3「鈴の少女」①
演出風味とは一体何だったのか
————ちりん。
鈴が鳴る。腰から下げた鈴が鳴る。
ちりん—―
鈴が鳴る。首から下げた鈴が鳴る。
少女はそこに立っている。場所はここだと鈴鳴らす。だけれど誰も、それを見ない。
なぜならそこには少女だけ。少女だけがそこにいる。
…………………………………
”そこ”とはどこか”ここ”とはそこか。場所を知らぬまま、ただただ少女はそこにいる。
陽が当たる場所か、それとも陰に隠れているか、少女はどこにいるか知らぬまま。
目を閉じ少女は考える。考えただけで答えは出ず。答えはどこに? すぐそこに?
目を開き少女は確かめる。見ただけでは答えは出ず。考える要素はどこに? 遠くあの場所に?
——ちりん。
少女の手には、鈴一つ二つ。なぜ鈴を持つか彼女も知らず。ちりんと音を響かせる。
この場所はどこかいざ知らず。あの場所はなにかそれもわからず。
少女は調べる手あたり次第。焦ったところで何も変わらず。注意深く調べたところでなにも変わらず。
例えばそこに、砂がある。砂があるからだからどうした。地面があって砂がある。そこらまばらに草生い茂る。わかると言えば、ここは草原。
動物は居るか、目の前におらず。感じるところは静かにほほを撫でる風。
ちりん——
さてはて少女は動き出す。たった一人の行方も知らず、先も知らず。先に旅立つなにかを求め。
少女は歩く、たまに走る。走って止まってまた歩く。ちりんちりんと鈴鳴らし。
…………………………
さてはて少女はそこに着く。
そことはどこか、建物だ。建物は荒れ、人住まず。あるは埃、クモの巣も。
触れば崩れる土の壁。崩れた先はなにもあらず。土の壁がまたあるのみ。
陽の明かりを頼りに少女は探す。自分以外の生き物を、人を、動物をやれ探す。
困ったことに誰もいない。少女は答えを見いだせない。少女は一人、鈴が鳴る。
——ちりん。
静かかどうか、いざ知らず。鈴は構わずちりんと鳴る。ちりんと鳴れば、またいつか。
少女が動けば鈴が鳴る。動かなければ鈴は鳴らず。それはどうかと風が吹き、ちりんと鈴をまた鳴らす。少女は風を受け止める。
ちりん——
少女はなにかを探す。なにかは人か、生物か。
答えはどこかにあるだろう。例えばそこに、すぐそこに。
この話はフィクションです。