第10話 偶然なのか必然なのか
「あなたは…。」「リアさん!?」
二人の声が重なった。
「元気になられたみたいで良かったです。
なかなかお会いできないから心配していたんですよ。」
少しの沈黙の後、リアさんから切り出してきた。
俺も何を言っていいのか迷っていたから助かった。
「その節はお世話になりました。
ご挨拶に行きたかったんですが、色々と忙しくて…。
それにギルマスとのこともありますし…。」
ちょっと言い訳がましいが、本当のことを言う。
ギルマスは俺がギルドに近づくと目を光らせるし、今日食事をしたのもわざわざポーター協会に迎えに来てくれていた。
そんなこんなで俺はなかなかギルドに近づけないでいたのだ。
「それよりもリアさんはこんな時間にどうしたんですか?」
少し居心地の悪さを感じて、ちょっと強引に話を変える。
「えっと…、私は今まで同僚の先輩達とお食事をしていて、みんなでお店を出たんですけど私が忘れ物をしてしまったもので、皆さんには先に帰ってもらっていたんです。」
なるほど、さっき会った皆さんと食事していたのね。
でもそれはいけない。
王都で治安がいいといっても、今は夜だ。
女性を一人でかえすわけにはいかないからな。
「あぁ、さきほど皆さんには会いましたよ。
リアさんも一緒だったんですね。
でも夜に女性一人では危ないですよ。
俺でよければ送らせてください。」
少し強引すぎるかな?とは思ったが、何かあってからでは遅いんだ。
そう自分に言い聞かせながら提案する。
「そんな、悪いですよ。
それに私なんて魅力がないし、大丈夫ですよ。」
この人は何を言ってるんだ?
魅力がない?
ウソだろ。
こんなに魅力的な人、探したってなかなか居ないというのに。
「いや、リアさんはすごく魅力的ですよ。
まぁ俺じゃ少し頼りないかもしれないですけど、家の近くまでは送らせてください。」
「そんな、そんなことないです。
じゃあ、ご迷惑じゃなかったら、お願いしてもいいですか?」
ぐわぁぁぁ、その上目遣いは反則です。
「迷惑なんてとんでもないですよ。
じゃあ行きましょうか。
と言っても俺は場所がわからないので教えてくださいね?」
そう言うと、リアさんはくすっと笑って『こっちです』と案内してくれた。
「そう言えば名前を言ってなかったですね。
俺はコータって言います。
今さらですけど、よろしくお願いしますね。
それとこれも今さらですけど、リアさんって呼んでいいですか?」
「コータさん。
こちらこそよろしくお願いします。
もちろんリアと呼んでください。
ところでコータさんは、これから何処かに行くところではなかったのですか?」
「いえ、ギルマスと食事をして、家に帰るところでした。
恥ずかしいんですけど、まだ道に不慣れでして、少し迷っていたところでリアさんの同僚の方に会いまして。
そこで道を教えてもらったところでリアさんとバッタリあったんですよ。」
「あら、そうなんですね。
もしよければ、お家の場所をお聞きしてもいいですか?」
「もちろん。
家はポーター協会に近いところです。
協会まで行けばわかるんですけど、まだ町の中の方は分からなくてですね。」
「あら?
ポーター協会は反対側ですよ?」
「え!?
そうなんですか…。
でもそのおかげでリアさんに会えたんだから逆に良かったです。」
「……もしかして先輩達が…?」
リアさんはなにか呟いているが、俺としては本当にラッキーだ。
俺とリアさんは取り留めのない話をしながら道を歩く。
「ありがとうございました。
ここで大丈夫です。」
楽しい時間はあっという間だ。
そこは小さな教会だった。
「リアさんはここに住んでるんですか?」
「はい、私は幼い頃にここに捨てられていたそうです。
でもシスターが親代わりをしてくれて、兄弟がたくさんできて私は幸せですよ。」
たぶん彼女は本当にそう思っているんだろう。
魔物や魔獣が蔓延るこの世界で、親兄弟を亡くした子供は多いと聞いている。
そしてそういう子どもたちが行き着く先は、運が良ければリアさんのように孤児院や教会等に拾われ、運が悪ければ奴隷などに攫われるという。
納得は出来ないが、今の俺ではどうすることもできない。
これがこの世界では仕方のないことと受け入れられている。
王国としても対応はしているそうだが、今のところ効果的な策はないらしい。
「コータさんの所属しているポーター協会は、ここから少し行った右側にあります。
今日はありがとうございました。」
リアさんから道を教えてもらう。
こんなに近かったのか。
いつも家では寝ているだけだったので、全然知らなかった。
「あの、もしよければで今度遊びに来てもいいですか?」
「はい!
子どもたちも喜んでくれると思います。
でも無理はしないでくださいね?」
「ありがとうございます。
では今度お邪魔しますね。」
少し思うところがあって、リアさんと約束をする。
「はい、それではおやすみなさい。
今日はありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。
おやすみなさい。」
リアさんと別れて少し歩くと、見覚えのある建物が見えてきた。
(ほんとに近かったな。)
俺は部屋に戻るとリアさんのことを考える。
来たばかりでなんの力も持っていない俺に、この世界でできることはまだないだろう。
まずはじっくり力をつけて、この世界の事をもっとよく知ることが必要だ。
そのためにも明日の仕事は失敗することができない。
もう一度依頼書に目を通す。
明日は俺がポーターとして初めて、パーティーのサポートとでダンジョンに潜る。
依頼人の名前は書いていないが、行き先は初級冒険者向けのダンジョンらしい。
食事のときにギルマスからは変に気負うことはないと言われたし、コローネさんからも、今の俺の実力なら十分可能だと言われている。
収納スキルを発動し、中身の確認を行う。
所持品は必要なものをリストアップさえしておけば、職員の人たちが買ってきてくれるのでとても助かる。
もちろんお金は払うが、自分がお店で買うよりも安く買うことができるらしい。
さらに、支払いは成功報酬から引くこともできるので、まさに至れり尽くせりだ。
必要なものはコローネさんから聞いていたし、俺自身も必要になりそうなものを加えておいた。
まぁ日本と同じものはないが、似たようなものがあって助かった。
ダンジョンの地図も頭に入っている。
準備はどんなにしておいても、やりすぎるということはないだろう。
あとはしっかり眠ることだな。
いざ本番ってところで、寝不足なんて笑い話にもならない。
俺が全員の命を預かると言っても過言ではない。
心を決めてから眠りにつく。
少し入れ込み過ぎかな?
興奮して眠れそうにないが、無理矢理にでも眠ろう。
俺が眠りにつくまでしばらく時間がかかった。
年末は色々と慌ただしいですね。
交通事故増えてます。
気をつけてください。
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