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異世界パチンコ経営記  作者: 大野英幸(ひでこう)
8/9

3「鈴の少女」①

演出風味とは一体何だったのか

 ————ちりん。

 

 鈴が鳴る。腰から下げた鈴が鳴る。


 ちりん—―


 鈴が鳴る。首から下げた鈴が鳴る。

 少女はそこに立っている。場所はここだと鈴鳴らす。だけれど誰も、それを見ない。

 なぜならそこには少女だけ。少女だけがそこにいる。

 

 …………………………………


 ”そこ”とはどこか”ここ”とはそこか。場所を知らぬまま、ただただ少女はそこにいる。

 陽が当たる場所か、それとも陰に隠れているか、少女はどこにいるか知らぬまま。

 目を閉じ少女は考える。考えただけで答えは出ず。答えはどこに? すぐそこに?

 目を開き少女は確かめる。見ただけでは答えは出ず。考える要素はどこに? 遠くあの場所に?


 ——ちりん。


 少女の手には、鈴一つ二つ。なぜ鈴を持つか彼女も知らず。ちりんと音を響かせる。

 この場所はどこかいざ知らず。あの場所はなにかそれもわからず。

 少女は調べる手あたり次第。焦ったところで何も変わらず。注意深く調べたところでなにも変わらず。

 例えばそこに、砂がある。砂があるからだからどうした。地面があって砂がある。そこらまばらに草生い茂る。わかると言えば、ここは草原。

 動物は居るか、目の前におらず。感じるところは静かにほほを撫でる風。


 ちりん——


 さてはて少女は動き出す。たった一人の行方も知らず、先も知らず。先に旅立つなにかを求め。

 少女は歩く、たまに走る。走って止まってまた歩く。ちりんちりんと鈴鳴らし。


 …………………………


 さてはて少女はそこに着く。

 そことはどこか、建物だ。建物は荒れ、人住まず。あるは埃、クモの巣も。

 触れば崩れる土の壁。崩れた先はなにもあらず。土の壁がまたあるのみ。

 陽の明かりを頼りに少女は探す。自分以外の生き物を、人を、動物をやれ探す。

 困ったことに誰もいない。少女は答えを見いだせない。少女は一人、鈴が鳴る。


 ——ちりん。


 静かかどうか、いざ知らず。鈴は構わずちりんと鳴る。ちりんと鳴れば、またいつか。

 少女が動けば鈴が鳴る。動かなければ鈴は鳴らず。それはどうかと風が吹き、ちりんと鈴をまた鳴らす。少女は風を受け止める。

 

 ちりん——


 少女はなにかを探す。なにかは人か、生物か。

 



 答えはどこかにあるだろう。例えばそこに、すぐそこに。




 

この話はフィクションです。

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