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閑話 あるギルド嬢の1日

閑話です。

ちょっと一休み。

「はぁ、ようやく落ち着いたわね。」


隣の席のミオさんがふっと息を吐いてます。


朝一番の依頼受注のピークを越えて、ギルド内はいつもの落ち着きを取り戻したところです。


私の名前はリアと言います。


去年このギルドに入った新人受付嬢です。


仕事にもようやく慣れてきましたが、朝の忙しさだけはまだ慣れることができません。


隣の席のミオさんは3年先輩で私の教育係です。


最近ではギルドの看板娘なんて呼ばれ方をしています。


たしかに私から見ても惚れ惚れしてしまいます。


抜群のスタイル、天使みたいな笑顔、何よりすごく仕事ができます。


すごくきれいなのに笑ったらすごく可愛いって反則です。


このギルドの人たちは、みなさんすごくお仕事ができます。


私も頑張ってはいますけど、まだまだまだまだです。


「ミオさん、お茶を煎れてきますけど、どうですか?」


「ありがと!よろしく〜♪」


そう言ってカワイイ笑顔を向けてくれました。


はぁ、癒やされます。


ミオさんは濃ゆめのお茶が好きなので、茶葉は少し多めに使います。


もちろん蒸らす時間も大切です。


昔は何も考えずにお茶を煎れていたんですけど、ミャコさんがこっそり教えてくれました。


ミャコさんは猫人族で、私よりも1つ年上、仕事も1年長い先輩です。


そしてミャコさんもすごくお仕事ができます。


はぁ、ダメだとはわかっていても、ついため息をついてしまいます。


最近はホントに自分に自信がありません。


足を引っ張っているわけではないと思いますが、どうしても周りと比べてしまいます。


こんな自分がイヤになります。




私は小さい頃教会の前に捨てられていたところを、母親代わりであるシスターに拾われました。


私を守ってくれたのは小さいかごと毛布、それに1枚の護符アミュレットだったそうです。


護符の裏にはリアと書かれていて、それが私の名前になりました。


別にこの事自体は恨んではいません。


この国ではそんなに珍しいことでもありませんし、先月も1人の女の子が私の妹に加わりました。


皆さん理由は様々でしょう。


てすが、せっかく産んだ子供を捨てるのだけは同意できません。


私ならすごく大切に育てるのに…。


まぁ子供よりも先にお相手を見つけないことには、どうしようもないんですけどね。


はぁ。


今日何度目か分からないため息が出ます。


今さら仕方ないことではあるんですけど、この胸についている肉の塊を鬱陶うっとうしく思います。


肩は凝るし服のサイズは合わなくなるし男性からは敬遠されてしまいますし…。


せめて今の半分くらいなら、男性からも好ましく思われるんでしょうか。


ミオさんほどのスーパーボディが欲しいとは思いませんが、それでもやはり羨ましくはあります。


おっといけません。


笑顔、笑顔です。


皆さんに比べて仕事ができない私は、せめて笑顔で過ごさなくては。


ミオさんにお茶を渡したら、ここからは少しだけゆっくりできます。


夕方近くになると、続々と冒険者さん達が帰ってきますからまた忙しくなります。


それまでは比較的暇ですし、ギルド内も閑散としています。


今も誰もいませんしね。


依頼板の確認はミャコさんがしてくれたみたいです。


ホントは私の仕事なんですけど、ミャコさんには感謝です。


この時間はたいてい自分の仕事をするか、大きいテーブルで女の子たちが集まって雑談をします。


内容は…まぁ色々です。


今日はどうやら恋バナのようですね。


ミャコさんはどうやら気になる方がいるみたいです。


ミオさんは…わかりませんね。


想いを寄せている方がいるようですけど、お相手のことは上手に隠しています。


ミオさんに想われるなんてどんな素敵な方なんでしょう。


私の勝手な想像ですが、おそらくこの国の王太子でもミオさんに言い寄られたら、断ることはないと思います。


私にもいつかそんな方ができるのでしょうか。


いや、違うでしょ!


まずはお仕事をしっかりしなきゃいけません。


話に花を咲かせていると、ギルマスが奥から出てこられました。


私達の方を見ると、苦笑いを浮かべて奥に引っ込んでいきます。 


そう言えばギルマスも謎の多い方です。


ご結婚はされていないようですが、私生活が謎に包まれています。


元々はゴールドランクまで登りつめた方ですし、あの逞しい肉体は、隠れファンが多くいます。


えぇ、男性にも女性にも、です。


深くは考えないことにしときましょう。


お茶を煎れ直してこようかなと考えていたら、ギルドの扉が大きい音をたてて開きました。


だめですよ?


最近は建付けが悪くて壊れそうなんですから。


壊れたら弁償させられますよ?


そう思っていたら、事態は思ったより深刻だったみたいです。


「ギ、ギルマスいる!?

緊急事態です!」


何でしょう。


すごく慌てています。


まさかスタンピード!?


こうしてはいられません。


私は慌ててギルマスを呼びに行きます。


ドアをノックはしますが、返事を待たずに開けます。


スタンピードなら一刻を争う事態だからです。


「おい、どうした慌てて。」


ギルマスは暢気のんきなものです。


スタンピードですよ!?


最悪王都が滅ぶかもしれないんですよ?


なにを暢気にお茶なんか飲んでるんですか!


「ミ、ミリーさんが緊急事態だとギルドに駆け込んで来られて、ギルマスを呼んでくれと。」


「ミリーが?」


ギルマスはすぐにミリーさんを部屋に呼ぶよう言われました。


ミリーさんは慌ててお部屋に入っていきます。


少ししたら、すごく難しい顔をしたギルマスとミリーさんが出てきました。


「ミオ、悪いが少し付き合ってくれ。

他の者は通常の業務を続けるように。」


そう言うと、ミオさん、ミリーさんと3人で出ていってしまいました。


私達は魔物の恐ろしさを知っています。


朝出ていった人が、夕方には魔物にやられて帰らぬ人となることは日常的にあるからです。


そうならないためにも、私達のギルドは常に気を配っています。


「ミオさん達、大丈夫でしょうか。」


私の不安に答えてくれたのはルルさんでした。


この方は今のギルドの中でも歴が長く、ギルマスの秘書のような事もされています。


「大丈夫でしょ。

ギルマスも一緒だし。

というかギルマスの手に負えないんだったら、うちの冒険者じゃどうしようもないわよ。

それにホントにヤバいときは、私達にすぐ避難指示を出す人でしょ。

心配いらないわよ。」


なるほど、たしかにその通りです。


引退されたとはいえ、ギルマスはゴールドランク。


このギルドにはシルバーランクが何人かはいますが、若いギルドなので王都の中央ギルドほどメンバーが揃っていません。


ミリーさんもそれはわかっているので、もし本当にスタンピードならそっちに行くはずです。


あれ?


でもそれならミリーさんはなぜあんなに慌てていたんでしょう。


ミリーさんも若いとはいえパーティーとしてはブロンズランクに登録されています。


オーガの群れなら難しくても、ゴブリンやオーク程度なら簡単に倒せるだけの力は持っているはずです。


わかりません。


でも私にできることはないので、取り敢えず無事を祈りましょう。


うん、早かったですね。


まだ1時間も経っていませんよ?


そしてギルマスが担いでるその方は誰ですか?


そんな薪みたいに担がなくても…。


ギルドの中が少しだけざわつきます。


えぇ、わかりますよ。


見た目だけなら、オーガキングが獲物ごはんを持ってきたみたいになってますからね。 


後ろにいるのは…ヒースさんとシャオさん、それにミリーさんですね。


ご無事で何よりです。


ミオさんは…一緒ですね。


良かったです。


それで結局その方は…。


ギルマスが私とミリーさんを救護室に呼びました。


ミリーさんには回復魔法と鎮静魔法をかけるように指示されてます。


私は…荷物の検分ですね。


では失礼して…。


見ないようにはしましたが、ついマジマジと見てしまいました。


おとぎ話で見た勇者様そっくりの黒い髪、引き締まった体、そして少しあどけなさの残る顔立ち。


はい、私の好みど真ん中です。


なんですかこの方。


王子様ですか?


完全に私の王子様ですよね?


ですが落ち着くのです。


王子様はお姫様と結ばれるもの。


物語はいつのときも、王子様とお姫様の物語なのです。


私のようなものは一コマでも出れれば満足しなければいけません。


そう自分に言い聞かせて、平静を装いながら着ているものを脱がせます。


見たことありませんが、凄く脱がせにくいですね。


ちょっと腰を持ち上げて…次は体を浮かせながら…。


ようやく脱がせることができました。


改めてお体を見てみます。


傷ひとつないきれいな肌。


サラッとした髪。


少しお辛そうな顔をされてますが、ミオさんの鎮静魔法が効いてきたのか、だんだん穏やかな顔になっていきます。


ギルマスが居なくてよかった。


今は執務室でヒースさん達に経緯を聞かれているはずです。


つまりこの部屋には私と彼の…。


「言っとくけど私もいるからね?

それに見すぎよ、気持ちはわかるけど。」


そっそうでした!


ミオさんがいたんでした。


ダメです私。


冷静になれていません。


ですが仕方ないことなんです。


冒険者の方を見ることは普通ですが、あの方達は少し粗暴というか…。


いえ、優しい方ももちろんいらっしゃいます。


ですがもちろんそんな方にはもうお相手がいて、今来られてるヒースさんにもミリーさんがいらっしゃいますし、そこに入ろうなんて考えたことはありません。


…それに冒険者の方達はミオさんばかり見ていて、誰も私なんて見てくれませんからね。


いけませんね。


悪い思考になっています。


私みたいなのが性格も悪かったら最悪です。


離れるのは非常に名残惜しいですが、まずは仕事をこなしましょう。


会議室に持ち物を並べて…。


知らないものがいっぱいです。


これは何でしょうか。


細長い丸で突起がいっぱいあって…、使い方はわかりませんがとりあえず並べておきます。


これは…ナイフですかね?


それにしても凄くきれいです。


まるで風のない水面みたいに私を写します。


ちょっと要らない羊皮紙を持ってきて…。


すごいです。


切れ味がすごすぎて声も出ません。


おそらくシルバーランクの方でもこれだけの切れ味鋭い剣は持っていないのではないでしょうか。


そしてこれは危険ですね。


あれ?


ということはあの方は危険な方なのでしょうか。


見た目はあんなに可愛い方なのに。


ですが油断はできませんね。


いい人そうに見える人が悪い人だったなんて、物語の定番中の定番です。


ふぅ、危なかった。


危うく騙されるところでした。


仕事を再開しましょう。


これは…何でしょうか。


丸い握り手の先に鉄のようなものがついています。


思ったよりも軽いですね。


ここを握ればいいのでしょうか?


「キャッ!?」


突然のことに驚いて声が出てしまいました。


ミオさんが心配して来てくれます。


私はミオさんに事情を説明します。


「こ、これは何でしょうか。

握ったら突然火が出てきました。

魔導具の一種でしょうか。」


ミオさんにも見せてみます。


ミオさんでも分からず、ルルさんにも聞いてみましたが、ルルさんでも分かりませんでした。


もちろん2人共すごく驚かれていました。


あの方はやはり危険な方のようです。


こんな魔導具見たことがありません。


他の持ち物も一通り確認しましたが、やはり私の知っている物はありませんでした。


これはもしかすると中央ギルドからも検分が来るかもしれません。


とりあえずギルマスに報告しておきます。


ギルマスは…まだお話中ですね。


わかりました。


私はもう一度あの方のところに…。


いえ、違いますよ?


危険な方かどうか見極めるためです。


はい、そのとおりです。


決して下心はありません。


私の神に誓っても大丈夫です。


なのでミオさん、私の肩を掴んでいる手を離してもらえませんか?


少し痛いので、ぜひお願いします。


ダメですか。


悲しいです。


ですが私には最終手段があります。


これは1番年下の私にうってつけの方法です。


とりあえずギルマスを待ちましょう。


そうこうしてるうちにお戻りの方が増えてきましたね。


ミオさん、お仕事です。


皆さん困ってますよ。


冒険者の方にはミオさんの列にしか並ばない方もいますからね。


その横の私は悲しくなりますが。


はい、笑顔で乗り切ります。


ヒースさん達が出ていかれました。


お話は終わったようです。


ですが、出ていかれるときに新たに依頼を受けていかれました。


たしかに夜耀鳥ムーンバルドの捕獲はそんなに難しい依頼ではないですけど、場所は王都から少し離れています。


その依頼は明日までになっていますが本当に大丈夫ですか?


特別依頼なのでその分報酬も割高にはなっていますが、依頼を受けてしまうと、失敗したらペナルティが発生してしまいます。


まぁ私が心配しても仕方ないですし、冒険者の方達は自己責任が基本ですからね。


無事に帰ってこられるのを祈りましょう。


もうすぐ今日のお仕事も終わります。


そろそろ頃合いでしょうか。


こっそりと抜け出してギルマスの所に…。


あれ?


ミオさんの姿がありませんね。


まさか!?


急いでギルマスの所に向かいます。


ノックをすると…遅かったみたいです。


すでにミオさんがギルマスと話をしています。


目的は同じでしょうか。


いえ、別の件を報告している可能性もあります。


私の後からルルさんが来ました。


まさかルルさんもですか?


…どうやら目的は同じようですね。


後輩とはいえここだけは譲れません。


ミオさんが部屋から出てきました。


すごくしょんぼりされています。


しょんぼりしてても可愛いなんてズルいです。


「ギルマス、あの…。」


「…まさかリアまであいつの面倒みたいなんて言うんじゃねぇだろうな?」


…先手を打たれました。


まさにそのとおりです。


そしてどうやらミオさんも同じ目的だったみたいですね。


「えっと…。」


私が言い淀んでいると、ギルマスはため息を吐きながら、


「あのなぁ、よく考えろよ?

相手に意識がないといっても、いつ目が覚めるか分からねぇんだ。

それにうちの大事な職員を、一晩とはいえ見ず知らずの男と過ごさせるなんて俺が許可するわけねぇだろ?」


全くもってごもっともです。


確かにあのギルマスがそんなことを許可するわけがありません。


冷静に考えれば当然のことなのに、どうやら私は相当舞い上がっていたようです。


答えに詰まった私を見て、ギルマスは


「ルル、お前さんもそこにいるんだろ?

悪いがあいつに睡眠の魔法をかけておいてくれ。」


と、言いました。


ルルさんは元気のない声でわかりましたと呟いてお部屋に向かったようです。


「なぁリア、落ち着いて考えろ。

お前が悩んでるのは分かってる。

多分仕事のことだろ?」


まさにそのとおりです。


ギルマスは私のこともちゃんと見てくれていました。


「焦らなくていい。

あいつらはお前より先輩なんだから、お前より仕事が出来て当然だ。

なら今はしっかりと仕事を覚えろ。

そして次に後輩が入ってきたら、そいつの面倒をしっかり見てやってくれ。」


確かにそのとおりです。


そして私の心は少しだけ軽くなりました。


「…ギルマス、ありがとうございます。」


「あぁ、分かってくれたらいいんだ。

まぁ俺に手伝えることがあったら言ってくれ。

話は聞いてやるから。」


…今なんと言われました?


言質とりましたよ?


「じゃあ早速1つだけいいですか?」


「あぁ、何でも言ってみろ。」


「今夜のあの人の監視を私にさせてください。」


「うん、ダメだな。」


「さっき何でもしてくれるって言ったじゃないですか!」


「話を聞くだけで叶えてやるとは言ってねえ!」


不毛な言い争いが続きましたが、私の望みは叶えられませんでした。


ギルマスのケチ!




教会に戻り夕食をみんなで取ります。


私は年上のほうですが、まだ上の方もいますし、一番下はまだ生まれたばかりの女の子です。


あの人の件は、ギルマスから口外禁止を言われているのでみんなには話せません。


今夜はみんなの話を聞くだけにしましょう。


食事は質素なものですが、これは仕方ありません。


働いているのは私を含めて数人で、そのお給金と国からの支援金、ここを出た方達からの援助で賄われています。


食事が終わると、私は3歳と4歳の女の子と一緒に寝ます。


お布団で歌を歌ってあげるとすぐ寝てくれるいい子たちです。


明日も仕事を頑張りましょう。


まずは早めに行ってあの人の顔を見なくては。


今日はいい1日でした。


明日は目を覚ましてくれるのでしょうか。


そしたら少しだけでもお話がしたいですね。


…わかっています。


まだ油断したわけではないですよ?


監視、そう、これは監視なのです。


危ないことをしないようにきちんと見張らなくては。


そうと決まったらさっさと寝ましょう。


明日も朝から大忙しのはずです。


できればあの人が夢にでてきてくれますように。




……………ちょっと待ってください。


もしかしてミオさんやルルさんはライバルになるのでしょうか?



あるギルド嬢の1日でした。

いかがでしたでしょうか。

女性目線は言葉遣いが難しいですね。


誤字、脱字、表現の問題等ありましたら、ご連絡をお願い致します。

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