第7話 お肉とお魚を捌いてみたよ
本筋に戻ります。
怒られすぎて疲れ果てた。
コローネさんの話だと、そもそもポーターのランクは上がりやすいが、それはあくまでもその人の資質によるところが大きいらしい。
ランクが2まで上がるのが全体の半分、3まで上がるのはその中のさらに半分となり、ポーターが100人いても、ランク4まで上がれるのはだいたい12〜3人程度だそうだ。
ちなみにコローネさんは、世界屈指のランク5ポーターで、自らが参加したパーティーでは死者はおろか、重症者の一人も出していないらしい。
コローネさんの活躍がポーターの地位向上に大きく貢献し、その功績を持ってポーター協会を設立、初代会長になったらしい。
現在ポーターで登録されているのは世界で200人弱、単純計算で100人程度がランク1になるが、それでも新人研修やブロンズ冒険者への支援など、仕事は余るほどあるらしい。
先達のおかげで今の環境があるが、昔はポーターといえば荷物持ち程度の認識しかなく、危険な場所に送られる・報酬が安い・仕事が辛いの三苦だったらしい。
実際コローネさんがポーターになった頃もそういった状況で、知り合いのポーター全員で依頼拒否を起こし、その間に徹底的に技術を磨き、数年で待遇を改善させたそうだ。
これは俺の上限が5だというのも黙っていたほうがよさそうだな。
期待させといてできませんでしたっていうのは恥ずかしいし。
そして俺が何故か持っていた収納スキルだが、このスキルを獲得するのは、ポーターランク3に上がるときにギフトとして授かることが一般的らしい。
ポーターランクが3になれば、基礎能力も上がっているので、魔力消費も気にならないそうだ。
そこで俺は疑問に思う。
使い方は教えてもらった。
実際使うこともできた。
とりあえず言われたものを収納し、出し入れも可能だった。
コローネさんの説明では、魔力を消費するのは出し入れ時と保管時。
そして俺のポーターランクは現在1。
俺の基礎魔力は10。
なのに全く魔力が減らないのだ。
不思議に思って何度も出し入れをした。
ステータスボードを出した状態で確認しているので正確なはず。
実際、さっき危険感知スキルが発動した時は、体から何かが抜けていく感じがした。
おそらくあれが俺の魔力なのだろう。
ものは試しだ。
「コローネさん、申し訳ないんだけど、ちょっと試したいことがあるから協力してもらえませんか?」
きっと何かに感づいたのだろう。
2つ返事で許可をもらった。
俺が試したいのは、自分のスキルの中で、どれが魔力を消費して、どれが魔力消費無しで使えるのかの確認だ。
ギルマスはこの世界で助けてもらった恩人だし、コローネさんは、言わば俺が今から所属するところの社長だ。
今まで話した感じから、コローネさんが俺を悪用するとは思えないし、コローネさんもギルマスもすごく部下を大事にしているのがわかる。
この2人なら、俺のスキルを知られたところで、多分俺より有効活用してくれるだろう。
ギルマスは席を外すと言っていたが、俺の方から助言をしてほしいとお願いして同席してもらった。
まずは簡単なものから始めようと思い、キッチンに移動する。
いきなり料理をするわけではなく、収納スキルの時間経過を確認するために、淹れたてのお茶や生肉、魚等を収納する。
その後、3人で治療院の薬草畑に行き、採取スキルを発動させる。
ギルマスによれば、採取スキルは自然に生息する素材が分かるスキルらしいので使ってみたら、草の上にその名前とランク、作成可能な薬品名が表示された。
コツとしてはよく見るって感じかな?
我ながら頭の悪そうな言い方だ…。
ちなみに草の名前とともに表示されているランクと、作成可能一覧はどうやら俺にしか見えないらしく、2人からは、またかという目で見られた。
あと、薬草院の方たちにすごく熱心にスカウトされたのだが、「先約が入っていますので」と、丁重にお断りした。
しかし、辞めたらいつでも待ってますなんて、雇う人間がいる目の前で言う台詞ではないな。
収納スキルは確認中だし、危険感知はさっき発動を確認している。
それにわざわざ危険な中に首を突っ込みたくない。
しかもさっきは叩かれたと同時に発動していたし、これは過信しないでおこう。
幸運も確かめようがないな。
まぁ、右も左もわからない状態で、ギルマスとコローネさんという2人に出会えたことはすごく幸運なことだと思うので、これも発動していると思っておこう。
あとは雷耐性か…。
これも今はパスだな。
発動しなかったら怖いしね。
だからギルマスよ、あそこに雷魔法が使えるエルフがいるなんて情報はいらないよ。
えぇい!ニヤニヤするな!
さて、時間も経過したことだし、協会に戻ろう。
さっそく収納スキルでさっき入れたお茶を取り出してみる。
時間経過は…うん、お茶は熱々だね。
湯気も出ているし、時間経過はしていないと思って問題ないだろう。
次にブロック肉を出して、解体と念じる。
しかし何も起こらなかった。
コローネさんが言うには、ポーターにも解体や調理スキル持ちは何人かいるらしいが、ポーターの必須スキルではないらしい。
そして、スキルの発動条件はイメージが大切で、そのやり方は人によって違うらしい。
言われてみれば確かにと思う。
採取のスキルを使用したときは、草をよく観察した。
俺のいた世界にはない植物なので珍しかったというのもあるが、葉の生え方や花の色、匂いに触感まで試していたら、何となく見えるようになったのだ。
(イメージか…。)
ブロック肉をよく見る。
どことなく牛肉に似ているな。
これは魔獣の肉らしいが、サシが少なく赤身が多いので、ステーキ肉をイメージする。
何となく形になったので、解体と念じると、ブロック肉の一部がきれいに整形されたステーキ肉になった。
驚くのはその正確性。
5枚のステーキ肉が並んでいるが、どれも大きさ、厚さがほぼ同じなのだ。
肉の方は上手く行ったので、次は魚に挑戦しよう。
こちらは普通に海に棲んでいる魚らしく、どことなくカツオに似ている。
俺は半身を刺し身、半身をサクになるようイメージして解体と念じる。
目の前にはきれいな半身の刺し身と残り半身のサクができていた。
「おぉ!これすごく便利じゃん!」
と、喜んでいると、いつの間に集まったのか、観客には数人の女性が増えていた。
全員が全員ポカンとした顔をしている。
ようやくギルマスが再起動したようで、肩がぷるぷると震えだす。
昔のロボットの玩具みたいだな。
「このバカ野郎!お前は限度ってもんを知らんのか?
ここまできれいにできるやつなんて見たことねぇぞ。
だいたいお前はポーターだろうが。
こんだけの技術があればどこに行ったって料理人として食っていけるじゃねぇか!
むしろそうしろ!
な?
わざわざポーターなんかならなくてもいいから、大人しく飯屋でも開け!
金は俺が出してやるから!
な?」
なんだろう、すごい力強く料理人を推してくるな。
そもそもポーター協会を紹介したのはアンタだぞ?
否定してくれると思いながらコローネさんを見ると、ものすごく頷いていた。
ついでに後ろのお姉さんたちもすごく頷いている。
訳を聞いたら、この国は料理があまり発展していないらしい。
この世界で料理といえば元魔王国で現在のリグランド公国なのだそうだ。
これには長い長い歴史がある。
若い頃はステーキの脂身が大好きでした。
年取ったので最近はかなりきついです。
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