表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷鳥たち  作者: 馬之群
孵化
3/57

自己紹介

「もう昼休みになるぞ、黒木。さっさと座れ。」

程なくしてチャイムが鳴った。どっちにしたって私が祓えるレベルの霊じゃない。でもあの死神はきっと助けてくれないだろう。


「紗里、顔色わりーな。どしたん?」

翔に話しても信じてくれないと思うし、除霊師なんて名乗る連中の大半は思い込みが激しいだけだ。本物には会ったことがない。

「五時間目の数学の単元テストが不安でさ…。」

「紗里でも不安なのかよ。参ったな。オレ全然勉強してないよ。ヤバくね?」


「すみません。食べ終わったらでいいので、学校を案内してくれませんか。」

転校性が声を掛けてきた。断りにくい。嫌だな。

「別にいいよ。オレ、黒木翔。こっちが水野紗里。宜しくな。」

翔があっさりと自己紹介してしまった。私は渋々挨拶する。

「どうも。」


適当に校舎を案内しながら翔と転校生はずっと話している。私は二人の後ろを付いて行き、偶に相槌を打っていた。

「部活は何処にするか決めた?オレは剣道部だから、良かったら見学しに来いよ。」

「黒木さんって剣道部っぽいですよね。私はまだどの部に入るか決めてなくて…。水野さんはどちらの部活に入っているんですか。」

「私は帰宅部だから。」


あまり他人と関わるわけにはいかないから、小学校の時からずっと部活に入っていない。羨ましいと思うことはあるけど、部活のためにリスクを冒す訳にはいかない。

「そうですか…。今度剣道部の見学に行きますね。」

さっき翔のことを剣道部っぽいと言っていた。確かに翔は女の子にしては高身長で剣道部らしい。その基準でいけば転校生は剣道部っぽくない。美術部か合唱部辺りにいそうだ。


放課後になり、多くの生徒が部活に向かう中、私は一人通学路を歩き、家に帰った。

「ただいま。」

「お帰り、紗里。学校はどうだった?」

叔母さんが言った。

「別に…普通。」


私はそのまま二階にある自分の部屋に向かった。中には死神が待っていた。

「お帰り、大丈夫だった?」

「ねえ、翔ちゃんが霊に憑りつかれているの。あのままじゃ危ない。祓ってくれない?」

案の定死神は首を横に振る。

「言ったでしょ。死神は人間の寿命を延ばせない。諦めて。それより、転入生の方こそ大丈夫だった?」


「お願い。翔ちゃんは私の親友なの。何とか出来ない?」

「一回様子だけ見に行くよ。どのくらい深刻なのか見ないと何とも言えない。それで、転入生の前で霊に反応しなかっただろうね。」

私は頷く。

「良かった。彼女は下級天使だよ。紗里のことを探しに来たのかな。暫くしたら別の地に転校するだろうから、それまでの辛抱だよ。」


僕は翼を広げた。天使がいる時に出歩きたくはないけど、紗里の頼みだから仕方ない。仮面を着けると少し羽ばたきながら言った。

「翔ちゃんの様子を見てくる。家から出ないでね。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ