希望を持っていた。手に魔力で出来た剣をもつ。


「おい、エルフ。今、我の手に何があるかわかるか?」

「何を言っている? お前は今素手だ。ハッタリも程々にしろ」


……なるほど。エルフと言えどこの程度か。魔法に特化した種族などよく言えたものだ。我を満足させられる強者はどこにいるのだ? いや、そもそも存在するのか怪しくなってきた。

だがもうエルフには用はない。死ね。


「フッ、人間よ。足がすくんで動けないか? 私はエルフの中でも上位クラスの────」

「もう良い、これ以上我の期限を損ねるな」


スパーパンとリズム良く四人のエルフの首を切る。簡単な作業だ、そして…失望の作業だった。

もう良いか、寝ている奴隷のエルフも楽にしてやろう。来世では良い人生をな。


「…その刀…綺麗ですね」

「(刀を止める) 待て、貴様、この剣が見えるのか?」

「えぇ、とても美しい刀ですね。この世すべての悪を切れる透明で美しい刀です」


まさか、この剣が見える者がいるとは…だが魔力が目に集まっているようには見えない。まさか─────


「貴様…魔眼持ちか?」

「…はい、私は忌み物を持って生まれました。その所為で奴隷に落ち、このような結末です。

今まで…自らが死ぬのに後悔など…ありませんでした。ですが今は少しだけ。あぁ本当に…貴方が私のご主人様ならどれだけ幸せだった事でしょうか」


おぉ、おぉ! 魔眼を持つ特異性、完璧なまでの忠誠心、そして我とおなじ感性を持つもの。

こやつだ。こやつこそ…我の下僕にふさわしい!


「小娘よ、悔しくないか? お前の人生はここで終わって良いのか?」

「…良くありません。ですが受け入れるしか無いのです。私は…どこまで行っても忌み物なのですから」

「違う。貴様が奴隷に落ちたのは魔眼を持っていたからでは無い。【貴様が何もしなかった】からだ。

ひとつ、取引をしよう。貴様に力をやる、その代わり忠誠を我に向けよ」


ここが初めて、他者への慈しみを持った所だったな。我はここで初めてミューズをここで殺すの惜しいと本気で思っていたのだ。


「…力とは? それがあれば変えられますか? 私のこの運命も…」

「それは貴様しだいだ。包丁も料理人が使えば道具だが、悪人が使えば武器となる。運命を変えるのも、断ち切るのも貴様次第だ」

「…ください。いえ、お貸しください。私はまだ生きたい、私の妹が…同じ様に奴隷になっています。あの子だけは助けたい!」

「良いだろう、力をくれてやる。我と共に歩め。我の後ろを歩く権利をやろう。誇るがいい、力を渡すのは貴様が初めてだ」


…なんで初めてかと? それはそもそも力を渡すことなど本来はできない。我に出来るのはせいぜい魔力をミューズの体内に流して、皮膚の毒を無効化。そして身体機能を向上させるぐらいだ。

だがそれでも、たったそれだけでもミューズは我が誇る下僕に進化した。


「フッ、起き上がったな。エルフの娘よ、名があるだろう? それはもう捨てよ。これからはミューズと名乗るが良い」

「かしこましました。この命をお救いしてくれた御恩一生忘れません。私は剣です。そして持つのは貴方様へ」


良い精神だ。とても心地の良い忠誠の義であったぞ。

さて、そろそろ戻らなくてはいけないが、野暮用が出来てしまったな。


我が昔話をしている時に、大きく扉が開く。


「あぁお姉様! また様と二人でお喋りを! 私も混ぜてください!」

「こら、はしたないですよ? 我々はご主人様の下僕なのです。それに相応しい態度を取るように」


勢いよく来た奴は、姉に説教をされてシュンとしている。だが、ちょうどいい。


「これから貴様の話をしようと思っていたところだ。聞いていけ、アイリス」

「はい! 私がご主人様に救われた日ですね! あの時のご雄姿、一度も忘れた事がありません!」


そうか─────


「それで、ご主人様。その野暮用というのは一体?」

「質問を質問で返すが…貴様の妹も、奴隷になってこの森にいるのか?」

「…はい。おそらく私と同じように、捕まっているはずです────ご主人様、まさか…」

「そのまさかだ。一人たすけたのだ、二人になっても変わらん。我の機嫌が変わらんうちにその妹の場所に案内しろ。見込みがあれば下僕にしてやろう」


ミューズは花のように咲いた笑顔を見せて案内する。あれ程のエルフの妹だ。期待をしても良いのかもしれんな…


「…おい! 奴隷二号! さっさと歩け!」

「はい…すいません。今…立ちますから…殴らないで」


ボロボロのエルフの目に大粒の涙が溢れる。自分では変えられない、現実と力の差に…


(…お姉ちゃん…助けて……)

読んでいただき本当にありがとうございます!


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そうすると魔王のやる気が上がります。

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