第9話 生きてるって素晴らしい
俺がコローネさんに修行を申し込んだ次の日から、修行という名の扱きが始まった。
思い出すだけで体が震える。
夜は生きていることに感謝して涙を流すほどだったからな。
思い返すのも悍ましいが、その一部を振り返ろう。
・危険感知を磨くために、魔獣の巣に放り込まれる
→これでスキルが磨かれるし、他のスキルも覚えられたらお得だね♪
・雷耐性を磨くために雷属性が使える上級魔法士5人がかりで雷の雨を浴びせられる
→避けるための敏捷も上がるし、雷が効かないなんて素敵だね♪
・寝ている(気絶してる)間に知らない場所に置いていかれる
→やっぱりポーターは方向感覚や周囲の状況把握は必須だから頑張って♪
・寝ている(気絶してる)時にも容赦なく襲われる
→ポーターが寝るなんてもってのほか。パーティーを万全の状態に保つためには3徹4徹当たり前♪
・とりあえずやることが思いつかないからゴブリンキングとタイマンさせられる
→ポーターだから戦えなくていいなんて甘えだと思うんだ。最低限自分の身は自分で守らないとね♪
はい、やりきりました。
他にも色々やったけど、特にきつかったのは一番最後。
ちなみに武器は調理包丁。
なぜかというと、これが一番使いやすかったから。
ちなみに休日はなかった。
休日という名のランニング、筋トレ、魔力精錬etc…はあったけどね。
ようやく一応の合格をもらい、2日後からポーターとして冒険に随伴する事になった。
因みにここまでで3ヶ月。
久しぶりにあったギルマスは俺の顔を見た第一声が
「…コータか?」
だった。
そうだよ!
面影ないけどな!
その夜は久しぶりに飲みに連れて行ってくれたが、俺の話を聞いていると、
「もういい。
これ以上は酒が不味くなりそうだ。
しかし俺の鍛え方もまだまだだな。」
と言っていた。
新人冒険者の皆さん、もし明日から訓練がきつくなったら俺のせいです。
先に謝っておく、ゴメンナサイ。
ちなみに俺も随分成長した。
修行中はステータスの確認をしないよう厳しく言われていたので見れなかったが、さっき確認したらすごいことになってた。
ミカゲコウタ 18歳
称号∶異世界人
男 レベル1→レベル28
天職:ポーター 1/5 → 3/5
腕力:30→60
体力:40→80
耐性:30→80
敏捷:30→70
魔力:10→10
魔耐:30→80
スキル:言語理解、調理、採取、解析、解体、収納、危険感知、幸運、電耐性
(new)魔力感知、罠解除、状況把握、物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性、温度変化耐性、知識の泉、生活魔術、睡眠効果上昇、癒しの風
今まで持っていたスキルも大きく成長し、
言語理解→古代エルフ語までの使用可能
調理→食べたあと一定時間の能力上昇効果
採取→傷んでいても、完璧な状態に戻る
解体→一度倒したことがあれば、生きている状態でも解体できる
危険感知→罠や魔法だけでなく、強い悪意や殺意も感知できる
雷耐性→魔法攻撃耐性に変化
幸運→変わらず
以上だ。
ちなみに収納に関しては、魔力消費0、時間経過無し、出し入れ自由、容量は今住んでいる寮くらいなら楽勝
くらいに成長した。
ステータスだけで言えば、上級冒険者と変わらないくらいらしい。
スキルは…絶句してたな。
まぁ自分でも大概おかしいとは思ってる。
コローネさんも、俺が何でも覚えるから楽しくてついやりすぎたと反省していたしね。
そしてこれは俺とコローネさんの二人の秘密と言われた。
俺はギルマスにだけ伝えたいと言い、最終的にはコローネさんも渋々許可してくれた。
ギルマスには恩もあるが、この人なら適切な人を俺に紹介してくれるだろう。
俺もせっかく仕事をするなら、ちゃんとした人たちの力になりたいしね。
その旨も含めて伝えると、少し笑いながら了承してくれた。
もちろんここには覚えたての生活魔術、防音がかけてあるし、注文したものも全部届いているので誰かに聞かれることはない。
生活魔術って便利だな。
その後は近況やら雑談を交わし、いい時間になったのでそろそろお開きとなった。
「ギルマス、ようやく俺もギルマスの役に立てるくらいには成長したよ。
これからは何かあったらも遠慮なく言ってね。」
「ばか、やり過ぎだ。
今のお前はまだ初心者クラスだろうが、能力で言うなら上級よりも上だろ?
そんなやつに頼むなら金がいくらあっても足りねぇよ。」
「あはは、まぁそうかもね。
でもギルマスの頼みなら格安でいいよ。
協会に納める金額だけでも大丈夫。
他の人は通常だろうけど、ギルマスが困ったら俺に言ってね?」
「あぁ、ありがとな。
じゃあそんときには頼らせてもらう。
気をつけて帰れよ?
お前はまだ『初心者』なんだからな。」
「うん、ありがとう。
ギルマスも気をつけて!
また飲もうね。
次は絶対割り勘だよ?」
多分この人が俺に頼み事をすることはないと思う。
だけどもしその日が来たら、俺は何を捨ててでも力になろうと決めている。
俺が今こうしていられるのもギルマスのおかげだから。
少し暖かくなった夜の道を、俺は家へと帰っていく。
帰っていく道がわからなくなった。
そう言えば散々外には出たけど、町の中はほとんど散策してなかった。
やばい!?迷った?
誰かに訪ねようにも誰もいない。
(やばい、どうしよう。)
温度変化耐性で、このまま寝ても死ぬことはないだろうが、強盗とかは困る。
死にはしなくても、こんな時間にこんなところにいたことや、剰え迷子になったことがバレたらコローネさんにまた修行させられてしまうかもしれない。
とりあえず知ってる建物を探していたら、前方から歩いてくる人たちが見えた。
(よし、恥ずかしいけど道を聞いてみよう。
どうか協会だけでも知ってますように。)
願いながら歩いていくと、女性の3人組のようだ。
ビクビクしながら声をかけようとすると、そこには見慣れたギルドの職員さんたちがいた。
「あれ?
コータさんじゃないですか。
お久しぶりです。
私のこと覚えてます?」
一人に突然声をかけられ驚く。
まさかたった数回会っただけの俺のことを覚えているなんて…。
しかしその中には俺が会いたいリアさんの姿はなかった。
残念な気持ちはあるが、そこは出してはいけない。
「もちろん覚えていますよ。
あの時は色々お世話になりました。
たしか名前を伺ってなかったと思いますが…。」
「あぁ、そう言えばそうですね。
失礼しました。
私はミオと言います。
こっちは同僚のミャコとコルンです。」
「「よろしくお願いします。」」
そう言うと、笑顔を見せてくれた。
ミャコさんだけが獣人族みたいで、ネコ耳が可愛い。
そして3人ともすごく美人だ。
みんなお酒を飲んでいたのか、頬が少し赤くて色っぽく見える。
少しだけ雑談をしてたが、俺には今もっとも解決すべき問題がる。
3人は俺に興味があるのか、色々と質問をぶつけてくる。
俺は答えられる範囲で返すが、気恥ずかしいというか、答え難い部分もある。
その、好みのタイプとかを聞かれても…ねぇ?
こんな美人さんから聞かれると、俺も勘違いしそうになるだろ?
そういった経験なんてないんだし…。
聞くタイミングをはかっているが、あんまりカッコ悪いところも見せたくないし、どうしたものかと悩んでいると、ミオさんが、
「そう言えばコータさんはこんな時間まで何をされていたんですか?」
と聞いてきた。
これには俺も渡りに船とばかりに、
「いや、さっきまでギルマスとお酒を飲んでいたんだけど、少しだけ散歩しようと思って遠回りしたら道がわからなくなってね。
ちょうど困ってたところなんですよ。」
…少し言い訳がましい嘘をついてしまった。
でも、道が分からなくて歩いてたら余計迷ったなんて言いたくないだろ?
ミオさんがニヤニヤしながら、
「それは大変ですね!
ポーター協会なら、この道を右に曲がってまっすぐ行けばつきますよ。
とにかく真っ直ぐですからね?」
と言ってくれた。
なんだろう?くだらない嘘がばれてしまったかな?
「ありがとうございます。
じゃあまっすぐ行きますね。
皆さんも暗いですから気をつけてくださいね。」
あまり長く話し込むのもいけないと、適当なところで話を終えてお礼を言う。
後ろの二人の不思議そうな視線も気になったが、とりあえず俺は言われたとおりにまっすぐ進んでいく。
(さすがに協会からなら道もわかるし、助かったな。)
安堵しながら進んでいくと、正面から走ってくる人が見える。
(何かあったのかな?)
もし何かトラブルに巻き込まれてたらいけないと、俺はとりあえずスキルを発動状態にする。
今の俺ならそのへんの暴漢くらいならどうにでもできるだろう。
「あっ!」「えっ!?」
二人の声が重なる。
目の前に現れたのは、すごく会いたかった人だった。
先日山道で鹿を見ました
バンビ
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