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第2話 ある日、部屋の中、クマさんに出会った

目が覚めたらベッドの上にいた。


妙に頭がスッキリしている。


(あぁ、夢か。

そりゃそうだよな。

でもなんか変な夢だったな。

現実味があるような無いような。

ってか今何時だ?)


ゆっくりと体を起こす。


周りを見渡すと何もない殺風景さっぷうけいな部屋。


「ここ、どこ?」


(病院…にしては何もない。

俺の部屋でもない。)


ベッドを見て気付く。


(なんで裸?)


俺は寝るときもスウェットを着ているはず。


少なくとも全裸で寝たことはない。


とりあえずシーツらしきもので慌てて体を隠す。


ゆっくりとドアに近づくと、どうやら鍵は掛かっていないようだ。


静かにドアを開ける。


ドアを開けて左を見る。


(左よし!)


「おい?」


ゆっくりと反対側を見るとデカい体。


「ギャーーーーーーー!」


思わず叫んでしまった。


奥の方に人がいるのが見える。


そんなことよりも目の前だ。


クマがいる。


しかもかなりデカい。


子供の頃に連れて行ってもらった、動物園でみたツキノワグマ並かもしれない。


そしてこの毛むくじゃらの腕。


ぶっとい。


ただただ、ぶっとい。


あぁ、俺死ぬのか…。


できれば死ぬまでに彼女欲しかったな。


現実から全力で逃げながら俺は意識を手放した。




否、手放せなかった。


毛むくじゃらのぶっとい腕が、俺の細い腕を掴んで引き寄せる。


「人を見た途端大声上げるな馬鹿野郎!」


クマが話しかけてきた。


薄く目を開くとクマっぽいおっさんが立ってた。


デカい。


何というか、全部が業務用って感じだ。


多分首とか俺の太腿ふとももより太いと思う。


鎮静リフレッシュの魔法かけたのに効いてないのか?

とりあえず落ち着きやがれ。

お前のことはヒース達から聞いた。

聞いたんだが、いまいち要領が掴めなくてな。

とりあえず冷静になれ。

そして落ち着いたら俺の部屋までこい。

あぁ、リア。

悪いがこいつに服を適当に見繕ってやってくれ。

そしたら俺の執務室に案内してくれ。」


「わかりましたギルマス。」


リアと呼ばれた女の子が俺の体を見る。


そういえば俺裸にシーツ一枚だった。


それを忘れてしまうほど、俺の目線は一点に集中していた。


(デッカ。)


目の前にはリンゴが2つ。


しかもポヨポヨと揺れている。


「あっ!」「えっ!?」


リアさんの頬が朱くなり、顔を背けるが目はチラチラと俺の一点を見ている。


「おい?」


クマが睨んでくる。


「言っとくけどそこまで元気にしなくていいんだからな?

それとうちの職員に手を出したら、挽肉ミンチだぞ?」


俺は高速で頷く。


あっちも一瞬で縮み上がった。


大きい三角の布を貰い部屋に戻る。


貫頭衣かんとうい


とりあえず頭から被ってみる。


部屋から出るとリアさんが扉の横で待っていてくれた。


ナニがとは言わないがスースーして落ち着かない。


「あの…リアさん?」


「はい?なんですか?」


「下着とかってないですか?

どうにも落ち着かなくて…。」


「シタギ…ですか?

それってどういったものでしょうか?」


な…なんだってー!?


ないの?


ほんとにないの?


ってことは…


俺はちらりとリアさんを見る。


リアさんはこちらを不思議そうに見てくる。


(ってことはこの子も何も着けてないの?

ノーノー?

完全試合パーフェクトだよ!

叔父さん、俺の夢と希望はここにあったよ!)


俺は思わず涙が出そうになった。


辛かった高校生活。


周りがキャッキャウフフと青春ど真ん中を行ってるあいだ、俺は40オーバーのおっちゃんたちと夏の暑い日も冬の寒い日も汗水垂らしながら働いていたんだ。


ようやく、そう、ようやく報われるときがきた。


目の前には超絶キレカワ女の子。


見た目だけでもその辺のアイドルが裸足で逃げ出すレベルなのに、そんな子が俺のことを少しはにかみながら見つめてくれてる。


(あぁ、生きててよかった。

お付き合いしたいなんて高望みはしません。

どうかこの子と仲良くなれますように。)


俺は天国にいるであろう両親に願った。


願いが通じたのか、どこからともなくため息が聞こえる。


…ため息?


「何考えてんのかわかんねぇけどよぉ。

来たならさっさと入ってこいやバカタレ!」


…クマに怒られた。


リアさんは横で苦笑いをしている。


(まじ天使…。)


執務室とやらに入ると、クマがでっかい椅子に座っていた。


机の上には占いとかで見る丸い水晶のようなもの。


「ヒースたちからも聞いちゃいるが、お前の口からもう一度聞きたい。

お前は誰であそこで何をしていた。」


俺はもう一度状況を説明した。


クマは黙って話を聞くと、少しだけ目線を水晶に落とす。


「じゃあ俺が今からいくつか質問をする。

お前はすべての質問に対してイエスと答えろ。

いいか?

ノーでもイエスと答えろよ?」


俺は一言イエスと答える。


「お前はさっきの答えで嘘をついた。」


「イエス」


水晶が赤く光る。


「…次だ。

お前はこの王都で何かを企んでいる。」


「イエス」


また水晶が赤く光る。


その後もよくわからない質問が続く。


俺はすべての答えにイエスと答えたが、水晶が赤く光る時と光らない時があった。


「質問は以上だ。

お前から何か聞きたいことはあるか?

あぁ、別に言葉遣いは気にしなくていい。

ここじゃ誰も敬語なんてもんは使わねぇからな。」


「じゃあ遠慮なく。

まず確認なんだがここは何処であんたは誰なんだ?」


「そっからかよ…。

まあ確かに説明はしてなかったな。

ここは王都の冒険者ギルド支部で、俺はここのギルドマスターをやっているラミアスってもんだ。」


冒険者ギルドか。


やっぱり分からないな。


「マスターってことはここの責任者ってことか?」


「まぁ、そうなるな。

言っとくが俺がトップってわけじゃねぇ。

王都にもギルドはいくつかあって、その中の一つがここってわけだ。

ちなみにヒース達はこのギルドに所属している冒険者で、だからお前をここに連れてきたって訳だ。」


「それについては助かった

後でヒースさんたちにも礼を伝えたい。

それとついでなんだが、その水晶みたいなものはなんだ?

俺の答えで光ってたから、嘘発見器みたいなもんか?」


「お前、魔導具マジックアイテムも知らねぇのか?

まぁそうだな。

こいつは嘘をついたら光るようになってるんだが、そんなに珍しいものでもないはずだ。

最上級ハイレアのもんは王国裁判なんかにも使われるし、一般的なやつは上級宿なんかでも使うところはある。

こいつを知らねえって事はやっぱりそういうことか。」


クマ…じゃなかったラミアスギルドマスターは何やらブツブツ言いながら俺をじっと見ている。


「あぁ、そう言えばお前の荷物を見せてもらった。

一応確認はしなきゃならないんでな。

まぁ見たことねぇもんばっかりだったから、わかんねぇもんばっかだったけどな。

着ていた服に関しては返してやれるが、荷物はもう少し待ってくれ。

これも規則なんでな。」


荷物を見られることは別に問題ない。


見られて困るものは入っていなかった…はず。


「さてと、じゃあ悪いがもう一箇所付き合ってもらわにゃならん。

別に危害を加えることは無いから安心してくれ。

って言っても、わかんねぇよな。

まぁ黙ってついてこい。」


そういうとラミアスギルドマスターは立ち上がった。


(やっぱデケェ…。)


どう足掻あがいても戦ったところで勝てる見込みはないし、下手に怒らせると怖いので大人しくついていく。


建物を出るときに、カウンターのようなテーブルに座っているリアさんを見つける。


なんとなくお辞儀をしたら、微笑んでくれた。


(マジ天使…。)


「おい?

さっき言ったこと忘れてねぇだろうな?」


俺はまた高速で首を縦に振った。


外に出ると自分の目を疑う。


これはなにかの間違いで、外に出れば見慣れた町並みが広がってると思っていた。


まだ心の片隅で、現実を受け止めきれない自分がいたんだ。


しかし周りを見渡せばレンガ造りの建物、コンクリートではない道、軒先に並んでいる剣や斧、そしてその辺を歩き回っている人間以外の住民。


猫耳、うさ耳、イヌ耳。


あれはエルフかな?


ゲームでも見たことがある。


隣りにいるのはドワーフ?


やっぱりひげが長いんだな。


あれは…人魚?


陸上にいるけど大丈夫なのか?


あ!


よく見たら少し浮いてる!


え?


浮いてる?


3度見も4度見もしてしまい、ちょっとにらまれてしまった。


申し訳ない。


俺が呆気あっけにとられていると、ギルドマスターに頭を小突かれた。


「何呆けてやがる。

さっさと行くぞ。」


そう言って歩き出す。


なんだかノッシノッシと聞こえる気がする。


(やっぱりあの人クマなんじゃないか?)


失礼なことを考えていたのがバレたのか、振り返ってちょっとにらまれた。


俺も大人しくついていくが。


視線はどうしても周りに向いてしまうが、頭の中は意外と冷静だった。


(こんな非現実的な状況なのに、なんでこんなに落ち着いて周りを見てるんだ?

ついこないだまで俺は何の変哲もない学生だったんだ…。

それが突然訳分からないところに来て、意味の分からない事になってる。

考えてみればおかしい事だらけだ。

理解できない事ばかりなのに、頭の中だけがやけにクリアに感じる。)


おそらく俺は他の同級生よりも達観しているとは思う。


親がいない状況で、自分で全てやってきた。


口にすることはなかったが、あいつらは親が用意してくれた弁当を当たり前のように食い、挙句あげくの果てに文句を言う。


それがどれだけ大変な事なのかも理解していない。


こっちは高校3年間毎日欠かさずに自分で作ってたんだ。


昼だけじゃない、朝も夜も毎日だ。


食事があって当たり前なんて感覚の同級生達とは訳が違うし、そんな当たり前が突然無くなることも知っている。


おそらく日本にも俺と同じか、もっと厳しい状況の人もいたはずだ。


世界を見渡せば、俺はかなり恵まれている方だとも思う。


俺は自分が偉いなんて思い上がってはいないが、少なくとも同じクラスにいたやつらとは境遇が違っていた。


精神的にはかなり鍛えられているはずだが、それでもここまで冷静でいられるかと思うと、そんな次元ではない気もする。


先程リアさんを見たときに、それこそ雷に打たれるほどの衝撃を受けたんだ。


感情が死んだわけではないと思う。


まぁ彼女どころか好きな人さえできなかった俺に偉そうなことは言えないわけだが…。


衝撃の出会いを思い出すと、ついつい2つのリンゴも思い出してしまう。


周りからは変に思われていなさそうだが、煩悩退散を念じながらクマの後をついていく俺だった。



本日はここまでです。

また明日投稿します。

よろしければ見てください。


誤字、脱字、表現の問題等ありましたら、ご連絡をお願い致します。

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