第0話 プロローグ、或はそれに代わる何か
異世界物を書いてみました。
連載作品です。
俺の名前は御影紘汰。
高校を卒業したばかりの18歳。
春から地元の会社に就職予定の俺は、最後の長い休みを利用して趣味のキャンプを満喫していた。
今日でキャンプ生活は3日目になる。
食事は主に川で釣った魚や自生している山菜。
来るときにスーパーで買ってきた肉もあるが、半分以上は冷凍のままクーラーボックスに眠っている。
鶏なら自分で捌けるくらいの技術はあるが、安く手に入るこの時代にわざわざやろうとは思わない。
友人たちから言わせればそれはキャンプではなくサバイバルらしいが、道具もちゃんと揃えて期間も決めて行うのだからキャンプだと思っている。
まぁ小説とかによくある無人島に流されても、俺なら1か月は余裕で生活できるくらいの知識と経験はあるが。
両親は既に亡くしており、親戚の叔父さんが後見人となってくれてはいるが、叔父さんも仕事で海外を飛び回っており、日本にいるのは年に数日。
俺は叔父さんが所有するアパートの一室を借りて、一人暮らしをさせてもらっている。
もちろん遊び呆けているわけではなく、バイトで自分の生活費くらいは稼いでいる。
叔父さんからは気にするなと言われているが、甘えてばかりではいられない。
俺にはキャンプという趣味があるが、道具は叔父さんから借りているものが殆どだ。
最初は自分で購入していたが、叔父さんの趣味もキャンプなので、自分が使うときに使えないと困るからとお金を預かっている。
(キャンプなんて行く暇無いだろうに。)
そう思いながらも、叔父さんは叔父さんなりに俺に気を使ってくれているのかと思い、有り難く使わせてもらっている。
就職に向けて高校生の間に役に立ちそうな資格も取った。
勉強は苦にならない。
要領も良かったので、勉強の息抜きに資格の勉強や、体が鈍らないように体力系のアルバイトをこなした。
まぁそんな生活を続けていれば、当然遊ぶ暇もそんなにないわけで。
俺は彼女のできない3年間を過ごしたわけだ。
俺は田舎に住んでることもあり、自転車を使って1時間も行けば、祖父の所有する山に着く。
ここには叔父さんが若い頃に友達と建てた山小屋があり、俺は自由に使っていいと言われている。
キャンプ用具はここに置いてあるし、調味料や釣り道具も揃っている。
熊がいる地域でもないし、注意するのは火の始末と蜂や蛇くらいのものだ。
朝から追加の山菜を調達して、山女魚でも釣りに行こうかと準備をしていたら、急に雲行きが怪しくなってきた。
今が家ならば心配することはないが、ここは山の中。
しかもロッジではなく素人が建てた小屋。
何かあってからでは遅いので、必要なものや大事なものは小屋の地下室に仕舞う。
これも叔父さん達が作ったらしく、2メートル四方で地面に穴を開け、周りを板で囲ってある。
入り口は鉄の扉がついていて、南京錠だが鍵も掛かるようになっている。
小屋の中の道具を一通り片付けて鍵をかけると、俺は下山をすることにした。
本来ならばあと2日くらいはゆっくりできたのにと独り言ちながら歩を進めていくが、あと少しで道が見えるというところで突然降り出した。
しかもこれはゲリラ豪雨だ。
時間何ミリかは分からないが、数メートル先も見えなくなるような強烈な雨。
山は慣れているが、だからこそ危険もよくわかっている。
周りを見ると、少し登ったところに小さい洞穴が見える。
(とりあえずあそこに避難するか。)
狭いが入れない事もない。
穴は少し上りになっているので、水が入ってくることもないだろうし、この雲の感じならば、長く降ることもなさそうだ。
着ていたカッパを脱ぎ、レインバッグから携帯食品を出す。
いつ開けたかは覚えていないが、しけってもいないので一つを口に入れる。
(俺ももうすぐ社会人か。)
周りの友達が進学することを羨ましいとは思わない。
担任とも話し合い、最終的に進路は自分で決めた。
叔父さんは大学にいけと言っていたが、ここだけは頑として譲らなかった。
ただ、ふと思うこともある。
もしも両親が生きていたら、俺には違う道があったのではないだろうか。
そんなことを考えながら俺は目をつぶった。
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小学5年生の時に病で亡くなった母さん。
もともと体が強い方ではなかったが、突然倒れてから意識が戻らないまま、眠るように息を引き取った。
父さんは男手一つで僕を育ててくれたが、僕が中3の時に会社への出勤途中に脇見運転のトラックにはねられ亡くなった。
そして僕はたった独りとなった。
父方の祖父母は早くに亡くなっている。
母方の祖父は少し前に体を壊したこともあり、今は施設に入っている。
父の葬儀が終わり、親戚達が集まったが、県外にいる人も多く、覚えていない人達ばかりだった。
僕のこれからを話し合ったときに、それまで黙って話を聞いていたいた叔父さんが突然口を開いた。
「コウタの面倒は俺が見る。
オヤジたちは心配しなくていい。」
少しだけ揉めたらしいが、最終的に僕が今のところを離れたくないと伝えたことで、叔父さんと暮らすことになった。
別に仲のいい友達が居たとか、学校が好きだとかではなかった。
僕はこの町が好きだった。
自然が豊かで、忙しい父さんのたまの休みには、趣味のキャンプに連れて行ってくれた。
母さんがまだ元気な頃は、3人で色んなところに行った。
辛い思い出もあるけれど、この町には幸せな思い出がたくさんある。
そんな町からは出て行きたくなかった。
叔父さんはアパートの一室を僕に与えてくれた。
「俺は高給取りだが結婚もしていないし使う暇も予定もなくてな。
預けていても仕方ないから不動産に投資してるんだ。
ここは少し古いが、お前の通う学校も近いし、生活するのに不便もない。
隣は俺の部屋だから、家賃代わりに月に一回は掃除してくれ。
部屋は使わないとすぐ傷むから。
まぁこんな田舎じゃすぐに借り手なんてつかないから、お前が住んでくれるならちょうどいい。
今まで住んでた家はとりあえずそのままにしてある。
お前が将来あっちに住みたいならそれでもいい。
だけどお前が学校を卒業するまでは、ここで生活するように。
お前も色々と大変だろうが、俺にもお前を引き取った責任がある。
今まで住んでいた家は借家として貸すのもいいし、売るのもいいだろう。
俺としては、姉さんが住んでた家だから、お前が大人になったときにでも住んでくれると嬉しい。
今すぐ決めなくていいことだから、これからじっくりと考えてくれ。
それと何かあったら遠慮なく言ってこい。
俺はすぐに対応できないかもしれないが、この町には俺の知り合いは多い。
困ったときは誰かが助けてくれる。
今は誰かに助けてもらっていい。
助けてもらった分、お前も今後誰かの助けになれ。
俺もきっと誰かを助けてる。
そして誰かに助けられてるから生きていける。
忘れるなよ?
お前は決して独りじゃないんだ。」
おじさんはそう言うとそっと扉を閉めて出ていった。
一人になった僕は部屋を見渡す。
部屋には真新しい家具。
部屋の隅には父さんと母さんの写真。
僕はその日、声が枯れるまで泣き続けた。
突然の父さんの死。
余りにも急過ぎて、僕の頭は理解することを拒んでいたのかもしれない。
そして独りになり、ようやく現実を受け止める。
僕が目を覚ましたら外は真っ暗だった。
玄関には母さんが大好きだった角のパン屋のクリームパンと父さんが毎日飲んでいたパックの牛乳。
僕はこの二人の分まで生きなきゃならない。
何時までも悲しんでいたら二人に余計心配をかけてしまう。
明日から頑張ろう。
だけど今だけは、今夜だけは見逃してほしい。
甘いはずのクリームパンと牛乳は涙の味がした。
現実パートでした。
次回から異世界パートです。
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